第32話夏子の復讐①

夏子の復讐相手、「東都銀行行員の望月」は、清水亜里沙の探索により、密議のあった二日後に、配属支店が判明した。


清水亜里沙

「名前は望月昇、今は蒲田支店で融資営業をしているよ」


夏子は清水亜里沙に深く頭を下げた。

「本当にありがとう」

清水亜里沙は、夏子の肩を抱いた。

「何言ってるの、これからでしょ!」


由紀が麻友の顏を見た。

「早速、実態調査しよう」

麻友は頷いた。

「尾行からだね」


清水亜里沙は、三人の少女に助言。

「まず夏子ちゃんは、顏を知られている可能性があるから、後方支援」

「由紀お嬢様と、麻友ちゃんが尾行してみて」

「それから、蒲田支店の融資営業だから、商店街とか町工場が融資対象のはず」


夏子が、吐き捨てた。

「ハゲ、デブ、チビで弁だけは立つ、酷い嘘つき」

「スケベで、口が臭い」

「あいつも結婚指輪をはめていた」

「母さんに無理やり不倫をしかけた」

「さんざん母さんを弄んでから、融資を切ろうとして来た」

「その融資切りと、母さんとの不倫発覚が、ほぼ同時」

「怒った親父が、銀行に乗り込んだけど、知らんぷりを決め込まれて」

「笑顔で融資を切られて」


夏子の声が震えた。

「親父は・・・それで自殺、母さんも後を追って・・・」

「工場も家も取られて追い出されて・・・」


黙っていた芳樹が口を開いた。

「悪鬼畜生だな」

「同じようなことをしているかもしれん」

「徹底的に調べて・・・苛めよう」

「苛めるだけでは足りんか」

「この世に棲ませる価値はない」

「でも、ただ普通には死なせない」

「夏子の気が済むようにしないと」


清水亜里沙が、芳樹の顏を見た。

「その望月昇の営業先に、MBS銀行の営業を仕向けるよ」

「望月昇が何か不正していれば、調べさせる」


芳樹は、やや不安な顔。

「不正融資・・・とか?」

「俺には、よくわからん、そういうの」


清水亜里沙

「いろんな手口があるけれど」

「要するに、返せないとわかっていながら、無理やり貸し付ける」

「夏子ちゃんの事例に近いかな」

「それで搾り取るだけ搾り取って、融資切り・・・土地建物を没収」


「それとかウソの融資予約を出す」

「騙された融資先は、余計に注文した原材料費の支払いが出来なくなる」

「銀行に抗議しても、そもそもウソなので、取り合わない」

「やむなく廃業に追い込まれ、銀行の息がかかった不動産屋が、安く買い叩く」


「いろいろあるよ、他にも」

「偽契約書とか、偽領収書を使う銀行員もいたな」

「利息を集金しながら、偽の領収書を使って、着服とか」

「融資先が、正規に利息を支払っても延滞扱いにされる」

「銀行に文句を言っても、警察に言っても、騙された方が悪い扱い」

「集金した銀行員も知らんぷりを決め込み、それが通ってしまう」

「そういうのが、実際にあるの」


清水亜里沙の銀行員不正講義は、深夜まで続いた。

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