第11話

 次の日の放課後。俺は昨日、アリスの肩に寄りかかって寝てしまったのが気まずくて、アリスには話しかけられずにいた。


 ──アリスが席を立ち、廊下に向かって歩いて行くのが目に入る。アリスに聞きたい事は、とりあえず全て聞いた。でも……俺はアリスを追いかけていた。


 アリスに追いつき横に並ぶと、俺はまず様子を見るため黙って歩く──おかしいな、いつもならチラッとこちらの方に視線を向けるのに、今日はそれがない。アリスの方も照れているのだろうか?


「──なに? 何でついてくるの?」

「え……何でって……いつもの様に一緒に帰ろうぜ」

「──なんで? あなたには全て話をしたでしょ?」

「そりゃ……して貰ったけどよ……俺達はもう友達だろ? 一緒に帰ったって良いじゃん」


 俺がそう言うと、アリスは急に立ち止まる。俺も合わせて足を止め、アリスと向き合うように立った──怒ってるのか? アリスは何故か、眉を吊り上げ睨みつけるかのように俺を見ている。


「友達? はッ! なんでそんな事を平気で言えるの? 私とあなたがどんな関係にあるのか、話をしてあげたんだから分かるでしょ!? そんな二人が仲良くなんて出来る訳ないじゃない!! ちょっとは気持ちを察してよ、馬鹿ッ!!」


 アリスは思いをぶつけるかのようにそう言って、俺から離れる様に駆けていってしまった。アリスの目に薄っすら光る物が見えた気がしたけど、あれは……。


「──なにあの態度」


 俺の後ろから聞き覚えのある女子の声が聞こえ、俺は後ろを振り返る。そこにはアリスが走っていた方をキッと睨みつけている佐藤さんが立っていた。


「えっと……佐藤さん、もしかして今のやりとり聞いてた?」

「最後だけね」

「そう……いや、俺が深く考えてなかっただけで葵さんは悪くないんだ」

「だとしてもさぁ……他の人もいるかもしれない廊下で、あの態度は無いと思うな」

「あははは……」

「武君はさ、何で葵さんに構うの? 皆に態度が悪いって嫌わてるのに」

「え……それは──」

「まぁ、良いわ。武君、優しいもんね。どうせ可哀想とかそういう理由でしょ」


 最初の方はそれだっただけに、ハッキリとそうじゃ無いとは言いにくい。俺が黙っていると、先に佐藤さんが口を開く。


「ところで武君、今日ひま?」

「暇だけど、どうして?」

「あなたが興味を持ちそうな本があるの。家族は夜遅くにしか帰って来ないし、私の家に遊びに来ない?」

「佐藤さんの家に? いやぁ……それはちょっと……」

「いや?」

「嫌とかじゃないんだけど……俺達、まだそんなに仲良くないし、何て言うか……」

「ふーん……せっかく魔法の話をしてあげようと思ったのに、断ろうとするんだ」

「魔法の話!? 例えば!?」

「ふふふ、ほら食いついた! 続きは家でしてあげるから、早く行こ」

「あ……あぁ……」


 俺は本当にそれで良いのか? と、思いながらも意外にグイグイ来る佐藤さんに押されて、ついて行く。魔法の話って言っても、期待外れのものだろうけど……そこから帰るヒントが得られるかもしれないし……仕方ない、ちょこっと付き合うか。


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