第6話 火の国への旅路

砂漠の都ミラージュでの数日間を過ごしたリアンとアリスは、次の目的地である火の国へ向かうことにした。


「お兄ちゃん、火の国ってどんなところなんだろう?」


アリスは興奮しながら尋ねた。


「火の国は火山地帯で、気温が高いって聞いたことがある。それに、火竜の巣もあるらしい」


リアンは地図を見ながら答えた。


「火竜の巣かぁ…ちょっと怖いけど、冒険心がくすぐられるね!」


アリスは目を輝かせた。


「でも、油断は禁物だ。火竜は危険だからな」


リアンはアリスに注意を促した。


「うん、わかってる。気をつけるよ」


アリスは真剣な表情で頷いた。


二人は早朝にミラージュを出発し、砂漠を抜けて火の国への道を進んだ。


砂漠を抜けると、景色は一変し、火山地帯の荒々しい風景が広がっていた。


「すごい…本当に火山がたくさんある」


アリスは驚きの声を上げた。


「そうだな。火山の噴煙が見える。熱さに気をつけろよ」


リアンは汗をぬぐいながら言った。


「お兄ちゃんも気をつけてね」


アリスは心配そうにリアンを見上げた。


二人は火の国の王都、ヴォルケーノを目指して歩き続けた。


「ヴォルケーノって、どんな都なんだろうね」


アリスは期待を込めて言った。


「火の国の中心地だ。きっと賑やかで活気に満ちているだろう」


リアンは微笑みながら答えた。


道中、二人は様々な風景を目にした。


溶岩が流れる谷間、熱風が吹き荒れる砂地、そして高温の泉が湧き出るオアシス。


「ここ、本当に暑いね…」


アリスは額の汗を拭いながら言った。


「うん。でももう少しだ。頑張ろう」


リアンはアリスを励ました。


しばらく歩き続けると、遠くに大きな門が見えてきた。


「見て、お兄ちゃん!あれがヴォルケーノの門だよ!」


アリスは興奮して指を差した。


「ついに到着か。よく頑張ったな、アリス」


リアンはアリスの頭を撫でながら微笑んだ。


二人は門をくぐり、火の国の王都ヴォルケーノに足を踏み入れた。


都は赤い石造りの建物が立ち並び、活気に満ちた市場や広場が広がっていた。


「すごい…ミラージュとは全然違うね」


アリスは驚きの声を上げた。


「そうだな。でも、どちらも魅力的だ」


リアンは都の様子を見渡しながら答えた。


「まずは宿を探そうか?」


アリスは提案した。


「そうだな。荷物を置いて、都を探索しよう」


リアンは頷き、二人で宿を探し始めた。


宿を見つけて荷物を置いた後、二人はヴォルケーノの街を歩き始めた。


「この都にも美味しいものがたくさんありそうだね」


アリスは楽しそうに言った。


「確かに。火の国の名物料理を探してみよう」


リアンはアリスと一緒に市場を回り始めた。


市場には様々な食材や料理が並んでおり、特にスパイシーな香りが漂っていた。


「この香り、何だろう?」


アリスは一つの屋台に興味を持った。


「これは火山唐辛子を使った料理だよ。ちょっと辛いけど、美味しいんだ」


屋台の主人が説明した。


「食べてみよう!」


アリスは屋台の料理を注文し、リアンと一緒に食べてみた。


「わぁ、辛いけど美味しい!」


アリスは目を輝かせた。


「本当だ。これは癖になるな」


リアンも満足そうに答えた。


食事を楽しんだ後、二人はさらに都を探索することにした。


「お兄ちゃん、あっちの道も行ってみようよ」


アリスは新しい通りを指差した。


「いいね。行ってみよう」


リアンはアリスと共にその通りに向かった。


しかし、その通りを進むと、次第に人影が少なくなり、静けさが増していった。


「なんだか雰囲気が違うね」


アリスは不安そうに言った。


「確かに。でも大丈夫だ、僕たちならどこでも乗り越えられる」


リアンはアリスの手を握り、安心させるように微笑んだ。


通りの奥に進むと、古びた建物が立ち並ぶ一角にたどり着いた。


