23 立っているだけのミエルは役立たずだ
翌朝、気を取り直して、ギルドの掲示板に行った。
昨日は、面倒くさいワナ解除師の・・・なんて名前だったかな。
不愉快な想いをしたから、記憶が強制削除されたようだ。
おかげで、仕事をお休みすることになってしまった。
有給休暇なんてない冒険者は働かなかった分は、いいや、依頼を達成できなかったら、お金を1バーシルだってもらえない。
ミエル
「みやび、良い依頼じゃなくても、悪い依頼でなければ、つまり、普通くらいの依頼があれば受けることにしよう。」
みやび
「わかったさ。」
◇
ギルドのテーブルでは、昨日のワナ解除師ナリルが冒険者相手に演説をしていた。
ナリル
「いいか、ワナ解除師という仕事は、冒険者の安全を守ることなんだ。
ワナのこわさを冒険者に教えるとともに、ワナを解除して仲間の冒険者を守るべきなんだ。
どこかのミなんとかみたいに、ぼーっと立っているヤツに仕事を依頼したら、バカを見るぞ。」
冒険者A
「おおー、ナリルさんの言う通りだ。」
冒険者B
「オレも聞いたことがある、どこかのパーティにいたミなんとかは、勇者パーティに解雇されたんだろう。」
冒険者C
「ああ、クビだろ。 クビ。 冒険者パーティは行方不明という話だが、ミなんとかという役立たずと別れたから、遠くの町までたどり着いたんだろうよ。」
◇
みやび
「あんまりさ。
ミエル、わたしが行って黙らせて来るさ。」
ミエル
「いいよ、みやび、時間の無駄だからさ。」
みやび
「でも、ミエルのメンツが丸つぶれさ。」
ミエル
「みやび、残念だけどね、ヒマな人とケンカしても勝てないよ。
それよりも、さっさと今日の目標金額を稼いで、みやびとイチャイチャ愛し合いたいな。」
みやび
「そうなのさ?
ミエルが良いなら、いいさ。」
ミエル
「ボクをいじめたひとのひとりが、1つだけ正しいことを言っていた。
「そんな悪口を気にする時間が有るのなら、ボクは前に進む。」
だからね、みやび、ボクはキミと前に進みたいんだ。」
みやび
「わかったさ。
じゃあ、わたしの手をニギってくれさ。
あとひとこと言われたら、飛びかかってしまいそうさ。」
ボクは左手をみやびに差し出した。
ボクは左手で、みやびの右手をニギりながら、ギルドの受付で仕事を受ける手続きをした。
受付嬢
「はい、クエストを受注できました。
それで、あのミエルさん、あの、その。」
ミエル
「ああ、あれですか?
わたしがギルドを出たら、静かにすると思います。」
受付嬢
「言い返さないんですか?」
ミエル
「一度しかない人生の貴重な時間を無駄にしたくないから、言い返しません。
では、また。」
ボクはみやびの右手を握りながら、ギルドを出ようとした。
ワナ解除師ナリル
「うわさをすれば、役立たずのミなんとかにそっくりなヤツらがギルドにいるぞ。」
みやび
「なん・・・」
ボクはみやびにキスをして、そのくちを閉じさせた。
ミエル
「みやび、はやく宿屋で帰って、仲良くしようよ。」
みやび
「もう、ミエルはエッチさ。」
ボクたちがギルドを出た後も、ナリルはボクのことをバカにし続けていた。
◇
みやび
「くやしいさ。」
ミエル
「みやび、ボクはね。 自分の安全を優先することにしたのさ。
そして、自分の中には、もちろん【みやび】が入っているよ。」
みやび
「あー、もう、わかったさ。
さっさと依頼を片づけようさ。」
ミエル
「みやび、ひとつだけ言っておくよ。」
みやび
「なにさ。」
ミエル
「みやびに、ひどいことを言われたら、ボクは泣くからね。
そうなったら、ボクをなだめることは大変だよ。」
みやび
「わたしは言わないさ。」
ミエル
「ありがとう。 みやび。」
ボクたちは、さっさとギルドの依頼を済ませて、デートを楽しんだのだった。
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