隣の席に座るスンッとした転校生の女の子は魔法がある世界で俺を殺そうとした女の子です
若葉結実(わかば ゆいみ)
第1話
「さぁー……て、まずは何処に行こうかな……」と、俺は大きく背伸びをしながら、ゆっくりと森を歩き続ける。
するとグゥー……と、お腹が鳴った。
「答えが出たようだな」
俺は空腹を満たすため、カントリーファームへと足を進めた──途中に馬車を見つけ、一緒に乗せてもらった事もあり、思ったより早く村に着く。俺は真っ先に食堂へと向かった──。
混む時間帯より少し早いからか食堂は空いていて、カウンター席の中央に少女が一人と、3組の家族連れが居るぐらいだった。
あの少女……俺はカウンター席に座る栗毛で髪の毛の短めな少女が気になったが、とりあえずカウンター席の一番奥へと座った。
あの少女……年齢は俺と同じぐらいか? キリッとしていてボーイッシュな雰囲気はあるものの、整った顔立ちをしていて可愛い女の子だけど……父様クラスの凄い魔力を感じる。腰にロングソード、防具は皮の胸当てを装備しているから、近接戦もいけるのか?
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「あ。えっと……Aセットでお願いします」
「かしこまりました」
女性の店員さんは返事をして、水の入ったコップを俺の前に置くと、厨房の方へと歩いて行った。
少女の事が気になり過ぎて、何を食べるか何て考えてなかったから焦ったぜ……俺はコップを手に取り、落ち着くために水を一口飲む。
チラッとまた少女に視線を向けると、少女は食べ終わった様で、席を立っていた。引き締まった体つきの割には、結構食べるんだな。まぁ……魔物と戦っているなら、あれぐらい食べてもおかしくないか。
「お待たせしました。Aセットになります」
「あ。ありがとうございます」
俺は店員さんから肉と野菜が乗った皿と、自分の前に置く。これこれ……さぁて食べようか。
「──ちょっといいかしら?」
俺が食事をしようと両手を合わせていると、横から女の子の声がする。俺は両手を合わせるのをやめ、声がした方へと体を向けた。
「なんでしょうか?」
声を掛けてきたのはさっきの少女で、何だか冷たい視線で俺を見つめていた。ジロジロ見ていたのが気になったのだろうか? そうだったら謝らなければ……。
「あなたと二人だけで話がしたいの。村の出口に居るから、食事が終わったら来てもらって良いかしら?」
「え? あ、はい……分かりました」
「じゃ、待ってるから」
少女はそれだけ言って、そそくさと店を出て行ってしまった。話したいこと? ここじゃ駄目なの? ジロジロ見ていた事なら、ここでも良いだろうし、いったい彼女は何を話したいのだろうか……?
※※※
相手を待たせている事と話の続きが気になり、落ち着かなかった俺は、食べ終わると直ぐに村の出口に向かった──腕を組みながら横を向いていた少女だったが、俺が近づいている事に気付いたのか、俺の方へと体を向ける。
「──ここじゃ迷惑が掛かるから、草原の方へ移動しましょう」と、少女は言って歩き始め、俺は付いて行きながら「迷惑が掛かる? どういうことですか?」
──俺が質問しても少女は無言で歩き続ける。まぁ……直ぐに分かりそうだし良いけど、なんか感じが悪いなぁ。
「この辺で良さそうね」
少女はそう言って、足を止めるとこちらに体を向ける。俺も少女と向き合うように足を止めた。
「それで話って何ですか?」
「私の名前はアリス。あなたの名前は?」
アリス!? 確かルーカスさんの子供もアリスだったよな!? え……じゃあ目の前に居るのはルーカスさんの子供? 年齢的にも合っていそうだけど。
「……名前、聞いてるんだけど?」
「あ、ごめん。俺はホープです」
俺が返事をすると、少女は黙って目を閉じ「──やっぱりねぇ……」
「やっぱり? あの……君、もしかしてルーカスさんの……」
間違っていたら恥ずかしいのもあり、俺は濁すようにそう口にする。すると少女は目を開き、ギロッと俺を睨むように「だったら何?」
「あ、いや……初めて会ったから驚いただけ……」
「あ、そう。それよりあなた、魔法石を持ち歩いているわね?」
「!!!!」
なんでそれを知っているんだ!? ルーカスさんの子供なら魔法石の存在を知っていてもおかしくはないけど、持ち歩いている事は
どうする……? なんて答える……? アリスからは邪悪な魔力は感じない。むしろ透き通っていて綺麗な魔力だ。だから魔物が化けて、どうこうしている訳ではない事は分かる。だけど──。
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