【短編】交番勤務の警察巡査がヤバすぎる件

MrR

交番勤務

 Side 平和田 ようじ


 =お昼・某市・警察署、署長室=


「あの――やっぱりまずかったですか?」


 平和田 ようじ。

 しがない交番巡査の青年。

 彼は管轄の警察署の署長室に呼ばれ、年配の警察署長直々に説教を受けていた。

 

「まずいに決まってるだろ!? この大馬鹿もんが!? 私をストレスで殺す気か!?」 


「そんなつもりは――」


「分かっている! お前は悪くない! ただ警察官としての職務を立派に勤めあげているだけだからな!」


「じゃあ―」


 なにがもんだいですか? と言わなかったのは不幸中の幸いだったかもしれない。


「なにがじゃあだ!? お前が警察官になってからと言う日、馬鹿みたいに銃撃戦やら爆発やら!! お前は毎回何かを爆破しないと気が済まないのか!?」


「いや、それは不可抗力と言うもので――」


「不可抗力で爆破を何度も起こされてたまるか!? いいか!? 日本の警察官はアクション映画のような銃撃戦をやったり、ましてやカーチェイスや爆発炎上なんかとは本来縁なく終わるのが当たり前なんだ!?」


「そ、そうなんですか」


「そうなんですかじゃない!? お前もう自分が発砲した弾の数もわからんだろう!? オマケに毎度毎度、死体だらけときた!!」


「そう言われましても――」


「いいか!? もう間違っても出世は無いものと思え!! 交番や警察署を爆破してみろ!? クビを叩き付ける代わりにお前の頭に弾丸打ち込むぞ!?」


「拳銃取り出して睨まれても!?」


 警察署著の目がマジだった。

 最後は「出てけ!! この疫病神が!!」と言われて退室した。

 


 =昼・町内=


 自転車でパトロールと言う名の逃亡を始めた。

 とにかくマスコミを振り切るように自転車を動かす。

 こってり絞られた。

  

(まあ署長の気持ちも分かるんだよな。正直、どうしてクビになってないかおかしいぐらいだし)


 普通の警察官は一生銃撃戦とは縁が無いのが普通である。

 それどころか日本の警察の拳銃は自殺のために持たされているなんて揶揄されているぐらいに発砲する機会なんてまずない。

 

 だが自分は運が悪いのか、警察官になってから銃撃戦が多い。

 爆発炎上もあって、最終的には死体だらけになる。

 交番でも警察署でも同僚や上司から疫病神扱いだが、逆の立場なら自分も同じ気持ちになるだろうなと、ようじは思った。

 

 ちなみにコンビの同僚やお目付け役の上司は銃撃戦に巻き込まれて病院送りになった。

 見舞いは必死の形相で断れた。

 曰く、お前が病院に来ると病院が戦場になる、だそうだ。

 

 こうまで邪険に扱われると落ち込んでしまう。


『付近にいる警察官は至急現場に急行されたし!! 場所は港の――麻薬取引現場で激しい銃撃戦が――』


 はぁとため息をついた。

 この町治安悪くないかと思いながらチャリを走らせる。


☆ 


 =昼・麻薬取引現場の港=


 大捕り物だった。

 現地の半グレ組織と海外組織の麻薬取引。

 そこを抑える手筈だった。


 事が事なため、現地の警察署の出番ではなく、ICPOや日本警察の特殊部隊をはじめとして腕利きの戦力が総動員された。


 誤算だったのは犯人側の火力が想像以上に重武装だった。

 お前ら麻薬の取引じゃなくて戦争しに来たのかよってレベルで。

 上空では軍用の戦闘ヘリが飛び回り、地上では防弾チョッキに身を包んだ特殊部隊よりも特殊部隊らしい完全装備のアサルトライフルにグレネードランチャー、ロケットランチャーは当たり前の重武装で身を固めている。

 なんなら装甲車まで配備していた。

 

 ICPOはもとより警察の特殊部隊や警官は壊滅状態だった。

 と言うかまだ生存者がいるのが不思議なぐらいだ。

 

『このままでは壊滅するぞ!?』


『なんでこんなに重武装なんだ!?』


 逃げ惑う警察官たち。

 ある者は銃弾に倒れ。

 ある者は火炎放射器で焼かれ。

 ある者はバラバラになって肉片になる。


 不意に麻薬組織が所持している戦闘ヘリがタンカーに墜落。

 爆発炎上する。

 平和田 ようじがドサクサに紛れてピックアップトラックの荷台に備え付けられていた12・7mmの台座から奪い取り、薙ぎ払うようにテロリストの人体の一部を消し飛ばしていく。


「あぶね!?」 


 反撃にグレネードランチャーやロケットランチャーが飛んできてピックアップトラックから飛び降りる。

 

『あの野郎をぶち殺せ!!』


 最小火力でアサルトライフル。

 最大火力がロケットランチャーの敵兵が向かってくる。

 さらには装甲車まで出張る。 

 

「俺の返事はこれだクソッたれ!!」


 そう言ってようじは装甲車にロケットランチャーをぶっ放す。

 RPGー7と呼ばれる使い捨て式の奴だ。 

 装甲車に着弾して爆発する。

 そこからさらにリボルバー式グレネードランチャーを乱射し、テロリスト達を一網打尽にしていく。

 

 爆発が起きるたびに死体が作り出される。


 とんでもなく派手で。

 そして日本警察やICPOにとっては悪夢のような光景だった。

 作戦は大失敗。

 敵味方共に死体だらけの爆発炎上騒ぎ。

 本来はもっとこう、犠牲者もなくスマートに行きたかった。 


 マスコミはそんな事よりも後先構わず生放送でこの地獄絵図をお茶の間にお届けする。


 そしてようじ管轄の警察署の署長は白目を向いて倒れた。


 結局麻薬組織側は数名しか生き残らず、警察官やICPO側も大量の犠牲者を出して事件は幕を閉じた。



 =数日後・お昼・某市警察署、署長室=


 後日――


 ブラック企業のような始末書の嵐をようやく終えたようじは例によって警察署の署長に呼び出され、署長はとんでもなく苦虫を嚙み潰した表情をして説教がはじまった。


「理由が理由だし、味方にも大勢殉職者が出て、あの程度で済んだのも君の手柄なワケだ。今回は不問だ――」


「は、はあ」


 との事だった。


「もう、本当に!? 本当にラストなんだろうな!? これでもう銃撃戦も爆発も死体の山も終わりなんだろうな!? 私は何度頭を下げればいいんだ!?」


「お、落ち着いて――」


「お前が警察官になってから何で私がこんな目に遭わなければならないんだ……クソ!! こんなだと分かっているのなら!! こんな思いをするぐらいなら!! 警察官にならなきゃ良かった!!」


「は、はあ――」


「なにが、はあ? だ!? な・に・が!? ともかく二度とこんな真似はするんじゃねえぞ若造がぁ!? もしまたやってみろ!? 二度と泣いたり笑ったりできなくしてやるからな!?」


「署長! 地が出てます地が!? あと拳銃向けないでください!?」


 そうして説教から逃げるように退散したようじだった。

 まあ後日、またようじは銃撃戦を引き起こすのだが――


「あのバカは!? あのバカはどこにいる!?」


 END

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