第127話 食料庫と雑貨倉庫
物入れが少ないと思って壁を調べたところ結果的に冷蔵室っぽい倉庫を見つけることができた。
中に入って見たらそれほど室温は低くなかったので冷蔵室というわけではなく定温倉庫のようだ。ただ、俺の暑さ寒さの感覚はほとんどマヒしているので実際は冷蔵室なのかもしれない。
部屋の中には瓶や箱や何かが詰まった麻袋が棚の上に並んでいた。
瓶を一つ手にしてみたが、ラベルなどは付いていなかった。
瓶の材質は色付きのガラスのように見えるが実際は何だかわからない。
瓶のフタそのものはスクリュー式のフタだったのでフタを外して中身を見たらどう見てもマヨネーズだった。同じ感じの瓶がひとまとめにして並んでいたので全部同じマヨネーズだろう。
マヨネーズの棚の上の棚にあった瓶を開けたら、どう見てもケチャップが入っていた。
同じ形での瓶で色が微妙に違う瓶の中にはハチミツやイチゴジャムが入っていた。
他の棚の瓶を開けたところ、口が細くなった大きな瓶には油が入っていて、中ぐらいの瓶にはコショウ、塩、砂糖が入っていて、もう少し小さな瓶の中には俺の知らない数種類の香辛料が入っていた。その香辛料の中にはカレーっぽい匂いのする香辛料が数種類あった上、黄色い香辛料らしきものもあったのでもしかしたらカレーが食べられるかもしれない。お米がないのでカレーライスは無理だけど、ナンのようなものを作ることは何とか俺でもできそうなので、カレーを楽しめるかもしれない。
棚に置かれた箱は材質不明で強いて言えばプラスチック。
フタは上からかぶせただけのものだったので開けてみたら小麦粉だった。
そういえば、小麦粉に塩を少し混ぜ、良くこねた後きれいに伸ばして折り畳み揃えて切ればうどんになるような気がする。干し魚で出汁を取ったスープって具沢山じゃ無くなればうどんスープになるような。
肉で出汁を取ったスープだって、うどんを入れれば結構いけるような気がする。
カレーがもしできたとして、カレーライスの代わりにナンではなく、カレーうどんも考えられる。夢が膨らむ。
俺が色々見て回っている間、エリカとケイちゃんは俺とは別に冷蔵室の中を歩き回って感動していた。
ここは食料庫ということは分かったのだが、日常消耗品がどこかにあって欲しい。
そのうちエリカとケイちゃんが俺のところにやってきた。
「あっちの棚には長四角の大きなパンとハムとかベーコンそれにチーズとバターがあったわ。それもたくさん」
「あと、いろいろな種類の乾麺がありました」
わたしたちだけでは、何年あっても食べきれないほどの量でした」
「こっちには塩コショウやいろんな香辛料、小麦粉と油があった」
マヨネーズとケチャップについてはどう説明すればいいのか思いつかない。さすがにここでレメンゲンの力で閃いたはないだろうし。
そのうちサンドイッチとかハンバーガーを作って試してみた。とか言って社会的認知を勝ち取るのが無難だろう。
お互い調べたことを報告しあった後、3人揃って麻袋の中身を調べてみることにした。
麻袋は棚の下の段に並べられている。袋の封は上の方をひもで縛っただけの簡単なものだったので紐をほどいて口を開けたら、最初の袋の中には大豆が入っていた。他の袋を開けてみたら俺の知らない豆とか、どう見ても
小豆の説明も大変だよな。これをアンコまで加工したらエライことになるような。
そしてさらに奥の方にあった麻袋の口を開いたらなんとお米が入っているではありませんか。
電気炊飯器があれば俺でもご飯は炊けるが電気炊飯器は台所に置いてなかった。
前世での昔の人は釜でお米を炊いていたわけだから鍋で炊けないはずはないのだが。
さーて。
ここにきてダンジョン探索が何だかよく分からない段階に入ってしまい、ウーマの中にいる分には何も仕事がないのは確かなので試行錯誤を重ねていけば鍋でもご飯が炊けるだろう。たぶん。
そこで思い出したのだが、生前どこかのレストランでパエリアなるものを食べたことある。パエリアというのはフライパンで魚介類を中心とした具と一緒に何かの出汁でお米を炊いた西洋炊き込みご飯なわけだから鍋よりフライパンの方が米を炊くには適しているのかもしれない。
正確なレシピがない以上かなりの冒険だが、虎穴に入るほど大した冒険ではない割にリターンは無限大だ!
