第55話 1泊ダンジョンアタック3


 準備を整えた日の午後は、洗濯などの雑用をこなし、そのあと図書室に行って6階層と7階層のモンスターを調べた。

 モンスターの種類とすれば、今までのモンスターに加えてオオカミ系が加わるということだった。オオカミについては利用価値がないため、持ち帰ってもギルドでは引き取ってもらえない。と、いうことなのでオオカミが襲ってこないならわざわざこちらから仕掛けていく必要はない。

 図書室で調べた後、荷物をリュックに詰て明日の用意をしておいた。エリカが用意してくれた板に地図を描くとき紐が右手の邪魔にならないよう紐を対角線上斜めに取り付けている。板そのものはリュックの後ろに括り付けておいた。



 そして今日はダンジョンに泊りがけで臨む日だ。


 いつものように3人で朝食を食べ、一度部屋に戻った俺たちは装備を整え、リュックを背負い揃って階段を下りて行った。


 渦の前でリーダーらしくひとこと。

「それじゃあ、今日、明日。頑張っていこう」

「はい」「はい」


 今日の作戦は、一気に6階層まで下り、そこから地図を作っていく。6階層まで下りるのは7時少し前にダンジョンに入って2時間半。9時半ころ到着予定だ。そこで小休止して、7階層に続く坑道らしきものを探す。運が良ければ7階層に向かうダンジョンワーカーがいるのでその人たちの後についていくだけで何とかなると思う。

 それだと、地図を描くのが追い付かないが、階段間の坑道は迷子になるような坑道でもないので何とかなるだろうと高をくくっている。


 7階層に続く下り階段までの地図ができたら、いったん階段下まで引き返し、そこから坑道をしらみつぶしにしていく。地図が狂ってしまうと、同じ坑道を違う坑道と勘違いする可能性やその逆もありえるが、昔から方向感覚には自信があったし、レメンゲンのおかげでさらに方向感覚はさえていると思うので問題ないと思う。とにかく最初の数本、基幹となる坑道さえ正確に描ければあとがかなり楽になる。

 少々地図が狂ったとしても、基幹坑道への繋がりさえしっかりしていれば迷子になることはならないはずだ。


 昼休憩を推定12時ごろ1時間取り、そこから4時間坑道を歩き回ってそこで夕食の休憩1時間。そこから12時間、推定明日の6時まで夜間休憩をとる。その間4時間おきに不寝番を交代する。今回は初めてなので睡眠時間が途切れてしまう真ん中のシフトに俺が入る。


 そんな感じで、翌日、推定時刻午後4時にギルドに戻る。帰還時刻はプラスマイナス2時間くらいに収めたいがあくまでそれは希望だ。無事に帰れさえすれば問題ない。


 俺を先頭に渦を潜り抜け、俺たちはいつもの一列縦隊で2階層への階段を目指して歩いて行った。


 前を歩くダンジョンワーカーは最初のうち多かったが、階層が下るにつれて少なくなってきたものの、それでも何組か前を歩いていた。


 休憩もなく2時間半歩き詰めで何とか5階層から階段を下りていき階段下の6階層の空洞に到達した。

 

 7階層を目指している感じのダンジョンワーカーたちは休憩することなく空洞の先に消えていったが、俺たちは予定通りここで休憩することにした。

 彼らの入っていった坑道をまっすぐ進んでいけばおそらく7階層への階段があるだろう。

 もう一組、後続のチームがその坑道に入っていけばまず間違いない。


 休憩中にそういったチームが現れてくれればいいなと思いながらリュックを路面に下ろして空洞の壁にもたれかかり、水袋から水を飲んだ。


「ここまでは順調だったな」

「そうね」

「ここまで休まず来たのに、意外と疲れないものですね」

「エドのレメンゲンのおかげでしょうね」

 それもあるだろうけど、間違いなく地力も上がってると思うんだよな。その地力自体レメンゲン効果があるんだろうけど。


 10分ほど休憩したところでリュックから画板**を取り外し、紙と鉛筆風の筆を用意して、リュックを背負ってから肩に画板の紐を掛けた。

 残念ながらその間、後続のダンジョンワーカーは通りかからなかった。そこは仕方ない。


「エドのその格好、何だかおかしいけど、地図は描きやすそうね」

「うん。エリカのおかげだよ。まずはこの空洞を大まかに描いて、それからさっきのダンジョンワーカーたちが入っていった坑道に入っていこう。」


 絵心があるわけではないが、何度か図書室の地図を描き写していた関係でそれラシイ絵が描けた。


「一応描けたから、行こうか」

「「はい」」


 地図を描きながらなのでペースはかなり遅い。それでも地図の上に本坑道を延長しながら側道への穴を描いたりて40分ほどで7階層に続く階段前にたどり着いた。この間、他のダンジョンワーカーに追い抜かれることもなく、前からやって来るダンジョンワーカーに出会うこともなかった。6階層ともなると過疎っているのだろうか? 今現在この階層にどれだけのダンジョンワーカーがいるのか知るすべがない以上何をどう考えようが空想に過ぎないし、移動中は歩数を勘定しているので考えるのは止めておいた。


「簡単に階段が見つかってよかったな」

「ほんとね」

「そうですね」

「いったん階段下まで戻って、そこから本格的にこの階層を見て行こう」

「了解」「はい」

「休憩はいいかな?」

「わたしは大丈夫」「わたしもです」


「それじゃあ、引き返して空洞に着いたらそこで少し休もうか」


 復路は地図を見ながら見落としはないか確かめつつ歩いたが30分ほどで階段下の空洞まで戻ってこられた。


 ここで5分ほど小休止して先ほどの坑道の隣りの坑道に入っていった。

 地図を描きながら10分ほど歩いたところで最初の側道への入り口があった。方向から言って下り階段への本坑道にあった最初の側道への穴につながっている可能性が高い。

「この側道を行けば、下り階段につながった本坑道に出ると思うけど確かめてみよう」

「了解」「はい」


 俺の描いた地図は思った以上に正確だったようで、思っていた時間の5分ほどで予想通り本坑道の思っていた位置に出ることができた。


 どこも似たような坑道だし、見覚えがあるわけではないのでそこが果たして俺の考えている地図上の点なのか証拠はないのだが、地図から言ってそこが階段につながる本坑道であることは間違いない。

 これなら、本坑道を歩いて行き側道への穴を描いていけば大まかな地図はできる。

 側道の中でさらに分岐してしまえば別だが、そこまで正確な地図は目的から言って不要だろう。


「次は、さっきの坑道に戻って先に進もう」

「了解」「はい」


 そんな感じで俺たちは推定12時まで坑道内を歩き回り地図を描いていった。


 その間、一度他のダンジョンワーカーチームにあい、ケイちゃんが大ムカデを1匹仕留め、エリカが赤鬼ダケと青鬼ダケを各々1本見つけている。



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