第4話 ハティシャ


 「てめぇはヨウジか?!俺にどつかれてノビてた奴が偉そうにすんじゃねぇ!ソイツは俺がシバくハズだったんだ!余計な事しやがって!」


 俺は感情に任せて怒鳴り散らす。自分のやろうとしてる事に横から手を突っ込まれたら腹が立つからな


「落とし穴にハマった無様な負け犬がよく言うよ。たまたま不意打ちが上手く行ったからって負け惜しみは良くないな〜」


 ブチッッ!


 俺は足元の岩を右手に掴んで投げつける。当然剣で砕かれるがそれと同時に左手で“砂”を撒く


「ハッ!苦し紛れかい?目眩ましなんて正面切っては勝てませんって言ってグワッッッ!」


 落とし穴の近くにまだ居たから相手の足を掴んで穴に引きずり落とす。狭い穴に2体の大鎧が密着して嵌っている形になる。


「そりゃあヨォ、技術的な技ならお前の方が分があるんだろうが、単純なパワーならこっちが上だ!」


 右腕でヨウジの大鎧を抱え込み、左腕で奴の右顔面や右肩をひたすら殴る。みるみるうちに白い狐の様な大鎧がボコボコになる。


「おのれゲスが!貴様とて悪鬼だ!悪鬼は俺が斬り伏せるッッ!」


 ぐるんッ!と俺の大鎧に巻き付いたかと思うと右腕の拘束を抜けていた白い大鎧。


「ハァ………ハァ…………このハクメンにキズを付けたな!いくら葵の推薦だろうが貴様の様な奴は認められん!悪鬼滅殺ッッッッ!」


 奴の奥の手の一撃が放たれる。それに対して俺は固めた拳を思い切り打ち付ける!


ガギィン!と甲高い音が響いた。

 俺のガネーシャの大鎧の振り抜いた拳に当たって弾かれたハクメンの刃が右の牙に当たり、刃と牙が共にヘシ折られていた。  


「クソッ俺の拳で叩き折るつもりが牙が折れちまった!タダの嫌味な奴じゃ無いみたいだな」


「黙れ!貴様のその振る舞い、私利私欲を満たす悪の道士と何も変わらん!刀が無くとも今ここで倒してくれるっ!」


 俺の喧嘩仕込みのパンチをヌルヌルとした動きで避けて鋭い蹴りをなんども俺に突き刺して来るハクメン。クソッ動きが気持ち悪いな


「所詮技術の無い猪武者だ。負けを認めてガネーシャの顕現を解除しろ!」


「イヤだね!お前の後は俺達を雇ってた土建屋の事務所だ!こんなロボットに乗り込める魔法のアイテムが一個ダケなワケねぇ!社長ふん縛って翔太の落とし前を付けさせンだよ!」


 蹴りの応酬を捌きながら俺は叫ぶ。そうさこんな事に巻き込んだキッカケはこのバイト先だ。なら元の会社に借りを返して貰わないとな。


 なんども蹴られてタイミングが掴めてきた……今だッ!

 ハクメンの伸びてきた足を掴み、全力で膝を反対方向に曲げる


「人間相手なら流石に出来なかったコトもコレに乗ってりゃ関係ネェよなぁ!」


ミシミシミシ、バキッ、ガチン!


 膝から下が砕けて、何らかの車のパーツに戻る。……ほぉ、あくまで乗り物に取り憑かせてる感じなのか


「あばよ嫌味野郎。俺がバイト先だった土建屋を畳んだ報告を後でたっぷり聞かせ……ヌグッッ」


 俺が沈黙したハクメンの横を通り過ぎる瞬間、奴の貫手が俺のガネーシャの脇腹を貫いた

 コイツッ!このガネーシャの装甲を?!いや、アイツ自分の手がグチャグチャになるのをお構い無しで?!ハッハァ!面白いな!


「素直に……沈んどけクソが!」


「悪鬼………めっさつ!」


 そこで俺の意識は途切れた。



─────────────




「ッ………」


「目が冷めたかい?君にはつくづく驚かされる。まさかこの私を拾ってすぐにこんなに戦うなんてさ。まさか原典に影響されたんじゃないだろうね?」


 俺の眼の前にはちょっとぽっちゃりとしたインド風の美しい女性が居た


「ちょっとぽっちゃりは余計じゃないかい?」


 俺の心を読んでる?マジに女神サマみたいな感じか?


「まあそうだね。アンタが拾って、私が使わせてあげてるガネーシャの置物あるでしょ?そこに宿ってるジン……まあ精霊みたいなものね。」


「で、何の用なんだ?お前の取引に居合わせたせいで俺は大変な事になってるんだが?」


「いや〜、取引とかじゃなくてあのビルに居た人が元の持ち主なんだけど、その人が私を使わずに生身での戦いに敗れちゃってね。どうも殺したソイツはアンタを雇ってた土木業者の社長みたいなのよね。だから、アンタがやろうってんなら私も手を貸そうかなって。私はハティシャ、よろしくね」


「ああ、俺は賀菜一茶、イッサだ。よろしくハティシャ」


「えぇ、一緒にあのクソをぶちのめしましょう?」


 そこで今度こそ俺の意識は途絶えた

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