ユーチューバーの話

(オープニング)


「どうもこんにちは!ミッチーRadioです!今日は特別なゲストをお呼びしています。こちらの方です!どうぞ」


「どうもこんにちは。芸人の佐々木どんぐりです。今日はお呼びいただいてありがとうございます!」


「どうもどうも。どんぐりさんとは昔、僕が芸人してたころに中野の小劇場で始めてお会いして。そこから現在までずっと交流をさせていただいてて」


「そうだね〜、懐かしいね〜」


「当時からどんぐりさんのことは、どんさん、どんさんって呼ばせていただいて、それくらい仲良くしていただいてて」


「そうそう!あの頃はミッチーさんも若くてね、路地裏のラーメン屋で店員さんと喧嘩したりして、そんなミッチーさんも今やすごいインフルエンサーで。登録者100万人くらいでしたっけ?」


「5万人です。そんなん言わさないでくださいよ!今10万人目指してますから!みなさん登録お願いします〜」


「はは(笑)僕なんてまだインスタで1万人くらいですからね」


「いやいや、それだって十分すごいですから(笑)。お互い頑張っていきましょう!まぁそんなこと言ってますけどね。実は今日は、どんさんにはすごいものを持ってきていただいてまして。実はどんさんは芸人さんでありながら!なんと!呪物コレクターという側面もあるんですよね!それで今日は、とんでもないものを持ってきていただいたということで、楽しみにしてます!よろしくおねがいします!」


「はい〜!よろしくおねがいしますー!」


(場面転換)


「さてさて、なんだか横にいるだけでも悪寒がするんですが……今日は一体どんなすごいものを持ってきていただいたんでしょうか」


「はい。え〜その前に、少し僕のお話をさせていただくんですが。ご紹介いただいた通り、実は僕は怪談芸人しながら、呪物コレクターをしておりまして……実は怪談界隈には、呪物コレクターって結構いるものなんですよ」


「え!?そうなんですか?」


「はい。呪いの人形とか、海外変な儀式に使うお面とか、そういうものを集めてる方って結構多いんですよ。劇場とかで怖い話をするときに、こうやって持ってきて、オチの時に『これがその話に出てきたものなんですが……』なんてお客さんにお見せすると『キャー!!』って叫ばれたりして(笑)。なんだか話に説得力が出てくるんですよね。」


「なるほど、たしかに本物が目の前にあると、すごくリアルに感じますもんね!」


「はい。なので、怪談話をする芸人さんの中には小道具として呪物をコレクションしている人って結構いるんですよ。で、今回持ってきたものっていうのは、私の先輩芸人さんが……あ、その先輩も行方不明になってるんですけど、色々あってその方が手放したものが、私に回ってきたものでして。」


「え!今しれっとやばいこと言ってないですか?」


「はい。行方不明になってますね」


「え!だって、その先輩芸人も怖い話とかしてて、そういうものには慣れてたりするはずですよね?その先輩が行方不明になったってことでしょ!?それってめちゃくちゃやばくないですか?」


「そうですね。これを発表するのもこの場がはじめてなので、もしかしたら何かが起きちゃうかもしれないですね」


「えぇ〜……ちょっと勘弁してくださいよー!え〜!ちょ、ほんま見たくないわ〜!」


「あはは、さて、それがこちらのものなんですが……」


「この袋の中にあるんですね?すみません、ちょっと開けてみますが……え〜と、これは……箱?みたいな感じですね。……結構大きいすね。なんかお札と、白い飾りがついてますね……中に何か入っているんですか?」


「いえ、入ってません。この箱です」


「この箱……かなり古そうですね」


「そうですね。この箱が、僕が先輩芸人さんから譲り受けたものです」


「なるほど……この箱には一体何があるんですか?」


「はい。ではその話をしますね。これは、この箱を持っていた先輩芸人さんから直接聞いた話なんですが。その芸人さんの大学の先輩にあたる人……ここではその大学の先輩を仮にSさんとしますね。Sさんは大学で人類学を専攻していて、学生時代に長野県のとある村で、村の風習を調査するフィールドワークをしていたそうなんです。


