第67話 1泊ダンジョンアタック3回目3、二つ目のツズラ
俺のレメンゲンとの契約の対価についてエリカとケイちゃんにちゃんと話したらエリカが少し取り乱してしまった。俺のことを大事に思っていてくれているんだと正直うれしかった。
契約については今さらどうしようもなのだが、その場の雰囲気が少し暗くなってしまったので、雰囲気を好転させるため、手にしていた収納キューブはエリカに渡し、2つ目の宝箱に手をかけた。
蓋に手をかけて軽く引き上げたら、さっきと同様勝手に蓋が開いた。
宝箱の中をのぞきこんだところ、中に入っていたのは直径30センチほどで厚さは3センチほどの黒い円盤と横に寝かせた水色の円筒だった。円筒の大きさは直径で10センチくらいで、長さは50センチくらい。
何だこれは?
先ほどは収納キューブという俺たちに最も必要な物が手に入った。
次に俺たちにとって必要な物と言えば? 特に重要な物ではないが俺が希望する水が出るアイテムと火が出るアイテムだ。
ということは、もしかして、もしかするかも?
もしそうだとすると、円盤は鍋やフライパンを上に乗っけると熱くなる。そして、水色の円筒はいくらでも水が出る水筒では?
「エド、これは何だと思う? レメンゲンの力で分からない?」
先ほど少し落ち込んでいたエリカだが、気を取り直したようだ。
「このダンジョン、レメンゲンの力が働いて、俺たちの欲しいものを選んでくれてるんじゃないか? 今までだってそうだったろ?」
「うん。そういえばそうだった」
「もし今回もそうなら、今回は俺の欲しがっていた火の出るアイテムと水の出るアイテムだと思うんだよ」
「それは確かにありそうだわね。それで、丸い板と筒はどっちがどっちだと思う?」
「おそらく、丸い板の上に鍋とかフライパンを置くと熱くなるんじゃないか? それで筒の方はどっかから水が出てくると思うんだ。
ちょっと調べてみよう」
鍋はないので円盤の方は確かめようはないのだが、見た目はIHヒーターだ。スイッチになるようなものも火力の調整をするようなものも見当たらないので今一使い方は分からない。これは後回しだ。
次に手にした水色の筒。よく見ると水が出て来そうな孔が空いていた。どこかにスイッチがあればいいのだがそれが見当たらない。
教えて、レメンゲン!
収納キューブの時は閃いたのに今回は全然閃かない。
「ちょっと分からないなー」
「エド、収納キューブのように声で使うのかもしれませんよ」
確かに。それは十分あり得る話だ。ではどういったキーワードを使えばいいのか?
AI搭載みたいなものだろうから、かなりアバウトでも何とかなりそうだし、安全設計のハズだから暴走するってこともないだろう。つまり普通に話しかければ普通に機能するのではなかろうか。
俺は水筒?を持ってその口を下に向け、水筒に向かって「水が出ろ!」と声を出して言ったところ、水筒の口から水がトボトボと床にこぼれ出た。
「止まれ!」
そのひとことで水は止まった。
「やっぱり水が出るアイテムだった」
「ホントだ。これはすごいよー。これ一つあれば水袋要らなくなるものね。小さなジョッキ一つで済んじゃう」
「そうだな」
実際のところは収納キューブに水を入れておけば済む話なのだが、収納キューブに入れるには水袋に入った水を入れることになるのだろうから、こっちの方がやっぱり清潔だしおいしい水が飲めそうだ。
「それでその黒くて丸い板はどう?」
「おそらく熱くなれと言えば熱くなると思うんだけど鍋か何か上に置いて試したいんだよなー」
「鍋の代わりになるものが何かなかったかなー?
ケイちゃん何か持っていない?」
「わたしも何も。
そうだ。その宝箱を載せてみたらどうでしょう?」
「それはいい。
やってみよう。水も少し入れて沸くかどうかも見てみよう」
台の空いたところに円盤を置き、その上に宝箱を置いた。そして水筒から宝箱の底から2センチくらいになるまで水を宝箱に注ぎ、円盤に向かって「熱くなれ!」と言った。
もちろんすぐに変化は起きなかったが1分くらいしたら宝箱の底の辺りに泡がつき始め、3分ほどしたら沸騰し始めた。
「止まれ!」
これで沸騰は収まった。深さ2センチと言っても箱の底面は相当広いので水の量はそこそこあったはず。かなり火力は強そうだ。
しかし、こういったものの動力というかエネルギーはどこからきているのだろう?
定番は魔力なんだが、見えないうえに感じることもできない以上どうしようもない。
魔力だとして、それは俺由来なのか、ダンジョン由来なのか、はたまたこの世界由来なのかさえ分からない。謎は深まるばかりだが、だからと言ってこの二つのアイテムの有用性が減るわけでもなので無問題。
手袋をした手で宝箱を円盤の上から動かし、片手の手袋を外して円盤の上に手を近づけたところ熱くない。恐る恐る円盤を触ったところやはり熱くなかった。これはスゴい。
「エド、これなら料理できるよ」
「おそらく、火力も口で言うだけで調節できると思う」
「そうなると本格的な料理もできそうですね」
直接焼くことはできないけれど結構な料理ができると思う。しかしそこは俺以外の二人の料理スキルにかかっている。
待てよ、料理だって能力の一つに違いない。となると俺でも料理ができるってことか? ただ0.0に何を掛けても0だから無理なのかも? しかし、俺だってインスタントラーメンくらい自分で作れたし冷凍食品だってチンできた実績がある以上0.0ではないハズ。ここで何を言っても始まらないが、とにかく俺たちのダンジョンライフが数ランクアップしたことは間違いない。
明日地上に戻ったら、明後日調理道具と食材、塩コショウ系統を買いそろえるぞ!
「それじゃあ、エリカ、この円盤と筒を収納キューブに収納してくれ」
「えっ! わたしがするの?」
「だって、今手に持ってるじゃないか? それに、誰でも使えるようになっている方が便利だし、なにかあっても困らないだろ?」
「わかった。じゃあ『開け』」
エリカの手にした収納キューブが広がっていき、慌ててエリカが手を離したら収納キューブは床の上で完全な形になった。
真っ黒な箱に向かって円盤と水筒をエリカが投げ込んだら二つとも吸い込まれるように消えてしまった。
「『閉じろ』」
収納キューブは元の大きさに戻って銀色に輝いた。
「うまくいったようだから、そろそろここから撤収しよう」
「この宝箱どうする?」
「売ればそこそこの値段で売れそうだから、持って帰ろう。売れなくても物入くらいには成るし。エリカ、これも収納してくれるか?」
「分かった」
今度はエリカは収納キューブを床に置いてそこで
俺はお湯の入った宝箱を傾けてお湯を出し収納キューブに入れてやり、もう片側の宝箱はケイちゃんが収納キューブに突っ込んだ。
「『閉じろ』」
エリカが最後に閉じた収納キューブを拾い上げた。
「それじゃあ、エリカが持っててくれ」
「わたしが持っておくの? リーダーが持っててよ」
エリカが何を思ってそういったのかは分からないが、俺が持っておくことにした。そのうち、ちゃんとした袋を買って腰からか首から下げた方がいいだろうな。
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