第9話 王宮での裁き

リアンとアリスは、王宮の前に立っていた。目の前に広がる壮麗な建物は、彼らのこれまでの旅路で見たことのないほどの豪華さを誇っていた。巨大な大理石の柱が空に向かってそびえ立ち、金色の装飾がその威厳を際立たせていた。広い敷地には、美しい庭園が広がり、色とりどりの花々が咲き誇っていた。


「すごいところだね…」


アリスは小声でリアンに言った。


「うん、こんな場所に来るなんて思わなかった」


リアンも圧倒されながら答えた。


二人は警備兵に導かれ、広大な廊下を進んだ。廊下の両側には豪華な絵画や彫刻が並び、天井には繊細なステンドグラスがはめ込まれていた。光が差し込み、廊下全体が幻想的な輝きを放っていた。


「ここが王宮なんだね…」


アリスは感嘆の声を漏らした。


「でも、僕たちがここにいるのは…」


リアンは言葉を濁した。


二人は王の間の巨大な扉の前に立たされた。扉は重厚な木材で作られ、金の装飾が施されていた。警備兵が扉を開けると、二人はその先に進んだ。


王の間は広大で天井が高く、壁には豪華なタペストリーが掛けられていた。中央には玉座があり、その上には威厳に満ちた王が座っていた。彼の衣装は豪華で、王冠がその権威を示していた。


「来たか、若者たちよ」


王は低く響く声で言った。


「はい、陛下」


リアンは深く頭を下げた。


「こちらへ来い」


王は手を振り、二人を玉座の前に招いた。


リアンとアリスは緊張しながら王の前に立った。王は冷静な表情で二人を見つめた。


「お前たちが火竜を引き寄せ、そして倒したと聞いたが、それは事実か?」


王は問いかけた。


「はい、事実です」


リアンは真剣な表情で答えた。


「火竜を倒して王都を守ったこと、感謝する。しかし、その一方でお前たちの行動が火竜を引き寄せたとも聞いている」


王は冷静に言葉を続けた。


「それについては…私たちの過失です」


リアンは頭を下げた。


「そのため、お前たちには罪がある。だが、火竜を倒してくれたこともまた事実だ」


王は一瞬考え込むように目を閉じた。


「それゆえ、お前たちに感謝しつつも、罰を与えねばならない」


王の言葉は重く響いた。


「どうか…私たちの過ちをお許しください」


アリスは涙ながらに訴えた。


「感謝と罰は別の問題だ」


王は厳しい表情でアリスを見つめた。


「判決を言い渡す。お前たち二人は、国外追放とする」


王の言葉に、リアンとアリスは愕然とした。


「国外追放…」


リアンは呆然とした表情で繰り返した。


「お前たちの行動がもたらした被害は大きい。だが、それを埋め合わせるために命を賭けて戦ったことも評価する。だからこそ、命は助けるが、この国から去ってもらう」


王の決断は揺るがなかった。


「分かりました…」


リアンは深く頭を下げた。


「お兄ちゃん…どうしよう…」


アリスは不安そうにリアンを見つめた。


「大丈夫だ、アリス。どんなことがあっても、君を守る」


リアンはアリスを励ますように言った。


警備兵が二人を連れ出し、王宮の外へと導いた。煌びやかな王宮の廊下を再び通り過ぎ、外に出ると、二人は再び広い庭園に立っていた。


「こんな形でこの国を出るなんて…」


リアンは悔しさを噛み締めた。


「お兄ちゃん、ごめんなさい。私のせいで…」


アリスは泣きそうになりながら謝った。


「君のせいじゃない。僕たちが共に過ごした時間は本当に大切なものだった」


リアンは優しくアリスを慰めた。


「でも、この国を出て行かなければならないなんて…」


アリスは涙をこぼした。


「どこに行くかはまだ分からない。でも、君と一緒ならどこにでも行けるさ」


リアンは決意を固めた表情で言った。


二人は国境を越え、未知の世界に向かって歩き出した。リアンはアリスの手をしっかりと握りしめ、これからの旅路に向けて心を強く持った。


「お兄ちゃん、これからどうなるんだろう…」


アリスは不安な声で尋ねた。


「分からない。でも、僕たちにはまだ希望がある」


リアンはアリスの手を強く握り、前を見つめた。


国境を越えた瞬間、二人は過去を振り返ることなく、新たな未来に向かって歩み始めた。しかし、心の奥底にはやるせなさと後悔が残っていた。


「いつか、必ずこの国に戻ってくる。そして、その時には皆に認めてもらえるように…」


リアンは強く誓った。


「私も、お兄ちゃんと一緒に頑張る」


アリスは涙を拭い、前を向いた。


二人は新たな冒険に向けて歩き出し、過去の後悔を糧に、未来へと進んでいった。彼らの旅はまだ始まったばかりであり、これからも多くの困難が待ち受けているだろう。


「お兄ちゃん、これからも一緒に頑張ろうね」


アリスはリアンに微笑みかけた。


「もちろんさ、アリス。君がいる限り、僕はどんな困難にも立ち向かえる」


リアンは自信に満ちた表情で答えた。


二人は手を取り合い、これからの旅路に向けて力強く歩き出した。その背中には、新たな冒険と希望が刻まれていた。

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