第93話 11階層からの帰還と大儲け
ケイちゃんがたおしたのは久しぶりに大ウサギだった。エリカと二人で首筋を切って血抜きをしてキューブにしまった。2匹ともいつぞやレメンゲンを見つけた時の大ウサギに近い大きさだった。
リュックに詰める重さの関係で大ウサギを仕留めた数を心配していたころが懐かしい。
そこから先も順調に探索範囲=自動地図記録範囲が広がり、3時間弱の移動だったがモンスターのほか、ジェム、キノコも複数見つかった。
この日の野営で料理をスープを多めに作っておいた。スープはトカゲ肉と野菜のスープなのだが、トカゲ肉だけだと出汁が弱いので干し魚も使っている。俺の料理能力は確実に上がっている。スープのほかに用意したのは、牛肉のステーキと温野菜。もちろんパンもある。食後のデザートはブドウにした。
野営は何事もなく終了し、11階層2泊3日の2日目。
朝食を終え、装備を整えて探索を再開。ジェム、キノコを相当数見つけ、それなりの数のモンスターをたおし、買い取ってもらえるものは収納していった。
そして3日目。11時まで探索し、残り物とパンで昼食を摂った。12時までにはギルドへの帰路に就いた。
途中小休止を一度とって17時少し前にギルドに戻ってきた俺たちはその足で買い取りカウンターに回った。
「倉庫で受け取ったモンスターの代金だ」
そう言ってずっしり重い布袋をゴルトマンさんに渡された。
「内訳は、カエルの本体が金貨40枚、デカい角のシカが銀貨30枚、イノシシが銀貨7枚、そのほかで銀貨60枚。袋の中には金貨44枚と銀貨17枚が入っている」
「ありがとうございます。
小さいものはここで出してしまいますね」
「ああ、そうしてくれ。大きいものは倉庫ってことだな?」
「はい」
俺の後ろでエリカとケイちゃんがうれしそうに小声で話しているのが聞こえてきた。
『こんなに高く売れるなんて驚き。カエルの本体、キューブに入れて持って帰って良かったー』
『ホントですね』
「エリカ、キノコとジェムを頼む」
「はい、はーい」
ジェムとキノコはエリカに持ってもらっていたので、ニコニコ顔のエリカがリュックを床に置いてケイちゃんと一緒にそれらをどんどんカウンターの上に置いていった。
……。
「まずはキノコだが、銀貨69枚だ」
次にゴルトマンさんは、ジェムを一つ一つ見て紙に筆でメモし、カゴのようなものに移していった。
「……。ジェムは金貨147枚だ。合わせて金貨150枚と銀貨9枚。金貨150枚も今ここにないからここで少し待っててくれ」
そう言ってゴルトマンさんが奥の方に歩いて行ってしばらくしてトレイを両手に持って帰ってきた。
お盆の上には重ねた金貨を紙で巻いた筒が6つ載っていた。
「一束金貨25枚だ。それと、銀貨9枚」
「確かに」
先ほど受け取った布袋に一緒に入れておいた。
金貨1枚10万円としても150枚だと1500万円か。エライことになったな。とは言えジェムについては最低でも金貨100枚以上は確実だと思っていたのでそれほど驚きはない。俺はトップチームのリーダーなんだし。
「それじゃあ、モンスターの方お願いします」
「そうだったな。こっちに入ってきてくれ」
前回同様カウンターの中に入っていき、奥の扉から建物の裏に出て前回と同じ倉庫の中に入った。
「全部出してしまいます」
文字通りあっという間にキューブの中に入れていたモンスターを床に並べるように排出した」
「今回は超大物はいないが、数があるなー」
「はい」
「うーん。ほとんど眉間への弓の一撃か。恐れ入ったな。
明日の朝、飯を食ったころ来てくれ。その時代金を渡す」
「はい」「「よろしくお願いします」」
倉庫を出た俺たちは、ぐるっとギルドの建物を回って正面玄関から入ってそのままホールを抜けて階段を上って3階に上がった。
