05 ごきげんの元パーティ

 ミエルが元いたパーティは、上級ダンジョンの深い階層にいた。


勇者ゆうしゃ カンゼン

「みんな、見てくれ。

 前回、ミエルのバカがころんでワナにひっかかって、こわしてしまった道が復活しているぞ。」


僧侶そうりょ ジュエル

「ミエルがいないと絶好調ぜっこうちょうね。

 若返り・不老不死・美容効果の指輪も手に入ったし、ごきげんよ。」


魔法使いまほうつかい ペアレン

「強力な魔法のつえも手に入ったからのお。

 ワシの魔法の攻撃力も大きくあがったぞい。」


戦士せんし ハイパー

「強力なつるぎたて防具ぼうぐも手に入ったから楽勝だな。」


勇者 カンゼン

「ミエルがいたら、あの宝箱はワナだから開けるな! って、うるさかったからな。」


僧侶 ジュエル

「そうよねえ、本当に、役立たずどころかジャマだったわねえ。」


魔法使い ペアレン

「ワシの魔法がつよくなることがイヤだったのだろうなあ。」


戦士 ハイパー

「ミエルをかばったオレは、まちがっていたな。」


勇者 カンゼン

「ハイパーさんが、ほんとうはオレの味方だったって知ったら、どんな顔して泣くでしょうねえ。」


カンゼン、ジュエル、ペアレン、ハイパー

「「「「はっはっはー」」」」


 元パーティは、ミエルの悪口でりあがっていた。


カンゼン

「それでは、あたらしい階層に進もう!」


ジュエル、ペアレン、ハイパー

「「「おおー!」」」


 元パーティが50メートルくらい進むと、ミエルが引っ掛かったワナが自動的に作動して、道が消えてしまった。


カンゼン

「モンスターが出てこないな。」


ジュエル

「ヒミツの道なのでしょうね。」


ペアレン

「ボスへの道かもしれんの。」


ハイパー

「オレに、まかせとけ。

 これだけの装備そうびがあれば、けないぜ。」


 ようやく、モンスターがあらわれた。

 森の大きな木のようなモンスターだった。


ペアレン

紅蓮ぐれん威力いりょくを思い知るが良い。


 うん、いつもより、魔法まほう発動はつどうするのがおそいな。」


精霊A

『なにを言っているの、このじいさん。』


精霊B

『ミエルに聞けばいいよ。』


精霊C

『ミエルがいないのよ。』


精霊D

『木のモンスターだから、火がほしいんじゃないかなあ。』


精霊E

『このじいさん、バカじゃない。』


 じつは・・・

 元パーティには精霊たちの声は聞こえていない。


 魔法使い ペアレンは、自分のことを大魔法使いと名乗って、ミエルの精霊語に文句もんくを言っていた。 それなのに、精霊たちの声が聞こえていなかったのだ。


ペアレン

「カンゼンよ。

 ボスに近いからかもしれんが、魔法が弱められているようじゃ。」


カンゼン

「じゃあ、もと来た道を戻りましょう。」


 しかし、道は、くずれてなかった。

 はるか、100メートル先に、ダンジョンの光が見えた。


ジュエル

「どこのバカがわなに引っ掛かったのかしら。」


ハイパー

「こうなったら、ボスをたおそうぜ。

 そうすれば、外にワープできるはずさ。」


カンゼン

「そうするしかないな。

 みんな、進もう。」


 若返り・不老不死・美容効果の指輪が光輝ひかりかがやいていた・・・


精霊A

『わたしたちは、どうする。』


精霊B

『ミエルに聞けばいいよ。』


精霊C

『ミエルがいないのよ。』


精霊D

『じゃあ帰ろうよ。なんだか寒気さむけがするよ。』


精霊E

『こんなバカたちに、つきあっていられないよ。』


 元パーティが気付いていないことに、精霊たちは気付いていたのだった。

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