「ここは…」


リアンは周囲を見渡した。


突然、背後から何かが動く音が聞こえた。


「お兄ちゃん、気をつけて!」


アリスは叫んだ。


リアンは素早く振り返り、剣を構えた。


そこには、一匹の巨大な火竜が姿を現した。


「火竜だ…」


リアンは驚きの声を上げた。


火竜は鋭い目で二人を睨みつけ、威嚇の咆哮を上げた。


「逃げるぞ、アリス!」


リアンはアリスの手を引いて走り出した。


二人は必死に火竜の追跡を振り切ろうと、狭い路地を駆け抜けた。


「こっちだ!」


リアンはアリスを引っ張りながら、別の道に飛び込んだ。


火竜の咆哮が背後から響き渡る。


「お兄ちゃん、早く!」


アリスはリアンを急かした。


二人は何とか火竜の視界から逃れ、古びた建物の影に身を潜めた。


「ふう…何とか逃げ切ったな」


リアンは息を整えながら言った。


「お兄ちゃん、火竜があんなところにいたなんて…」


アリスは驚きと恐怖の入り混じった表情で言った。


「火竜の巣が近くにあるのかもしれない。気をつけないと」


リアンは警戒しながら周囲を見渡した。


「でも、火竜の巣には宝物があるって言ってたよね」


アリスは興味を示した。


「確かに。でも、危険な場所だ。慎重に行動しよう」


リアンはアリスに注意を促した。


「わかった。でも、ちょっとだけ探検してみたいな」


アリスは好奇心を抑えきれない様子で言った。


「よし、じゃあ少しだけ様子を見てみよう。でも、無理はしないこと」


リアンはアリスの意見に同意し、二人で火竜の巣を探しに向かった。


しばらく歩くと、巨大な洞窟の入り口が見えてきた。


「これが火竜の巣か…」


リアンは洞窟の入り口を見上げながら言った。


「すごく大きいね…」


アリスは驚きの声を上げた。


「慎重に行こう」


リアンは剣を構えながら洞窟の中に足を踏み入れた。


洞窟の中は暗く、温度がさらに高くなっていた。


「暑い…」


アリスは汗を拭いながら言った。


「気をつけろ。ここには何が潜んでいるかわからない」


リアンは警戒を緩めずに進んだ。


突然、洞窟の奥から光が漏れているのが見えた。


「お兄ちゃん、あれ…」


アリスは指を差した。


「宝物かもしれない。行ってみよう」


リアンは慎重にその光の方向へ進んだ。


光の先には、巨大な火竜が眠る巣が広がっていた。


そして、火竜の周りには宝石や金銀の山が輝いていた。


「これが…火竜の宝物…」


アリスは驚きと興奮の声を上げた。


「でも、静かに。火竜を起こさないように」


リアンは小声で言った。


二人は慎重に足を進め、宝物の山に近づいた。


「少しだけ持ち帰ろう」


リアンはそう言って宝石の一つを手に取った。


その瞬間、火竜が目を覚まし、二人に向かって咆哮を上げた。


「逃げろ、アリス!」


リアンはアリスの手を引いて再び走り出した。


火竜は怒り狂って二人を追いかける。


「急げ、出口はすぐそこだ!」


リアンは必死にアリスを守りながら走った。


二人は何とか洞窟の出口にたどり着き、外に飛び出した。


「ふう…危なかった」


リアンは息を整えながら言った。


「お兄ちゃん、あの宝物…持って帰れたね」


アリスは手に握った宝石を見つめながら言った。


「うん。でも、もう少しだけ火竜には近づかない方がいいな」


リアンは苦笑しながら答えた。


二人は火竜の巣を後にし、再び火の国の王都ヴォルケーノへと戻った。


「今日は疲れたね。宿に戻って休もう」


リアンはアリスに言った。


「うん、明日は何をしようかな」


アリスは楽しそうに言った。


二人は新たな冒険に思いを馳せながら、ヴォルケーノの街を歩いていった。

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