「今回の収益を俺の部屋で分配しよう」
「「はい」」
俺の部屋に3人で入り、部屋にカギをかけて密室にしてやった。何となく。
「エド、カギまでかける必要ないんじゃない」
「そうなんだけど、気持ちだけ」
何の気持かは俺しか分からないはずだ。
「金貨44枚と銀貨17枚と金貨150枚と銀貨9枚だったから合計金貨194枚と銀貨26枚になる。
全部一緒に入れたさっきの布袋をテーブルの上にドン。と、置いた。
「一人頭、金貨64枚、残りは金貨2枚と銀貨26枚だ」
「一人金貨60枚でいいんじゃない。明日支払う1年分の家賃のこともあるから残りはチームの財布に入れても」
「わたしもそれでいいです」
「そういえばそうだった。
それじゃあ、まずは25枚の束を二人に2本ずつ。……。
そして、金貨10枚ずつ。……」
「うん」「はい」
俺も金貨2束と10枚を俺の財布代わりの布袋に入れて収納キューブにしまい、残りの金貨と銀貨をチームの財布にジャラジャラと入れてそれもキューブにしまっておいた。
「それじゃあ、6時の鐘が鳴ったら部屋の前の廊下に集合」
「了解」「はい」
二人がカギを外して部屋から出ていったところで、俺はレメンゲンを付けたまま剣帯を外し、防具も外しさらにいつもの胴着も脱いで上は下着だけになった。約束の6時まで30分近くあるはずなので、体を拭いてさっぱりしようと桶にタオルを入れて部屋を出た。
水場に行くと、そこには数人の女子ダンジョンワーカーがいて、洗濯したり、タオルで体を拭いたりしていた。体を拭いてはいたが、もちろん裸ではなく袖やズボン、そしてスカートをたくし上げて首筋や手足を拭いているだけだ。
ただそれだけなのだが、それがまたいい。目が行ってしまわないよう注意するのだが、ついついチラ見してしまう。
チラ見程度はこの世界、全くのセーフなので問題なし。
誰も俺の方を注目してくれない中で、桶に水を汲んでタオルを水で濡らしてよく絞り、下着のシャツを脱いで上半身裸になって体を拭いた。
気持ちいいー。
下の方も拭きたいがさすがにここではまずいので一度帰ってからだ。
そういえば、温かい風呂に入りたいなー。
この世界に生まれてこの方、産湯には入ったかもしれないがそれ以外では水風呂しか入ったことないんだが。
今度借りた家にも風呂場なんかなったし。王侯貴族とか大商人は風呂に入っているのだろうか?
温泉があればいいのだが、温泉の話なんて今まで聞いたことないんだよなー。
ヨーネフリッツにはないのかもしれない。
将来楽隠居になったら腕の立つ子分を二人くらい連れて温泉を探しの旅するのもいいかもな。
体を拭き終わった俺はシャツを着て、タオルをよく洗ってよく絞り部屋に戻った。
部屋の中で下半身裸になった俺は下半身をタオルで拭いてさっぱりした。
汚れたタオルと桶を持った俺は再度部屋を出て階段を下りていき、ギルドのホールを横切って正面玄関から水場に回ってタオルを良く洗った。先ほどいた女子たちはもういなくなって、むくつけき男たちがそこで体を拭いていた。
頭の中でチャンチャンチャンチャン、チャチャチャチャチャチャチャ。チャンチャンチャンチャン、チャチャチャチャチャチャチャとリズムが流れた。
そこで俺は閃いたのだが、俺って知識チートは断念したけれど、こういった音楽についてはリズムを口ずさむ程度はできる。どこかの音楽家を抱き込んでこの世界で地球の音楽を流行らせられないか? というか、演歌をこっちの言葉に訳すのもアリだ。温泉探しの旅もいいが楽曲提供も悪くないかも?
[あとがき]
チャンチャンチャンは『天国と地獄』でした。
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