⑤『脳がつくってしまった毒の花』プロット 千田多喜子著

・『脳がつくってしまった毒の花』 千田多喜子

(お題「溶ける朝食」)


◇起

 一人暮らしのなまけ者の独身女性。

 いつも朝からメイクに時間をとられてバタバタしていて朝食がとれない。それで体力もなく公私とも精彩の無い日々を過ごしている。彼も居なくて良いことの無い毎日だ。


 ある晩ワインを飲んで悪酔いをして寝る。夜半眠りが浅い時おかしな夢を見る。何か花のような芳香のする植物の夢だ。その香りを嗅ぐと全身が清められて心身とも美しくなる。かつ、少し食べただけで満たされる。


◇承

 翌朝、ぼーっとした頭で起きるとテーブルの上に植木鉢があった。な~んだ食べ物ではないんだ……と。でも水をやってみた。私がメイクをしているうちに茎がすーっと伸びて茎の上に玉葱のような形をした花が咲いた。おかしな形の花だ。花に近寄ると良い香りがする。


 思い出した! これは昨夜夢で感じた香りだ。紅い花弁はなびらを口にすると何とも表現し難い味がした。次々と花弁を取って味わってみる。一枚一枚花弁の香りが違い、だんだん元気が出てきたのを感じる。何か若返ったような気がした。ほんの花弁数枚で人間が変わったようだった。出勤したら私を見る人の目が違うのを感じた。


◇転

 夜、またワインを飲んで寝た。同じような夢を見た。

 そして朝、不思議なことに、昨日花弁を取って口にしたのにまた元通りの花に戻っていた。安心して花弁を全部食べ、下の玉葱状のモノも食べてしまった。さらに良いことがありそうな期待をしたが、夢はもう見なかった。

 翌朝、花はまた元に戻っていた。そしてメイクをする前に鏡を見てみたら肌は透明になり、髪はきれいにカールしていて、理想とする自分になっていた。


◇結

 私は花の下の茎をストローのように吸ってみた。これは初めてだった。ストローを通して口に入ってきたのは、なんと紅い血だった! すると突然今までと違い一気に肌がシワシワになってしまった。もしかするとこれは魔女が食べる不老不死の花だったのだろうか。

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