第2話
「何の事だ? 魔法石って何だ?」
俺が嘘をつくと、少女は眉間にシワを寄せ、明らかに不機嫌な表情を浮かべる。
「嘘をついたって無駄よ。私は魔力透視だって使えるの。あなたなら、その意味が分かるわよね?」
分かる……父様が出来る事は全て修行で教わった。という事はアリスには俺の魔法の鞄に入っている魔法石の魔力が見えているって事だ。もう嘘をついても意味は無い。
「持っていたら、何だって言うんだ?」
「渡しなさい」
「何で?」
「危険だからよ! 分からないの!?」
「分かってるよ。分かっている上で俺は守り抜く!」
「はぁ……」
アリスは溜め息をつき、ヤレヤレと言わんばかりに項垂れながら首を横に振る。
「もう良いわ。話にならない!」
アリスがそう言った瞬間、魔力透視の力でアリスの腕に強力な魔力が集中し始めているのが分かる。ヤバい、何か来る!
「あなたを殺してでも、魔法石を奪って破壊するッ!!」とアリスは言って、両腕を俺の方へと突き出す。そして「全てを飲み込む程の激流で荒れ狂う水の精霊よ──」と詠唱を始めた。
アリスが左腕に付けている銀色のブレスレットには、四大精霊である火・水・土・風の精霊石が付いている。ハッタリなんかじゃない、いきなり精霊の力を借りた上級魔法を詠唱してやがるッ!!
「我が光の魔力により──」と、聞いた瞬間、俺は唱える魔法を決めた。
「心を静め、我に従う水龍となれ……ハイドロ・ドラゴン!!!!」
アリスが水面の様にひかり輝く龍の形をした魔法を放って来るが──俺は間一髪、瞬間移動の魔法でその場から逃げ去った。
※※※
「アリスの奴……最初から二属性魔法を使ってくるなんて、マジで俺を殺すつもりだったな……最初から切り札を見せたくなかったけど、瞬間移動の魔法を使わざるを得なかった。クソっ!」
俺は怒りが収まらなくて、近くにあった小石を思いっ切り蹴飛ばす。
「──でも仕方ない。俺は二属性魔法に耐え切れる聖なる肉体を持っていないし、あの場で直ぐに体を強化して、同じ二属性魔法を放てる程の実力はないんだから……」
俺はそう自分に言い聞かせ、心を落ち着かせる。
「──さて、咄嗟に思いつく場所と言ったらここしか無かったから、ファシナンテと戦った洞窟に来てしまったが……どうするか?」
俺は周りに敵の気配がないかグルっと見渡し確認しながら次の事を考える──。
「せっかくここまで来たから、隠されていた岩の扉の奥に行ってみるか……」
──俺は岩の扉を開き、錬金術師の女性が使っていたと思われる研究所へと進む。研究所に着くとほとんどのものは壊れているか、灰となっている光景が目に入った。
「あちゃー……こりゃ、無理かな……」
そう思いながらも俺は壊れたものを退かしながら、何か火種の一族と繋がるものがないか探し始める──だけど、予想通り読めないものしか見つからなかった。
「もう少しゆっくり見ていたいけど……俺が瞬間移動した場所は、ルーカスさんも知っている場所。子供であるアリスも知っている可能性が高いから早くここから出るか」
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