第四章 古の災いの竜へ反逆の祝福を
待ち合わせ
ここから前に告知した通り、土日水の三日間更新になります。ストックたまりまくったら三話連続更新が続くかも
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温泉旅行に行こうと言う話になってから二日後。きちんと旅館の予約も取れて、詩乃も詩月も両親の許可を得て旅行に正式に参加表明をした。目的の場所は京都で、美琴の生まれた場所で、華奈樹、美桜の実家がある場所である。
しっかりと荷物をまとめて、のえると空を連れて電車を乗り継ぎ待ち合わせ場所の東京駅で姉妹揃って並んで待つ。
東雲姉弟は現在、揃って寝坊して朝食を食べ損ねたので近くにあるコンビニに行って朝食を買っている最中だ。
「いやー、楽しみだね! 温泉旅行なんていつ以来だろう」
「ボクが受験生になった頃から旅行とか行かなくなったから、ほぼ一年ぶりくらいじゃない? そういうシズも、本当はこんなところに来てる場合じゃないんだけど」
「まあまあ、成績はちゃんと取ってるから。こんなでも成績上位陣なんだよ」
「部活でも大会でいい成績残すし、お前のその万能っぷりが羨ましいよ」
「そういうお姉ちゃんだって、結構なんでもできるじゃんかー。料理もできて運動もできてお勉強もできて、ゲームの腕前はプロ以上。私からすればお姉ちゃんのほうが羨ましいよ」
「そんなもんかね」
「そんなもんだよ」
できるだけ邪魔にならず、かつ詩乃自身目立たないように日傘を差しているのだが、詩月も中々の美少女だし詩乃の美貌は日傘程度で隠れやしないので、結構視線を頂戴している。
詩乃の今日のコーデはホットパンツに白のちょっと大きめなサイズの白いシャツと結構シンプルなもので、普段は足を隠しているニーソは今日は履いていない。なぜなら暑くて蒸れるから。
詩月は黒のキュロットスカートにピンクの半そでシャツを着ており、元よりファッションに詳しいだけあってよく似合っている。
詩乃は隔世遺伝で顔立ちも日本人離れしているし、腰が高い位置に来ているため脚も長い。髪の色も銀髪で肌も新雪のように白い美少女が日傘を差している。これが目立たないわけがない。
詩月も詩乃の妹というだけあって中々の美少女っぷりだが、やはり詩乃には敵わない。
「おまたせー! ごめんね、遅くなって」
「マジですまん。まさか揃って寝坊するとは思いもしなかった」
少しするとのえると空がコンビニ袋を提げてやってくる。手軽に食べられるものを選んでいるだろうし、のえるの性格的にサンドイッチだろうなと当たりを付ける。
「美琴さんたちはまだ来てないんだよね?」
「約束の時間より十分以上早く着いたからね、ボクたち。だからもうちょっとかかるんじゃない?」
「でも美琴さんのことだし、実はもうすでにいるって可能性もある」
「真面目だもんねー。……お? あの人じゃない?」
のえるが早速コンビニ袋の中から野菜サンドイッチを取り出して封を開けようとしていると、誰かを見つけたのか指をさす。
その方を見ると、いつもとちょっと雰囲気は違うがすっかり見慣れた美琴が、華奈樹と美桜と、小さな女の子三人と一緒に歩いてきた。
「あら、もう来てたんだ。ちょっと待たせちゃったかな?」
「だから言ったでしょう、美琴。もう少し早く出ましょうって」
「後輩を待たせる先輩は嫌われるよ」
「うっ……、し、仕方ないじゃない。中々寝ぐせが直らなかったんだから」
「おはようございます、美琴さん。ちょっと前に着いたばかりなので気にしないでください」
「そっか。ならよかった。あ、ほらほら、三人とも詩乃ちゃんたちとは初対面でしょ?」
美琴はそう言って小さな女の子たちを前に出す。もうすでに誰かは予想は付いているが、本人たちからの自己紹介を待つ。
「初めまして、ヨミさ……詩乃さん。ヘカテーこと
まず最初に自己紹介したのは、かなり金色に近い茶髪の女の子だ。髪の色が金に近かったのでもしやと思っていたが、本当にヘカテーだった。
まだ小学生ということもあってゲーム内同様にちっちゃくて可愛い。むしろこちらの方が愛くるしさが増しており、ちょっとだけのえるの気持ちが分かってしまう。
「わ、私は
「灯里……あ、だから
「そ、そうです」
ちょっと引っ込み思案なのか、雰囲気からも大人しさを感じる灯里が自己紹介をする。
親しくなってきたのでこの子は中学生だと知っているが、結構小柄で柚子と並ぶと同い年くらいに見えてしまう。
最後に残った銀髪の子、恐らくルナは二人と比べると少し身長は高めで、中学生だと言われてもすんなりと入ってくる。
「じゃあ最後は私ですね! FDO内ではルナ、本名はルナ・エトルソスです! よろしお願いしまーす!」
柚子と灯里とは打って変わって、元気一杯で溌溂と自己紹介をするルナ。
「本名だったんだ」
「そうです! 美琴さんに憧れてFDOを始めて、美琴さん本名だったから私もそのままで行っちゃえって。流石にちょっとは顔とかいじりましたけど、ヨミさんはマジでそのままなんですね。……リアルでこんなに綺麗とかズルくないですか?」