その村というのがすごく田舎で、いわゆるテンプレ通りの嫌な田舎というか、かなり排他的な村だったそうなんです。最初は村の人から話を聞くのにも難儀したらしいなんですが、Sさんはめちゃくちゃコミュニケーション力が高い人だったので、現地のお宅にお酒を持って突撃したり、自主的に道路の草刈りをしたりして、かなり強引に地域に入って行ったそうです。そうするとだんだんと村人もSさんに心を開くようになってくれたそうで、お酒の席なんかにも逆に呼ばれるようになったり、半年くらいでかなり村の人と仲良くなったそうなんです。


そうやって活動しているとある日、村長がSさんに声をかけてきたそうです。それは村で長年やっている儀式へのお誘いでした。なんでもそれは村人の安全を祈るもので、数百年前から欠かさず毎年やっている儀式なんだそうです。Sさんは二つ返事でその儀式への参加を決めたそうです。


儀式の日、Sさんは指定された時間に、儀式を行う村はずれにある古民家に向かったそうです。Sさんが到着した時にはすでに、神主のような格好をした人と、各集落の代表者がいて、儀式が始まるのを待っていたそうです。村長から、写真撮影は絶対に禁止だと言われていたので、Sさんは全員が座っている場所から離れた少し下がった位置に座り、メモをとりながらその式に参列したそうです。


儀式自体は特に変わったことはなく、お祈りとか祈祷に近いものでした。祭壇には何か御神体のようなものと、小さなお饅頭が置かれていて……そうそう、分かりやすいイメージだと、お月見団子みたいな感じですね……あとなんかハサミとか、いろんな道具が置いてあって、その前で神主さんが呪文を唱えていたそうです。それが終わると祭壇に置いてあった小さな饅頭みたいなものが参列者みんなに配られ、それをみんなで食べるように言われ。そしてまた祈祷が始まって〜という感じで。特に変な感じはしなかったそうです。


たしか饅頭って、昔中国で生贄の首の代わりに捧げられたものだって言いますよね?もしかしたらそう言う意味もあったのかもしれません。最後に、神主さんが手に持っていた大麻(おおぬさ)……ってわかります?あのお祓い棒みたいなやつ。あれをガサガサすごい勢いで振りながら、祭壇に置いてあった何かを強く叩いてて。それがものすごい勢いで、なんか棒も途中からちょっと折れるくらい力一杯叩いていて。


Sさんもそういうふうに大麻を使ってるのを初めて見たので、とても驚いたのですが……その後、祭壇の前で神主さんが、急に叫んだそうで


なんか、叫びながら、神棚にある何かを手に取って、その部屋からすごい勢いで飛び出て行ったそうです。その時に神主さんがぶつかって祭壇の上にあったいろんな道具があたり一面に散らばって。村長さんは慌てて追いかけたそうですが、村の人もSさんもみんなびっくりしちゃって


『え、どうしたんやろ』


てみんなポカーンってなってたそうなんです。しばらくしたら村長さんが戻ってきて『今日はこれで終わりや、解散しろ』って言って、それだけ伝えてまた神主さんを追っかけていっちゃったそうです。そのとき、部屋に落ちていたもののひとつがこの箱で」


「え!?それ持ってきちゃったんですか!?その祭壇に置いてあったものってこと?」


「おそらく、そうです」


「えぇ〜!!何それ!」


「Sさんはすぐに返却するつもりだったらしいのですが、持ち帰った日から不思議な現象が多発しまして。Sさんの研究室に夜な夜な人影が見えたり、家に不審火があったりして、お祓いに行ったりしていたそうなんですが日に日にSさんの顔色も悪くなってきて。心配した先輩が何度も声かけたりしていたそうなんですが……どんどんおかしくなってしまったそうで。最終的にSさんは『村に帰る』と言って家を飛び出したきり、そのまま行方不明になってしまったそうです。


