惑星間移民が行われる未来の世界で、環境悪化から人が別所に移住し静かになった地球を舞台に、無人のままアンドロイドによって祭礼が、神楽舞が再現されている。
奇妙に間延びしたような地球の描写から劇的な祭礼へのシーンの移り変わりはまさにお祭の持つあの独特な空気感の変化に重なるものがあり、読んでいて感じ入る所がある。そしてそんな未来的でありながら祭礼の持つ意味の変わらぬ再現が成される一方で登場人物の中に隠された小さな物語が重なり明かされるのだが、これがまたいい。
祭りには日常の停滞を破壊する役割と力があるとはどこかの本で読んだ内容だが、この短編もまた日常が祭礼によって停滞を脱し、そしてまた新たな日常へと帰っていく。この作品自体がコンパクトな一つの祭礼のようで、祭りから帰ってきた日の夜のような読後感はとても良い。短い文字数に似合わぬ豊かな感覚を与えてくれる作品に思えた。