27 みやびをだましたワナ解除師
ギルドマスターの部屋
ギルドマスター
「プロのワナ解除師ナリルさん、来てくれてありがとう。」
ワナ解除師 ナリル
「どういたしまして。」
受付嬢
「ナリルさんに、お聞きしたいことがあります。」
ナリル
「わたしに分かることなら、なんなりと。」
受付嬢
「それでは、お聞きします。
上級パーティの3人は、どうされましたか?」
ナリル
「ダンジョンの出口で別れた。
わたしには、急用があったことを思い出したからです。」
ギルドマスター
「そうですか?
上級者パーティから儲けの40%は受け取られたのですか?」
ナリル
「それが、まだなのです。
良いひとそうだったので、まさか踏み倒されるとは思いませんでした。
ギルドで見かけたら、教えてください。」
受付嬢
「どのくちが言うのですか?」
ギルドマスターは、受付嬢の前に右手を伸ばして止めた。
ギルドマスター
「では、ナリルさんにお聞きします。
ダンジョンでワナに掛かった冒険者がどうなるか、ご存じですか?」
ナリル
「もちろんです。
初級ダンジョンでは、スタート地点に戻されます。
中級ダンジョンでは、お金が半分になってから、スタート地点に戻されます。
上級ダンジョンでは・・・」
受付嬢
「上級ダンジョンでは?」
ナリル
「ランダムで上級ダンジョン内のどこかに飛ばされます。」
ギルドマスター
「ナリルさん、あなたは賢者ミエルよりも上のワナ解除師でしたね。」
ナリル
「もちろんです。 ミエルなんかに負けていませんよ。」
受付嬢
「ギルドマスター、もういいじゃありませんか?」
ギルドマスター
「そうだな、ナリルさんは知らないようだがな。
ギルド会館の地下にある霊安室に、なきがらが転送されるのだよ。」
ナリル
「わたしをからかっているのですか?
そんなことが有るわけないでしょう。」
受付嬢
「もちろん、ギルドの最高機密で、多くの冒険者には秘密ですからね。
あなたが知らなくても無理が無いことでしょう。」
ナリル
「じゃあ、わたしには責任がありませんね。」
ギルドマスター
「そうは行かない。
上級者3人は、あなたの言葉を信じて、無残な姿になったんだ。」
ナリル
「わたしを悪者にする根拠というか証拠はあるのですか?」
受付嬢
「ギルドプレートです。」
ナリル
「それが証拠ですか?
わたしの才能に嫉妬してわたしを落とし入れようとするのですか?」
ギルドマスター
「ギルドプレートには、冒険者の死の間際の言葉を残すことが出来る。
聞かせてやろう。」
上級者A、B、Cの無念の声が再生された。
ナリル
「彼らのワナの取り扱いが悪かったのが原因だ。」
受付嬢
「彼らにワナの取り扱いについて、教えたのですか?」
ナリル
「彼らは、上級者だから教えることはなにも無かった。」
受付嬢
「初級者パーティと中級者パーティに聞き込みをしました。
しかし、彼らは一番重要なことを知らされてはいませんでした。」
ナリル
「わたしは、ちゃんと教えた。」
ギルドマスター
「なにを教えたんだ。
言ってください。」
ナリル
「床のワナ、壁のワナ、宝箱のワナについて、ちゃんと説明した。」
受付嬢
「それだけですか?」
ナリル
「他になにがあるというんだ。」
ギルドマスター
「上級ダンジョンのワナに掛かったら、いのちがなくなる。
初級ダンジョンや中級ダンジョンだからと、気を抜くな。」
ナリル
「それなら、ちゃんと教えた。
しかし、ダンジョンのもうけのことで思い出せなかったんだろう。」
受付嬢
「それは、ありません。
十分な時間を掛けて思い出してもらいましたから。」
ナリル
「じゃあ、バカだから忘れてしまったんだろう。
わたしは、ちゃんと教えたんだ。」
ギルドマスター
「見苦しいぞ。
バカでも生命に関わることを忘れたりはしないぞ。」
受付嬢
「そうですよ。
ミエルさんにダンジョンについて、教わった武闘家みやびさんでも、覚えています。」
ナリル
「あのバカのみやびが覚えているだと。」
ギルドマスター
「これではっきりしたな。
ナリルさん、あなたは、ミエルさんよりも数段、いや十段以上は下の存在だ。
もう、あきらめろ。」
ナリル
「うわあー。」
ナリルは走って逃げ出した。
その途中で、武闘家みやびを見つけた。
ナリル
「武闘家みやびさん、大変だ。
ミエルさんが、上級ダンジョンで行方不明になった上級パーティを探すために、上級ダンジョンに向かったんだ。
みやびさんを見つけたら、連れてきてほしいと言われたんだ。」
みやび
「すぐいくさ。」
ナリル
「わたしも行きます。」
みやび
「いや、あなたは要らないさ。」
ナリル
「いいえ、なにかの役には立てます。
ついて行きます。」
みやび
「ジャマしたら、怒るさ。」
ナリル
「大丈夫です。」
そして、上級ダンジョンの20階層で、みやびは、ナリルのワナに捕まってしまった・・・
みやび
「ミエル、ごめんさ。」
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