第33話夏子の復讐②

標的の東都銀行員望月昇の尾行と調査が始まった。

由紀と麻友が蒲田支店通用口付近で「張っている」と、午前9時に望月昇が、くたびれた黒い鞄を持ち、煙草を吸いながら出て来た。


由紀は、その姿を見るなり、吐きそうになった。

「中年でデブ、ハゲ、チビ、しかもブ男、およそ男としての魅力はないね」

麻友は、由紀をいさめた。

「いや・・・でも、あれで神経は細かそう」

「いつもコケにされているタイプみたいだけど、キレると何をするかわからない」

「陰険で・・・悪知恵に長けたヤツだ」


蒲田支店を出た望月昇が最初に入ったのは、銀行至近の喫茶店。

のん気に「モーニングセット」を注文、スポーツ新聞を読んでいる。


麻友

「早速サボリかよ、給料泥棒だね」

由紀

「競馬新聞も読み始めた」

麻友

「それにしても食べ方汚いなあ」

「グチャグチャと噛んで、気持ち悪い」

由紀

「うん、珈琲をスーツにこぼしているけど、拭きもしない」


望月昇は、一時間ほどサボり、喫茶店を出た。


麻友

「あいつ、金払わなかった、ツケかな」

由紀

「店主がペコペコしているから融資先だよ」

「そもそも払う気がない感じ」


望月昇は、商店街を少し歩き、パチンコ屋に入った。


由紀

「今度も融資先かな」

麻友

「おそらくね・・・店主らしき男と話し込んでいる」

「でも台にはつかない」

「ん?現金受け取った・・・そのまま鞄にしまった」

「領収書は?」


望月昇はパチンコ屋を出て、再び商店街を歩き、和菓子店に入った。


由紀

「今度は・・・和菓子をパクるのかな」

麻友

「店主が青い顔」

「望月昇にペコペコしている」

由紀

「望月昇は、首を横に振っているよ」

由紀

「奥さんかな・・・土下座しているし」

「望月昇は、起こそうともしない」

麻友

「何か嫌な予感するよ」


由紀と麻友が心配そうに和菓子店を見張っていると、金髪で派手な服を着たヤンキー三人が、和菓子店に入った。


すぐにガラスの割れる音が聞こえて来た。

由紀

「あのヤンキー!ショーケースをバールで叩き割った」

「うわ!店主も殴られたのかな、頭から血を出してるし」

「奥様の服がビリビリに!」

麻友

「望月昇は、のん気に饅頭食っているぜ」

「これは・・・計画的だね」


由紀は警察に通報を行っている。

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