第5話 本当の試験
クオンの件でひと騒動あったが、どうにか能力測定が終わった。
今は第一試験場の中で試験官が来るのを待っている。
あの後カズハも身体能力試験で非凡な才能を見せつけていたし、アルド達主人公勢も極めて優秀な結果だったように思う。
ん?俺はどうだったかって?
まあ、うん……。
悪くは無かったぞ?。
平均を大きく超える結果は残せていたと、試験官も言っていた。
言っていたんだが、兎に角目立つ奴らがすごすぎて……。
所詮は中ボスの悪役貴族。
本物には勝てないって事だろう。
でもまあ、取り敢えず問題なく通れただろう。
あとは、恐らくこの後ある本試験を待つだけだ。
それにしても、なんでアルド達がここにいるんだ?
俺の認識が間違ってたのか……?
いやでも、俺とアルドが同い年なのは間違いない。
となれば、入学の年齢も間違ってはいないはずだが……。
俺の行動で、世界の歴史が変わってる……?
バタフライエフェクト的なやつか?
若しくは、もう一人だれか転生者がいて、そいつの影響で……?
俺が転生者なんだ、別の転生者がいても不思議はないだろう。
そう考えると辻褄は合うな。
「あ、試験官が来たみたい」
「お、本当だ」
「疲れたから早く寝たいわ……」
試験官が待機している俺たちの前に立つ。
自然に、全員の視線が集まる。
「君たちはみな非常に良い結果でありました。貴族平民問わず、素晴らしい素質を持つ君たちはこの学校を卒業するころには立派な騎士となる事でしょう」
ずいぶん褒めちぎって来るな、ゲームでもこんな感じだったか?
あ、ちなみにここを卒業した時点で平民でも一代騎士になる資格を得られることになる。
それだけに、平民の熱意は貴族のそれを超えている。
「君たち全員をこの学校に迎え入れましょう、合格おめでとう」
うおおおおお!と、受験生の喜ぶ声が試験会場に響き渡る。
「よかったね、ルイス!」
「私たちなら合格は当然よ、何を喜んでいるのかしら」
カズハが嬉しそうに笑い、それをクオンが諫めている。
まあ、クオンも普段より声が弾んでいるように聞こえるし、喜んでいるんだろう。
だけど、俺は知っている。
これは罠だ。
というか、この後こそが本番の試験なのだ。
「さしあたって、君たちにを6人1組の班に振り分ける。そのメンバーで、今日一日王都の外にある保養所に宿泊してもらい、明日はネルド砦にて入学式を行う」
そう、これこそが本当の試験だ。
今夜泊まる保養所に、モンスターがやって来るんだ。
それに対処し、ネルド砦にたどり着けた者だけが本当にこの学校に入学できる。
場合によっては半数以上死ぬだろう。
ゲームでは、生存率6割とかだったはずだ。
貴族は優先して強いメンバーと組まされるから生存率は高いが、“弱い平民“はほぼ死ぬと言っていい。
実にダークファンタジーしてるシビアな国だ。
「私、ルイス意外と一緒に寝泊まりするなんていやよ」
「班分け次第じゃ仕方ないだろ」
「もし私の魅力に狂った男が襲ってきたらどうするの?」
クオンが挑発するようにこちらを見る。
“俺の“クオンがどこぞの男に襲われてる所を想像してしまう。
……うん、許せないな。
殺意以外何もわかない。
「俺がそいつを殺す」
至極当然だ。
許されるわけがない。
「あたし、クオンがおかしいと思ってたけど、ルイスも大概よね……」
カズハがため息をつく。
そんなに変なこと言ったかな?
「好きな人を思う気持ちは過激であるべきよ、あなたもこれ位思われてみればその良さがわかるわよ?」
「まあ、確かに嬉しいのかも……? ねえルイス、あたしは? あたしを襲った男はどうするの?」
カズハが襲われたらか……。
ムカつくし、許せない。
だけど、なんだろう。
クオンとはちょっと感覚が違うような……。
「ふふ、悩んでいる時点で私の勝ちね」
「別に、勝ち負けを決めようとしてないしっ」
そう言いつつ、カズハが顔を横に向け、声もやや低くなる。
うーん、明らかに機嫌悪そうだ。
「なんだろう、カズハの場合は大切な友人が襲われたって感覚だから、ちょっと違うんだよ」
「……はぁ。とりあえず、今はそれで許してあげる」
未だ機嫌は悪そうだけど、取り敢えず許してはくれるみたいだ。
「さて、それでは壁に貼ってある組み分けで各々、指定された宿舎で過ごすように」
俺たちが雑談をしている間に組み分けが発表されたようだ。
「ほら、見に行ってみましょう」
「そうだな」
取り敢えず、クオンやカズハと一緒が良いな。
最悪クオンとカズハは別でいいから、取り敢えずアルド達主人公組と離れられればそれで……。
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