第28話密議①
清水亜里沙は、由紀の父親(極道組長)の子分であり、組の会計。
一見して、とても極道とは思えない知的な美女である。
(芳樹は、君澤浩二より、清水亜里沙に目を奪われていた)
清水亜里沙も芳樹の手を、柔らかく握った。
「あなたが芳樹君ね、神宮で投げている姿を見たことがあります」
芳樹は、顏と下半身の「火照り」を感じながら、清水亜里沙の手を握り返した。
(清水亜里沙のすべすべとした、ひんやりとした手の感触に、火照りは強まった)
「ありがとうございます」
清水亜里沙は、具体的に話を始めた。
「まず、夏子ちゃんの家をつぶした、望月って行員探しね」
「組と東都銀行の付き合いもあるから、わかると思うよ」
「組は、本来は反社会的勢力だから、取引は出来ない」
「でも、そんなの銀行も組も、何も気にしていない」
「地上げから何から、東都銀行の裏の仕事も多いから」
「組が仕事を請け負わないと、東都銀行は危なくなる」
芳樹
「まずは夏子の復讐をします」
「望月の素行調査」
「家族がいれば家族にも、脅しをかける」
「奪えるものは何でも、喰らい尽くします」
君澤浩二が笑った。
「芳樹は、そのセンスがあるな」
「相手の弱点を突きまくる」
「さすが、六大学の死球王」
芳樹も笑った。
「同じコントロールミスでも満塁ホームランを打たれれば4点、ぶつければ1点」
「面倒な時は、ぶつけたほうが、ダメージは少ない」
清水亜里沙も笑った。
「東都物産もつぶしたいの?」
芳樹は、頷いた。
「当然、つぶします」
「ただ、一気にはつぶさない」
「少しずつ、苛めて」
「やがて・・・ドカンと」
君澤浩二が、真面目な顔に戻った。
「面白いが、リスクもあるよ」
「親父さんにも言っておく」
清水亜里沙は笑顔のまま。
「ドカンは面白い」
「私も、仲間にして」
「一度やって見たくてね」
芳樹は、清水亜里沙に含み笑い。
「下手人は・・・対立する組でしょ?」
君澤浩二は苦笑い。
「芳樹は、面白いなあ」
「俺も、やりたくなった」
少し離れて聞いていた夏子が、芳樹の横に座った。
「まずは、私のカタキでしょ?」
由紀は君澤浩二に念を押した。
「当分、芳樹と暮らす、親父にも言っておいて」
君澤浩二は、静かに頷いた。
「このアパートなら、襲われるリスクは低いでしょう」
麻友は、何か言いたいことがあるらしい。
じっと芳樹を見ている。
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