06 進まなければ良かった

 元パーティがボスをたおす決心をしてから、3日がぎていた。

 複雑ふくざつ迷路めいろで、なんども同じところにもどされていた。


勇者ゆうしゃ カンゼン

「くそ、どうなってんだ。」


僧侶そうりょ ジュエル

「ねえ、だれか食べるものを持っていないの。」


魔法使まほうつかい ペアレン

「ワシはもうないぞ。」


戦士せんし ハイパー

「オレもだ。いままで楽勝だったから、1日分しか持ってこなかった。」


カンゼン

「最悪の場合、モンスターを食べれば良いと思ったが、出てこない。」


ジュエル

「草のでも生えていたら、回復魔法で増やすのに、それさえない。」


ペアレン

「魔法が使えたら、水を出せるのにのお。」


ハイパー

雨漏あまもりを集めるしかないとは、きついな。」


 元パーティは、つかっていた。


カンゼン

「おい、ミエルさん、なにか出してくださいよ。」


ジュエル

「なに言ってんの。 カンゼンが追い出したんでしょ。」


カンゼン

「ペアレンさんが、ミエルに文句を言い過ぎたからじゃないか?」


ペアレン

「ワシの精霊語が正しいことは、カンゼンも賛成さんせいしていたじゃろうが。」


カンゼン

「ハイパーさんが、ミエルの味方をしないから悪いんだ。」


ハイパー

「はあ、カンゼンに指示された通りにしていただろう。」


 進まなければ良かったと後悔している、元パーティが内輪うちわもめをしていた。



上級ダンジョンのうらボス

「そろそろ良さそうだな。

 こちらへ来てもらうとしよう。」


 裏ボスは、ボスの部屋のかりを付けた。



カンゼン

「みんな、見ろ!

 ひかりだ。

 あれがきっと、ボスの部屋だ。」


ジュエル

「ボスを倒せば帰れるのね。」


ペアレン

「魔法は使えないが、この魔力変換まりょくへんかんのつえがあれば、ワシも戦えるぞい。」


ハイパー

「この光輝く武器と防具の威力をボスに見せつけてやるぜ。」


 元パーティは、元気を取り戻して、ボスの部屋に向かった。


 ただし、彼らは知らなかった。

 ボスではなく、うらボスだということに。

 そして、ボスのように勝てないことも知らなかった。


上級ダンジョンのうらボス

「よくぞ来た。

 勇者パーティよ。

 わたしが、この階層のボスだ。」


カンゼン

「勇者の名において、あなたを倒す。」


ジュエル

「あなたを倒して、お風呂に入るわ。」


ペアレン

「精霊語のプロであるワシの魔法力を思い知れ。」


ハイパー

「このきたえられた身体が使う武器と防具に、ふるえるがいい。」


上級ダンジョンのうらボス

「おまえたちなど、わたしのてきではないわ。」


カンゼン

「みんな、行くぞー」


ジュエル、ペアレン、ハイパー

「「「おおー」」」


 ボスとのたたかいが始まってから、1時間がすぎようとしていた。


カンゼン

「あなたのように強いボスははじめてだ。」


ボス

「それは、どうも。」


カンゼン

「相談があるのだが、いいか?」


ボス

「相談とは?」


カンゼン

「オレたちと、ここまで戦えるボスを一度の戦いで倒すのはしい。

 もったいない。

 だから、オレたちを後ろの魔法陣で帰らせてくれないか?

 おたがいに、いのちが助かるぞ。」


ボス

「なにを、バカなことを言っている。

 まさか、わたしとのたたかいが互角ごかくだと思っているのか?」


ジュエル

「互角じゃない。」


ペアレン

「むしろ、ワシたちが有利ゆうりじゃ!」


ハイパー

「戦士には、MPマジックポイント切れは、ないからな。」


ボス

「まさか、気付いておらんのか?

 仕方ないなあ、特別サービスだぞ。

 ムン。」


カンゼン、ジュエル、ペアレン、ハイパー

「「「「ああ、こんなことって。」」」」


 若返り・不老不死・美容効果の指輪が光輝ひかりかがやいていた・・・


ボス

「前回は、苦労人 ミエルがいたから、おまえたちを呼び寄せることができなかった。

 しかし、ミエルのおかげで、命びろいしたことに気付けなかったのか?」

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