その後、Sさんのご家族が研究室の荷物を引き払いに来た際に、仲の良かった先輩に『私たちは専門外なので、Sが何をしていたかよくわからない。わたしたちでは持て余すので、何か気になるものがあれば持って行ってくれて構わない』と声がかけられたそうで。先輩芸人さんもSさんがなんとなく帰ってこないような気がして、形見にするつもりでこの箱を引き取ったそうです」


「ちょっと、それガチなやつやん……そしたら先輩芸人さんもなんか体験してるんちゃう?」


「ええ。実は、その先輩さんも先日行方不明になっちゃったんですよ」


「え!……それほんまなん?」


「ほんまです。それで、同じように先輩芸人さんのご家族の方が荷物を整理してる時にこれを見つけて、ちょうどその時、自分が怪談をやってるって事を知っていただいてて、なんか手元に置いておくのは気味が悪いなあと思ったらしくて、『どんぐりさん、これ引き取ってくれない?』ってお声かけいただいたんですね。それで今、僕が持ってて」


「え〜!勇気ありますねぇ!そんな怖いもん、僕だったらよういらんけど……やばぁ……」


「それでね、実はこれ、ちょっと気になることがあってですね」


「なんなんもう〜!やめてや〜!なに〜!?」


「この箱自体も、そういう話があるからたぶん相当やばいものだと思うんですけど、それよりも……ちょっとこれ、ちょっと中を見てくださいよ。……ね?綿みたいなのがあるじゃないですか」


「ほんまや!あるね!なんかこわごわしてる!え!?」


「これ、もともとは、この箱の中に何かが入ってたんじゃないかな?って思うんですよ。ほら、こことか、ここ、少し汚れたような跡があるじゃないですか。これって、この箱に、もともと何かが入ってたんじゃないかって」


「あ!!そういえば、神主さんが何か持って飛び出していったって言ってた!それや!!」


「そう、それで思ったんですよ。箱でこれだけやばいことが起きてるなら、中に入ってたものって、もっとやばいものだったんじゃないかって。それで、この箱に入れて、色々やって抑えてたのが、抑えきれなくなってしまったのに気がついて、それで慌てて神主さんはどこか別のところに運んだんじゃないかな?って、あくまで僕の想像ですが」


「なるほど」


「そうするといろいろ説明がつくんですよね。この箱なんか放り出しても仕方がないくらい、もっとやばいものがあるなら、こんな箱なんて探しててもしょうがない、という感じなのかな?と」


「確かに……そしたら、そのやばい何かって、まだどこかにあるってこと?こわ……。それってめちゃくちゃやばないですか?だって、入れてた箱を持ってるだけで悪いことが起きちゃうのに、その中身がまだどこかにあるかもって。めちゃくちゃやばいじゃないすか(笑」


「やばいですね(笑)もしかしたらまだどこかにあるんじゃないですか?」


「やば〜」


「そうですね。もしかしたらSさんとか先輩とか、その場所に誘われてて、取り憑かれてその場所に向かったのかもしれないなぁ、とか」


「なんかそんな話ありましたね?近畿地方あたりに行ったんですかね?」


「それ違う話やからね(笑)」


(場面転換)


「おい!急にやめろや!……まぁそんなわけでね。カメラ回ってないところでもめちゃくちゃ楽しくお話しさせてもらってたんですが、そろそろお時間ですか?はい。それでは、ミッチーRadio、そろそろ終わりのお時間です。チャンネル登録、ベルマークの通知など、ぜひよろしくお願いします。そのほかにポッドキャストでこぼれ話、メンバー限定の配信も行っております。ぜひそちらもよろしくお願いします!それでは、本日のゲストは、佐々木どんぐりさんでした。どうもありがとうございましたー!」


「ありがとうございましたー!」


(ED)

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