第30話東都物産社長と東都銀行頭取 そして陽平 日本橋料亭①
SNSの炎上、松戸支店の不倫行員二人の処分にも関わらず、東都銀行頭取根岸久雄(東都物産根岸専務の兄)は、事態を全く把握していなかった。
(本店の危機管理対策室は、「軽度」の事態と判断し、経営層に報告をしなかった)
その日の夜(不倫行員二人の処分当日)の、東都物産社長と東都銀行頭取の情報交換の場でも、全く話題にものぼらなかった。
場所は、明治維新期から東都財閥に縁が深い、日本橋の老舗料亭。
東都物産社長佐々木健治付きの秘書として、福田陽平も同席している。
東都物産社長佐々木健治は、東都銀行頭取根岸久雄に酒を注いだ。
「築地の跡地施設だが、物価上昇を見込むと、建設費が更にかさむぞ」
頭取根岸久雄も物産社長佐々木健治に酒を注いだ。
「テナント料で調整をかけましょう」
「円安なので、外資系は全く問題にしません」
物産社長佐々木健治は頷いた。
「インバウンドは増えるばかり」
「東都ホテルも、高い部屋から埋まっていくらしい」
「外相と経産相からも期待されている」
「国際会議場も欲しいとね」
頭取根岸久雄は陽平の顏を見た。
「株主総会で公表する?」
「事務局として資料には入れる?」
陽平は、慎重な態度。
「もう少し建物の形が明確になってからでも」
「開業まで、3年はかかります」
「公表すればマスコミの取材も増えます」
「事前公開情報が多くなれば、テロのリスクも高まりますので」
社長佐々木健治は苦笑い。
「物産の役員室でも、コンコンと説教されたよ」
「目先の株主総会対策より、まずはリスク回避対策と」
「被害が起きても、最小限に留める施策を考えるべきと」
銀行頭取根岸久雄は目を細めて、陽平を見た。
「慎重な発想は、お父さんより、おじい様似かな」
陽平は、首を横に振った。
「インバウンドで来日客が増えるのは、メリットだけではありません」
「いい意味でも悪い意味でも日本の情報が、海外に広まる」
「外相も心配していました」
「どれほどスパイが入り込んでいるのか、不安で仕方ないと」
物産社長佐々木健治は、酒を煽った。
「日本でも、変な奴らが動いているらしいから」
銀行頭取根岸久雄は頷いた。
「旧国鉄系の・・・K党の田村都議のグループですか?」
「公安もマークを続けていますが」
物産社長佐々木健治は、機嫌が悪くなった。
「あいつらは、何でもかんでも反対」
「環境保護とかを名目に反対する」
「でも、その実態は、裏金欲しさ」
銀行頭取根岸久雄
「ヤクザよりタチが悪い」
「国会でも、それを狙って追及して、裏金をつり上げる」
陽平は、プッと笑った。
「じいさんに聞きました」
「日米安保、新幹線創業、東名高速道路、成田空港、第二東名、東京ディズニーリゾート・・・」
「全て裏金欲しさに反対」
「奴らは理念ではなくて、金で動く」
「国会議決では反対しながら、新幹線に乗り、東名を走り、成田で飛行機に乗り、東京ディズニーリゾートで遊ぶ」
「本気で反対するなら、意地でも使わないだろうとね」
陽平はそこまで言って、話を止め、スマホを見た。
「真鈴さんからです」
物産社長佐々木健治と、頭取根岸久雄は、陽平の顏を面白そうに見ている。
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