風立ちぬちぎりし文は野に散りて


風立かぜたちぬ ちぎりしふみは りて




秋の句です。



風の冷たさに秋の訪れを悟る。

いつかそれほどの時が過ぎていた。いまさら気づく――恋もとうに終わっていたのだ。

投函されることのなかった手紙を読み返し、しばらくためらったあと、手紙をちぎる。こまかくちぎった手紙は風に吹かれてばらばらに飛んでいく。

無邪気に永遠を契ることができた頃の幻影。

風が野を吹きすぎていく。幻影はあとかたもなくなる。


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