第29話 3階層
結局昼前から2時近くまでギルドの食堂兼酒場の
俺もエリカも酒には強いようで、かなり飲んだがいい気分になっただけで不調という感じでは全くない。
こういった体に産んでもらったことを両親に感謝しないとな。
3階に二人で戻り、夕食は各自適当に摂ろうということにして部屋の前でエリカと別れた。
そのあと俺は思い出して紙と筆を持って2階の図書室に行き3階層の地図を写し始めた。
アルコールである程度知的能力は低下しているはずだが、3時間ほど地図を写したらいい線出来上がってしまった。
地図を描き写している時気づいたのだが、3階層は、1、2階層より広いようだ。確かめようと地図を見比べると1階層と2階層では広さの差はないみたいだったが3階層は確かに広い。ついでだったので4階層を見たら3階層より広く、5階層はその4階層より広かった。4階層、5階層を描き写すには縮尺を変えても俺が買ってきた紙1枚では収まりきらないようで2枚は必要そうだ。
エリカに聞いたのだが、その5階層からベテランダンジョンワーカーたちは稼いでいるそうだ。つまり1階層から4階層までが新人から若手ダンジョンワーカーという区分らしい。
だいたい下り階段を下りてから次の下り階段まで歩いて30分くらいかかるらしいので、5階層まで片道2時間以上かかる。往復で4時間。けっこう移動で時間が潰れてしまう。
5階層くらいまでなら日帰りで行き来できるが、現在の最前線と言われている10階層だと片道5時間、往復で10時間近くかかる。こうなると泊りがけの用意が必要になる。今の俺たちには関係ない話だが、トップを目指すならいずれ向かわなければならない。
夕方近くになり、描き写した地図を持って部屋に帰った俺は、少し疲れたので地図をテーブルの上に置いてベッドに横になった。
目覚めたら、夜になっていた。真っ暗な部屋だけど、ダンジョンの中同様夜目は利くので支障はない。お腹も空いていたので1階に下りて定食でも食べようと部屋を出た。
その4人は俺のことを横目で見た後、すぐに無視して仲間うちの話で盛り上がりながら飲食を続けた。
時間がズレていた関係で座っただけでは定食は出てこなかったのだが、俺が座ってしばらくして給仕のおじさんがやってきたので薄めたブドウ酒と定食を頼んだ。
待つこともなく定食と飲み物が届けられたので、俺も食べ始めた。
俺が食べ始めたら、横に座っていたおっさんたちが俺に話しかけてきた。4人とも何気に腕が太い。
俺の知る限りだと新人ダンジョンワーカーは3人のチームが多いが、ベテランは4人チームが多いのか?
サクラダに向かう途中馬車で一緒になったベテランダンジョンワーカーも4人だったし。
まあ、俺たちは二人だし、あまり見かけないがソロだっているだろう。結局適当って事かもな。
「おまえさん、上の寮に住んでる新人だろ?」
「はい。先日登録したばかりです」
「一人で食べてるのか?」
「はい」
「新人でソロは感心しないぞ」
「ソロってわけじゃないんですが、今日はたまたま夕方は別行動にしたもので」
「それならいいけどな」
結構いい人たちのようだ。
「そういえば、みなさんは今どの辺の階層でお仕事してるんですか?」
「俺たちは7階層だ」
やはりベテランは5階層より深いところで稼いでるんだ。俺たちも頑張ってまずは5階層に。ゆくゆくは10階層の最前線だ。最前線にはお宝が眠っている可能性が高そうだしな。
魔剣レメンゲンの力でお宝が容易にゲットできる気がするんだよなー。
「7階層だと、どんなモンスターが出るんですか?」
「大ウサギや大ネズミは当たり前にいるんだが、厄介なのはやはりスライムだな。
上の階層と比べて大きい上に動きが速い」
いちおう図書室にあった本で読んでいたからスライムがいることは知ってはいたが、そういった詳しいことはその本には載っていなかった。
今まであまり情報収集をしてこなかったけれど、これからは必要のようだ。
「俺たちはスライムがいたら、お金にもならないし武器や防具が傷んでしまうから引き返すようにしてるんですが、みなさんはどうしてるんですか?」
「俺たちも基本は逃げだすんだが、どうしても進みたいときとか、逃げ出せないときは戦っている」
「コツってあるんですか?」
「そうだなー。一度、粘液を吐き出したら次吐き出すまでにわずかな時間があるからその間にけりをつけるってとこか。へたすると痛い目を見るからかなり難しい。
4階層までのスライムではそんなことはないんだが、5階層からスライムをたおすとアイテムが手に入ることがある。下に行くほどいい物が出るらしいんだが、もちろん滅多にないことで俺たちでさえまだ当たったことはない。当たれば大きいみたいだがな」
ほう。これはいい情報だ。
ボーナスって感じか。武器防具を犠牲にしてガチャを引くようなものだな。
作戦的には安物の盾を使って初撃を受けるなり避けたうえでレメンゲンで切り飛ばす。
まさか魔剣が酸で溶けることはないだろうし。
「俺たちじゃまだまだ先の話ですがためになりました。ありがとうございます」
「おう」
「また何か聞きたいことがあれば教えてやるからな。頑張れよ新人」
「ありがとうございます」
俺は定食を食べ終え飲み物も飲み終えたところで、その4人に一礼して席を立って部屋に帰った。
お腹も膨れた俺は、またベッドに横になった。
いやー、今日の夕食はためになった。
そういえばエリカは今何やってるんだろうな? 昨日の俺みたいに女用キャバクラというかホストクラブにでも行ったかな? ところでこの世界にホストクラブってあるのだろうか? 今度エリカに聞いてみるか。それくらいじゃ、セクハラにはならないよな?
そのエリカであるが、体を拭こうと暗い中ギルドの裏手の井戸端に行っていた。
いつもなら人がいるのでここで手足を拭くだけで済ませ、体の方はタオルを2枚ほど水に浸けて絞ったものを持ち帰って部屋の中で拭くのだが、今日は井戸の周りに誰もいなかったのでその場で真っ裸になって桶に入れた水を被ってそれをタオルで拭いていた。
「フー。水はちょっと冷たかったけど気持ちいいー」
体を拭き終わったエリカはてきぱきと服を着て最後にタオルを洗ってからギルドの中に戻っていった。
[あとがき]
最後の1文は、万が一この作品が映像化された場合のサービスシーンです。暗がりですが井戸なので湯気はありません。
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