「あはは……」
詩乃も最近はもう何も思わなくなったが、女の子になったばかりの頃は鏡に自分の姿が映るたびに、なんだこの美少女はと思ったものだ。
FDOで配信を始めてから可愛いコメントが大量に投下されて、客観的に見ても整っている方なのだと自覚しているが、やはり他人から言われるとまだちょっと恥ずかしい。
「やっぱり詩乃ちゃんもモデルとかやってもいいと思うんだけどなー」
「スタイルはモデルほどよくないし、もう十分配信で目立っているのでこれ以上は嫌です。むしろ、配信者として大成功している美琴さんはよく両立できますね」
「開き直ったからね。ゲームで人気が出て売れれば、雑誌の方も売れるからさ。お母さんもウハウハだったよ」
そう言えばこの人、父親もそうだが母親も芸能事務所を経営しているんだったと思い出す。
自分の娘がここまで高身長でスタイル抜群になり、ここまで美人になればそりゃ自分の娘を自慢するためにモデルにしたくなるだろう。
「あとはフレイヤさんたちとアーネストくんたちだね。あ、あの子たち全員イギリス人なのよね。だからフレイヤさんとアーネストくん、イリヤちゃん、リタさんは普通に英語で会話してるよ」
「フレイヤさんの配信、リタさん込みの雑談だと英語のリスニングに丁度いいって言われてますもんね。聞き取りやすいし」
「分かるー。私もフレイヤさんの配信をリスニング用に聞いてることあるんだー。……あら? そろそろ来るんじゃない?」
なんだか俄かに騒然とし始めたのを見て、美琴がそろそろ来るのではと推測する。
大勢が足を止めて目を向けている方を見ると、一人やけに身長の高い男性を後ろに、三人の美少女が前を歩いてこちらにやってくる。
歩く姿からは気品とか上品さしか感じられず、一発で住む世界が違うと言うことと、間違いなくあの人たちだと分かる。
「お待たせしました。途中で道を間違えてしまいまして」
「大丈夫大丈夫。まだ予定の時間より早いから」
「よかったです。……皆さん、こちらでは初めまして、フレイヤ・ロスヴァイセです。こうしてこちらでもお会いできて幸いです」
「アーネスト・レオンハートだ。……ヨミ、君はリアルモジュールでやってたんだな。一目で分かったぞ」
「イリヤノール・レオンハートよ。いつも通りイリヤって呼んで頂戴。ヨミちゃんリアルでも超可愛い! あとでぎゅってしていい?」
フレイヤ、アーネスト、イリヤの順番で自己紹介する。残るはリタだが、いつものあのミステリアスなメイドさんがいないので、残った白髪の少女を見てはて? と首をかしげる。
「シルヴィア・レイフォードよ。FDOだとリタ。よろしくね、ヨミちゃん」
「……リタさん!?」
「やっぱ驚くよねー。シルヴィってゲーム内とリアルとで、人格別だろってくらい違うから」
「もはや別人……」
「よく言われるわ。ま、とりあえずよろしく」
あまりにも雰囲気と口調が違いすぎて脳がバグりそうだが、声はリタなので本当にリタなんだと辛うじてわかる。
そう言えば、美桜もゲームとこちらとで雰囲気と口調が結構違うし、何かしらの意識の切り替えとかを行っているのだろう。
「ボクたちが最後になっちゃったね。夜見川詩乃です。知っての通り、ヨミです。よろしく」
「お姉ちゃんの妹の、夜見川詩月です! FDOではシズです。よろしくお願いします!」
「ノエルこと東雲のえるです! よろしくお願いしまーす!」
「シエルこと東雲空だ。好きな方で呼んでくれても構わないよ。よろしく」
最後に詩乃たちが自己紹介をする。
「ジンさんとゼーレさんも来れればよかったんだけどねー」
「ジンはリアルで抜けられない予定があったし、ゼーレは兄のゼルの一件で今すっごいごたついててそれどころじゃないんですって。温泉旅行行きたいって嘆いてました」
「あらら、それは仕方ないわね。夏休みになったらまたみんなで旅行しましょう」
「ですね」
全員揃ったので、まだ時間に余裕こそあるが早めに行動して損はないので、東京駅構内に入る。
ここから約二時間新幹線に乗っての移動になるが、お昼前には向こうに着く予定なので昼食は買わず、ちょっとしたお菓子を買っておく。
移動中暇になりそうなのでカードゲームも必要かと思ったが、ルナがきちんと持ってきており、イギリス組は首につけているナーヴコネクトデバイスにARチェスが入っているそうなので、そっちで時間を潰すとのこと。
詩乃もフレイヤたちとチェスがしたくなったので同じチェスアプリをインストールし、旅行組に視覚共有して時間になるまで順番でチェスをして盛り上がった。
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大部分がゲーム名と本名が同じな件
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