第12話 慢心
ジョナサンはローリエに杖を向けて警戒していた。
二人の距離は十分にあり、彼は深刻な表情でそこに立つ。
ローリエはジョナサンにめがけて、
そして、そのすべての軌道がジョナサンを避けるように曲がり防がれてしまった。
ジョナサンは後ろに下がり、間合いを広げる。
……共有魔力の付与。
これは基本的に、自身の残存魔力の半分を強制的に渡さないといけない。
僕の調整技術でも、それを3割まで減らすのが限界だ。
そして、その後に使った
僕はこれらの連続消費でもう、あと数回しか魔法が使えない。
……だけど魔力が無くたって、僕は大人であの子は女の子。
体格でゴリ押せばなんとかなるかな。
あの子が使ってる、魔力効率が高い
でも、あの子の年齢じゃまだ魔法を効率良く扱えないだろうし、魔力で火力を無理矢理上げている。
魔力消費は格段に早いはずだ。
あの子が成人並みの魔力総量でも、直にあの子の魔力も尽きる。
そう思いながら下がり切ったジョナサンはまた、体勢屈めて杖を構えた。
しかし、ジョナサンの予想はすぐに外れた。
ローリエはまた次、次と、魔力が尽きること無く立て続けにずっと衰えない威力で衝撃波を放ち攻撃した。
「
一度、二度、三度目は全て無詠唱で防いでいたジョナサンも、四度目は流石に魔力量の低下に耐えれず詠唱をすることによって出力を上げた。
なんで!? もう数十発は撃ってる………なぜ魔力切れにならない!?
ここは兄さんと合流……いや所詮、使えるのは低火力の
ジョナサンがそう思った矢先、すぐさまローリエに向かって突っ走った。
「来たな」
ローリエがそう言いうと、目の辺りと頬に付いた血を手で拭う。
「
ローリエは杖を構え、しっかりと標準を定めた後そう唱えて発射した。
そして、その衝撃弾が一直線にジョナサンへ直行し、そのまま右半身、鳩尾のすぐ隣の右腹部に的中した。
「が――――っ!?」
耐えられなかった。
その瞬間ジョナサンは両膝を突き、前のめりに体が倒れ始める。
な、なんてパワーだ……まずい、追撃が来る。
こ、ここは一度防御を………
いやダメだ!! 今は残り魔力をできる限り振り絞り
ジョナサンはギリギリで床に片手をつき、顔を前に上げてそこに杖を向けた。
「っ………この…
「
ジョナサンの白い閃撃が至近距離で張られた障壁に接触すると、張り裂けるような音と衝撃波が交差するように炸裂した。煙が立ち込める。
浅い煙はあっという間に消えてしまった。衝撃で怯んだジョナサンは、目が眩みながらも状況を確認しまいと正面を見る。
しかし、そこにローリエは居なかった。
「な!? どこに―――――」
その瞬間、ジョナサンは右腹部に違和感を気配を感じた。
そして彼が右に目をやると、その視界にはローリエが映りこんだのだ。
そう、既に遅かった。
ジョナサンが強打した右腹部には既に、ローリエの黒杖が触れていたのだ。
「
ローリエがそう唱えると、即座に手持ち花火のような光が杖先で起こり、空気を張り裂ける小さな音を鳴らしながら光は噴射された。
「!っ―――……あがあーーッ!!」
ジョナサンは思わず、左手で横腹を強く抑え込みながら転がり回った。
顔は歪み、大きく咳き込み、杖を持ったまま体を痙攣させて、踊り狂うように家の柱に背を打った。
弱点として超至近距離でしか使えないが、当たれば全身に強い衝撃が加わるかのような感覚に陥らせ筋肉を麻痺させ、暫く自由に動けなくさせれる強力な魔法。
そう、これがジャイルズから教わった暴徒鎮圧のときに有効な魔法。失神魔法だ。
そして、ローリエは警戒しながらゆっくりとジョナサンに近づいていった。
「な……ぜ、僕が…いが……」
ジョナサンはゆっくりとローリエに顔をやり、涙目でそう訴える。
「……お前のミス、その一つはもう魔力が無いのに逃げなかったことだ。攻防でお前の魔力が尽きれば、選択肢は『逃げるか』or『近接肉弾戦』のどちらか。まあ案の定、お前は女ガキ相手に背を向けれなかった」
ローリエはジョナサンの一挙一動に用心しつつ、ゆっくりと柱の下で倒れるジョナサンに近づいていた。
魔法の連続使用、魔力消費量の多い攻撃魔法などを《アナクアクス》をほとんど使わなかったこと。これらからジョナサンに魔力が無いことをローリエはある程度推測している。
「分かって……いたのか…」
「そして今みたいに突撃すればこの通り、底上げした
そしてもう一つ、それはお前が俺の魔力総量を見誤ったことだ。
お前は出し惜しみせず最初から俺を攻めればよかった。
俺の魔力総量は成人女性の二倍。
相手との魔法の攻防で負けるはずがないのだ。
だけど、無防備の弟にあそこまで至近距離まで近づけるかは危険な賭けだった。
倒せたのは弟が取り乱してくれたからだ。
俺も不利になればこうなるかもしれない。
それに今ので俺も魔力と体力をかなり消費した。
だけどまだ戦いは終わってない。
今は弟が暫く動けない間に、セイラの援護に―――――
ローリエはジョナサンがもう動けないのを確認すると、セイラ達がいる方向に足を向けようとした。
しかしその時、今セイラが居るはずの部屋から大きな振動が伝わってきたのだ。
まさか、セイラ……!
そう思ったローリエは急いで、全速力でその方向へと走っていった。
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