「エド、固まっちゃってるけど、それ、なんなの?」
「うーん」
この世界を探せば米もあるのだろうが、少なくともヨルマン領にはないのだろう。俺も聞いたことはなかったし、エリカも知らなかったわけだから。
しかし、コメと言いあの風呂場と言い、日本人的なんだよな。このウーマの中は。
今はまだいいが、もしかしたらここに置かれている瓶の中には醤油、みりん、日本酒が置かれている可能性もある。俺の料理スキルがもう少し上がったら真剣にこの冷蔵庫の中を漁ってみるのも手だな。
しばらく冷蔵庫の中にいたのでさすがの俺も肌寒くなってきた。
「そろそろ出ないか?」
「うん。少し寒くなってきたものね」「そうですね」
冷蔵庫を出たところ。
「この壁空いたままでいいのかな?」
「いやー、このままだと、いろいろマズいだろう。言葉で開いたんだから、言葉で閉まるだろ。
『閉まれ』」
そう壁に空いた出入口に向かって声を掛けたら一瞬で壁の穴消えて元の壁に戻った。
今気づいたのだが、今壁が消えていた位置は、台所の反対側の壁の3分の1くらいの位置だった。
もしかしたら、あと2つ出入口が隠されているかもしれない。
「エド、今度は壁をじっと眺めてどうしたの?」
「いや、今空いていた出入口なんだけど、妙に右に寄ってなかったか?」
「うん?」
「もし、出入り口が1つなら、壁の真ん中に出入り口がある方が自然かな。って見てたんだ」
とはいえ、普通の家ならそんなものは間取り次第で何とでもなるので何も言えないが、俺には不自然に感じるんだよな。しかもこのウーマの中は、空間拡張とでも言うのか勝手に広がってるわけだからどこに出入り口を着けてもいい。それなら見た目を考えて壁の真ん中かな? という程度の違和感なんだけど。
「それじゃあ、壁の真ん中に向かって『開け!』とか、『壁の真ん中、開け!』って言えばいいんじゃない。わたしが言ってあげるわ。『壁の真ん中、開け!』」
エリカが壁の真ん中に向かって声を掛けたらさっきの出入り口の隣りに新しく出入り口ができた。
「ほらね」
俺が最初にそうじゃないかと思ったんだが、エリカが喜んでくれて何より。
出入り口の向こうにはこれもまた広い部屋がひろがっていて、さっきの食料庫と同じように棚が並んでいた。
中に入って眺めたところ、予想通り消耗品が部屋いっぱいに置かれていることがわかった。
トイレットペーパーがこの部屋に積み上げられていたので、俺の予想である紙が少なくなったら自動で増える説は消えてしまった。
「こんなにあった。よかったー」
エリカは心底うれしかったようだ。
相当量のトイレットペーパーがあるのは確かなのだが、このトイレットペーパーを使い切れば補充は利かないのでそれまでにトイレットペーパーの代用品を考える必要がある。
あと見つかったのは、タオル類と下着類。
タオル類には大小あり、大はバスタオルほどで小は雑巾ほど。小は台布巾にでもすればいいのだろう。
下着類はなぜか女性用だけで、しかも現代風。つまりはそういう感じのものだったので俺は詳しく観察したかったのだが沈黙は金で通した。
これを見てエリカが息を飲む音が聞こえてきた。ちょっと布地が少なくてちょっと透けてる程度なのに息を飲むほど奇抜か?
そして食器類とカトラリー、まな板の予備や
待望の洗剤らしきものもあった。洗剤らしきものは液体洗剤で、透明の容器に入っており、容器の前に軽量カップらしきものが置いてあった。これは洗濯用洗剤なのだと思う。
その隣には何種類かのポンプ式の容器が置いてあった。持ち上げてみると容器には中身が満杯入っている。容器の形はどれも同じなのだが容器の色が若干違うので区別はできる。
ボディーソープなのかシャンプーでなのか、はたまたリンスなのかは不明だ。リンスは泡立たないから簡単に見分けがつくはず。あとのボディーソープかシャンプーは使ってみて感触で判断するしかない。
食洗器があるのでなくてもいいと言えばそれまでだが簡単な洗い物のために台所洗剤が欲しい。ただ、台所洗剤といってもボディーソープであろうとシャンプーであろうと油汚れさえ落ちればいいので適当な洗剤を使ってもマズくはないだろう。
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