07 ミエルのことを信じていたら

 上級ダンジョンの裏ボスは、カンゼンたち元パーティに、あきれかえっていた。


ボス

「これで分かったか?」


勇者ゆうしゃ カンゼン

「くそ、どうなってんだ。」


僧侶そうりょ ジュエル

「ねえ、だれか着るものを持っていないの?」


 若返り・不老不死・美容効果の指輪が光輝ひかりかがやいていた・・・


魔法使まほうつかい ペアレン

「ワシのつえがないぞ。」


戦士せんし ハイパー

「オレもぱだかだ。 武器と防具は、どこにいったんだ?」


裏ボス

「おまえたちが自分で捨ててきたのではないか?

 わすれたのか?」


カンゼン

「武器や防具を捨てるわけがなかろう。」


裏ボス

「いいや、捨てたよ。

 さらに良い武器が手に入ったとか言ってな。」


ジュエル

「まさか、わたしたちは?」


裏ボス

「そうだ。

 すべては妄想もうそう、おまえたちはゆめを見ていたのだ。」


ペアレン

「そんなはずはない、ワシは大魔法使いだぞ。」


裏ボス

「はあ?

 魔法を使っていたのは、ミエルだけだ。

 おまえは、ミエルに気をつかわれていたにすぎん。


 ただの人形にんぎょうのほうが、まだマシだぞ。

 おんをあだで返したりしないからなあ。」


ハイパー

「くそ、ひきょうだぞ。

 幻覚げんかくや、まぼろしを使うなんて。」


裏ボス

「ミエルに守られなかったら、ザコだったな。

 まあいい、武器があれば、か?


 なら、取り寄せてやろう。

 うしろを見るがいい。


 さっさと装備そうびしろ。」


カンゼン、ジュエル、ペアレン、ハイパー

「「「「後悔こうかいさせてやる。」」」」


 武器と防具を装備して、裏ボスに元パーティは、おそかった。


 しかし、・・・


裏ボス

「武具の手入れも出来ないとはな。

 すくいようがないバカどもだ。」


 裏ボスは、短い剣を手にもって、武具の小さなヒビをねらった。

 すると、武器がられた。


 魔法のつえは魔法を打ったらえだに変わった。


裏ボス

「もう、あきらめろ。

 なにも見えていないバカに最後の役目をあたえてやろう。


 ただし、かなり残酷ざんこく経験けいけんをすることになるがな。」


 裏ボスは、くだった武器と防具を見て、思い出したことがあった。


裏ボス

「おっと、やつらの武器と防具は、ダンジョンにいておかねばな。

 ついでに、武器や防具は、元通もとどおりになおしておこう。


 人間どもは行方不明は探さないが、なにも残っていないと必死に痕跡こんせきを探そうとするからな。

 人間とは本当に理解できない考え方をするものだな。」



 ここからは、残酷ざんこくな場面になります。


ジュエル

「ここは、どこ?

 たすかったの?


 おひとよしのミエルが助けてくれたのね。

 ありがとう。


 ミエルのことを信じていれば、良かったよね。

 ごめんなさい。」


裏ボス

現実逃避げんじつとうひはやめるんだ。」


ジュエル

「ひい、たすけて、いのちだけは。」


裏ボス

「ああ、命だけは取らないから、安心しろ。

 もっとも、死んだ方がマシと思うだろうがな。」


ジュエル

「それは、どういう意味ですか?」


裏ボス

「よく見るがいい、おまえたちの仲間の姿をな。」


 そこには、カンゼン、ペアレン、ハイパーが横たわっていた。

 しかし、あるべきはずのものがなかった。


 カンゼン、ペアレン、ハイパーの両目と両腕、両足がなかった・・・


ジュエル

「ひ、ひどい。」


裏ボス

「自分たちがしてきたことを、たなに上げて良く言えたものだな。

 これが、ダブルスタンダードとか、

 「それはそれ、これはこれ」理論りろんか?」


ジュエル

「どうして、こんなことを?」


裏ボス

「おまえたちも、やっていることだろう。

 魚をって食べたり、

 うしぶたにわとりなどの家畜かちくを育てて食べるだろう。

 わたしから見れば、おまえたちも家畜かちくわらん。」


ジュエル

「みんな、起きて。

 手足が無くても、魔法で戦えるでしょ!」


裏ボス

「無茶を言ってやるな。

 やつらはな、おまえをすくいたいと言って、代わりに手足をワシにわれていったのだ。


 そして、最期さいごは、気がくるって死んでいった。

 だが、安心しろ。


 ジュエル、お前は手足を喰った後も生かしてやる。

 ただし、右手だけは残してやろう。

 【若返り・不老不死・美容効果の指輪】をはめる指をのこすためにな。


 ああ、それから、やつらの身体は生きている。」


ジュエル

「まさか?」


裏ボス

「今度は、おまえが生む子供を食わせてくれ。

 100人も産めば、死なせてやる。

 ここにあるカウンターで数えてやる。


 そして、おまえの負担が減るように、おまえが生む子供同士も交配こうはいさせてやる。


 3人のオスと1人のメスで工夫すれば、近親相姦きんしんそうかんによる病気もふせげるだろう。」



裏ボス

「おめでとう。

 100人も、よく生んでくれた。

 では、カウントを進めよう。


 おや、どうしたことだ。

 2ケタしか用意していなかったから、100にならないな。

 ゼロから、やりなおしだな。」


ジュエル

「・・・」


裏ボス

「おや、精神が死んでしまったか?

 我が魔力で治してやろう。」


ジュエル

「い、いやあ、もう、ゆるしてください。

 お、お願いします。」


裏ボス

「今度は、3けた表示できるようにしてやったから安心しろ。」


ジュエル

「い、いやあ。」


裏ボス

「ジュエルの娘たちと合わせて、1000人を生んでくれたら、死なせてやろう。」


ジュエル

「3ケタ表示では、1000を表示できませんよね。」


裏ボス

「おお、よく気付いたな。

 それでは、1人おまけして、999人を生んで食わせてくれ!」


ジュエル

「・・・」


 裏ボスによる責め苦は、300年間続いたのだった。



未来知見みらいちけんの女神 ミサキ

「裏ボスがいる空間の存在は、神々を創造されたシクペリア様でも気づかないでしょう。

 まあ、運よく気付かれて、特別な恩赦おんしゃで生まれ変わりをゆるされたとしても、動物プランクプトンという微生物びせいぶつからスタートでしょうね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る