26 上級ダンジョンで【大失敗】のワナ解除師
ギルドのテーブルで、初心者パーティと中級者パーティが喜んでいた。
上級者パーティは、ワナ解除師 ナリルさんを囲む人たちの会話を遠くから聞いていた。
上級者A
「ボクたちは、これから初めて上級ダンジョンに挑もうとしている。」
上級者B
「不安になる気持ちはわかるわ。わたしだってそうよ。」
上級者C
「初級者や中級者にも優しくできるナリルさんは良い人格者かもしれないわね。」
上級者A
「しかし、利益の40%は取りすぎだと思うぞ。
せめて、利益の30%にして欲しいな。」
上級者B
「しかし、命には代えられないぞ。」
上級者C
「ナリルさんは、1回だけパーティに参加するそうだ。
だから、1回だけの授業料だと思えば安いもんだろう。」
というわけで、上級者は、ワナ解除師 ナリルさんを上級ダンジョンに誘った。
ワナ解除師 ナリル
「ボクを雇いたいなら儲けの40%だよ。 払うなら上級ダンジョンに行ってあげるよ。」
上級者A、B、Cは、ナリルとパーティを組む申請をした。
受付嬢
「ナリルさん、上級者でワナ解除師のプロのあなたが、一般上級者3人を指導してあげてくださいね。」
ナリル
「ああ、大船に乗ったつもりで安心して欲しい。」
上級者A、B、Cは、ナリルとともに、上級ダンジョンにもぐった。
◇
上級者A、B、Cは、ワナにそれなりになれていた。
だから、床のワナに引っ掛からない。 壁のワナにも引っ掛からない。
もちろん、宝箱のワナにも引っ掛からなかった。
ワナ解除師 ナリル
「さすがは、上級者パーティだ。
ボクの出番はなさそうだ。
おかげで、ボーっと立っていることしかできない。」
上級者A
「そんなことはありません。
中級ダンジョンや初級ダンジョンにはないワナがあるはずです。」
ナリル
「まあ、そんなワナがあっても、私が見つけるから安心したまえ。」
上級者B
「たよりにしています。ナリルさん。」
ナリル
「うむ、私のいう通りにすれば大丈夫だ。」
しばらく歩くと小部屋があった。
中には
上級者C
「ナリルさん、この赤い魔法陣はなんでしょうか?」
ナリル
「地上へ
上級者A
「でも、色が赤いです。
帰還魔法陣は青色に光っていますよね。」
ナリル
「うむ、上級ダンジョンだから、色が違うのだろう。」
上級者C
「転移魔法陣だったら、大変なことになりませんか?」
ナリル
「わたしの言うことが信じられないのか?」
上級者A
「そんなことは、ありません。
わからないことを聞いただけです。
気を悪くしないでください。」
ナリル
「まあ、あやまるのなら、ゆるしてやろう。」
上級者C
「まあまあ、見つけてしまった私が先に魔法陣に入ろう。
ナリルさんとみんなは後から来てくれ。
万が一、ワナだとしても、被害者はわたしだけで済むからな。」
上級者Cは、赤い魔法陣の中に入った。
◇
赤い魔法陣の先では、隠れボスが待っていた。
隠れボス
「ほう、ひとりで来るとはな。」
上級者Cは、あたりを見回したが来た時の魔法陣が無かった。
上級者C
「そんな、帰れないのか。」
隠れボス
「あわれだな。 せめて、苦しまぬようにしてやろう。」
上級者C
「ぎゃあー。」
上級者Cは、消えてしまった。
隠れボス
「そうか、上級ダンジョンでは失敗した冒険者は、あそこに転送されるのだったな。」
◇
残された上級者A、Bとナリル
上級者A
「赤い魔法陣が消えてしまった。」
上級者B
「どこに行ってしまったんですか?」
ナリル
「上級ダンジョンのなかでも、新型のワナかもしれない。
想定外の事態です。
みなさん、帰りましょう。」
上級者A
「ワナ解除師のあなたがついていながら、これですか?」
ナリル
「わたしが見抜けなかった以上、ほかの誰にも見抜けません。
これは、事故です。
わたしを責めても何も変わりませんよ。」
上級者B
「ぐっ。」
上級者AとBは、黙るしかなかった。
ただ、冒険者Cの方が正しかったことを後悔していた。
◇
上の階層を目指して急いだが、水が無くなってしまった。
すると、水飲み場が見えた。
ナリル
「ここで休みましょう。」
上級者B
「ナリルさん、この水は飲んでも大丈夫ですか?」
ナリル
「問題ありません。
のどが
上級者A
「それなら、あなたが先に飲んでくれませんか?」
ナリル
「わたしは、飲まなくても大丈夫です。」
上級者Aは、ナリルをにらみつけていた。
上級者B
「まあまあ、のどが
上級者Bは水を飲んだ。
上級者A
「どうだ。大丈夫か。」
上級者B
「そうね。
うん?
ちょっと待って、おなかが痛い。
トイレー。」
上級者Bはトイレに駆け込んだ。
上級者B
「ぎゃあー。」
上級者A
「どうしたんだ。 あけるぞ。」
ドアを開けると誰もいない。
ただし、カベ全部が赤い
上級者A
「そ、そんな。」
ナリル
「またしても、新種のワナなのか?」
上級者A
「ふざけるな、なにがプロのワナ解除師だ。
ことごとくワナに掛かっているじゃないか?
仲間の命を返せ!」
ナリル
「なにを言っているのだ?
わたしは約束通り、上級ダンジョンに同行しているではないか?」
上級者A
「はなしにならないな。
もう、あなたのことは信用しない。」
上級者Aは、剣を抜いて、ワナ解除師 ナリルに向けた。
上級者A
「あなたに前を歩いてもらう。
そして、あなた自身でワナの可能性があるものを体験してもらおう。」
ナリル
「それならば、わたしのあとをついてくるがいい。」
それから、しばらくして、上級者Aの声が上級ダンジョンに響いた。
上級者A
「うわあー。」
ナリルが振り向くと、上級者Aがいた場所に大きく深い落とし穴があった。
上級者Aは、その穴から落ちたのだろう。
ワナ解除師 ナリル
「なんと、上級ダンジョンとは、こんなに恐ろしい場所であったか。
ついつい知ったかぶりをしてしまったが、これで
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