第40話 5階層2。リクルート
5階層に下りて初日。
午前中、俺たちはモンスターに出くわすこともなく、赤、青のキノコだけを手にいれて昼休憩に入った。
「これなら、泊りがけでもよかったんじゃない?」
「今度はちゃんと準備して1泊してみようか?」
「うん。モンスター次第ですぐ帰ることになるかもしれないけど、やってみようよ」
「準備する物は、毛布くらいかな?」
「そうねー。交代で寝ないといけないから砂時計はあった方がいいんじゃない? 4時間ものって売ってたとしてもすごく大きそうだから、1時間ものか2時間ものよね」
「そうだろうな」
確かにモンスターが出現する坑道内で野宿というか寝ることになる以上、見張りは必須か。
しかし、見張りするとして二人ではかなり厳しくないか? 夜の睡眠を含めた休憩を12時間として、寝るのは10時間。それを交代で見張りするとなると睡眠時間は5時間になる。1日歩き回って5時間の睡眠ではキツイんじゃないか。今の俺は夜の9時前には寝て、5時過ぎに目覚めてるから8時間から9時間寝てるんだけど。
「エリカ。二人で交代して寝るとなると、一人5時間くらいしか寝られないがきつくないか?」
「5時間?」
俺は先ほど考えたことをエリカに説明してやった。
「確かに5時間しか寝られなんじゃ大変よね。だからと言ってエドとわたしで6時間ずつ寝てしまうと、見張り時間が6時間にもなってそれはそれできついわよね」
「だろ」
「つまり、二人だと泊りがけはきついってことよね」
「よそのチームはたいてい3人以上ってことは、そういうことだったのかな?」
「そうかもしれないけど。じゃあ、わたしたちどうするの? 3人目をどこからか見つけてくる?」
「俺たち並みに動けないといけないから、3人目を見つけるのは難しいだろうな」
「だよね」
「フリーでやってるダンジョンワーカーが今さらチームに入るわけないしな」
「うん。でも、同じチームならレメンゲンの力でかなり動きが良くなることは確かなんだから高望みしなくてもそこそこの人なら何とかなるんじゃないかな?」
「それもそうか。とは言っても当てはないんだよなー。
エリカに当てはない?」
「もちろん当てなんかないわ」
「だよなー」
誰かいい人いないかなー。
この街で俺の知り合いと言ったらエリカだけだし、おそらくエリカだって俺以外の知り合いはお父さんの商会の支店の人だけだろう。
誰かいい人いないかなー。
と、いくら言っても、魚のいない池に釣り糸を垂らすようなもので、いい人が現れるはずもなし。
それでも、誰かいい人いないかなー。
あっ! キャバクラのケイちゃん! 弓と短剣が使えるって言ってた。
リクルートしてみるか。今日夕食摂ったら行ってみよう。文字通りダメもとだしな。いや、ダメでもウハウハだし。
「エリカ。俺、一人だけ心当たりがあった」
「そうなんだ。どんな人?」
「心当たりがあると言ってもダンジョンワーカーじゃないから、誘ってもどうなるかは分からないんだよ。夕食食べたら行ってみる」
「行くってどこへ」
「その人物が働いているところ」
「夜働いてるってころは食堂とか酒場ってこと?」
「そんな感じ」
「ふーん。わたしはついていかなくていい?」
「うん。俺一人の方がやりやすそうだから、いいよ」
「分かったわ」
……。
「そろそろ帰ろうか?」
「そうね」
休憩を終えた俺たちは装備を整えて来た道を引き返していった。
もちろん正確ではないが、4時間ほどかけてダンジョンギルドに戻ってきた俺たちは買い取りカウンターで今日の戦利品であるキノコを台の上に並べた。
「お前さんたち、もう5階層に行ったのか!?」と、買い取りのおじさんに驚かれてしまった。
「いちおう。モンスターは出てこなかったので、まだちゃんと行ったって感じじゃないんですけどね」
「ダンジョンの中じゃ何が起こるか分からないから気をつけろよ。
どのキノコも問題ないな。赤青4本ずつ。合わせて銀貨15枚ってところだ」
「ありがとうございます」
キノコを摘んだだけなのに結構儲かってしまった。
3階に戻って部屋の前でエリカと別れた俺は夕食までに時間があったので、汗を流そうと桶にタオルを入れて1階に下りて行った。ギルドの裏手に回り水場で体を濡れタオルで拭いた。水場には何人か人がいたうちに女子もいたので、上半身裸までで下は脱がなかった。下を拭くのは部屋に帰ってからだな。
上半身だけさっぱりした俺は、タオルを再度洗ってよく絞り、桶に入れて部屋に戻った。
部屋に戻った俺は下だけ脱いで念入りに濡れタオルで拭いた。
フォー。スッキリ。
これでよーし。いい匂いがするわけではないが全身汗臭くはないだろう。すべてはリクルートのためだ。
タオルは早めに洗っておきたかったので、下を忘れずにはいて再度汚れたタオルを持って水場に行って洗ってから部屋に戻った。
タオルを物干しロープにかけてから、夕食までの余った時間は装備の手入れして時間を潰した。鐘が3回鳴ったところで扉の向こうからエリカが食事に行こうと声をかけてくれたので二人そろって1階に下りて行って
定食がテーブルに置かれたところで、エリカは普通のブドウ酒を注文したが、俺は別にアルコールに弱いわけではなかったが出撃に備えて薄めたブドウ酒にしておいた。
「「かんぱーい」」
飲み物が到着したところで乾杯し、食事を始めた。
「エドの心当たりの人がわたしたちのチームに入ったとして、最初から5階層は厳しいわよね」
「1階層で様子を見て、行けるようなら、3階層、5階層って感じで飛ばし飛ばしでもいいんじゃないか。俺とエリカが前衛でその人が後衛ならそれほど後衛は危険じゃないだろうし」
「そうね。それである程度慣れてきたら5階層に泊まり込みできるものね」
「そうだな。あとは弓使いだから矢を消費するだろ?」
「そうじゃない」
「そういったものはチームで支給した方がいいんじゃないか?」
「それもそうね。そうなると、チームとしての財布が必要になるわよね」
「そうだな。買い取りカウンターでお金を受け取ったら、銀貨1枚くらいをチームの財布に入れて残りを山分けでどうだ?」
「それでいいんじゃない」
「もう一点あるんだ」
「なに?」
「俺とエリカは登録から1年が過ぎるまでここ無料だろ?」
「そうね。ここの費用もチームで出した方がいいわよね」
「それでいいよな」
「うん」
「じゃあ、この線で話を進めてみるよ」
「うん。頑張ってよね」
「うん。なるべくな」
「そんなこと言わない」
「全力でがんばるよ」
「うん」
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