番外編 お化けとゾンビと骨骨パニック!

 年に一度のビッグイベント。現実でも渋谷に大量の人が集まってハロウィンを楽しむが、現代はフルダイブVRと言うものがありわざわざ現地に行かなくてもいい。

 それでもリアルの空気感を楽しみたいからと毎年行く人が絶えず伝統行事っぽくなっているが、リアルとほぼ変わらないレベルのグラフィックのFDOの中に入れば、ゲームだからとリアルではできないようなコスプレを楽しめるし、人に寄るだろうがリアルよりもお金があるしカロリーと言うものがないので暴飲暴食もできる。


 そんなわけで今年のハロウィンイベントも大盛況のようで、すさまじい人が『伽藍洞のかぼちゃ町』に足を運んでいる。

 見回してみると結構カップルがたくさんおり、ひっそりといちゃ付いていたり逆に人目もはばからずに大人なキスをしていたりハグしていたりしている。

 そういったカップルを一部の男性プレイヤーが恨めしい目で見つめていたり、怨念の籠っていそうな目を向けていたりしており、ノエルとこうして二人で歩いているヨミはちょっと優越感に浸った。


「あ! ヨミさーん!」


 ただ歩くだけじゃつまらないし、どこに行こうと周りを見回していると、聞き慣れた声が聞こえる。

 声がした方を向くと、ヘカテーがぶんぶんと手を振っていた。なんか可愛い生き物がいると胸がきゅんとときめく。

 ヘカテーはここ最近かなりヨミやノエルに懐っこく、エマやステラにも懐いているのでちょっと犬っぽいなと思っており、運営もそれを感じ取っていたのか犬耳と尻尾の生えた小さなメイドさんになっていた。


「ヘカテーちゃんも来てたんだ」

「もちろんです! 去年のハロウィンイベントがすごく楽しかったという話を聞いてから、ずっと楽しみにしてたんです!」


 感情に合わせて尻尾をぶんぶんと激しく左右に振る。この世界では尻尾はプレイヤーが自分で動かす以外にも、感情で勝手に動くようにもなっている。

 左右に激しく揺れている時は楽しんでいたり嬉しい時だ。余程ハロウィンイベントを楽しみにしていたようだ。


「というわけで早速、『トリックオアトリート』、です!」


 ヨミの前にウィンドウが表示される。ノエルと実験のためにお互いに一回ずつやったがポイント交換はしていないので、まだ一つ残っている。

 ヘカテーが期待に溢れた目をしているので拒否なんてできず、ポイントを譲渡する。


「ありがとうございます!」

「可愛いねぇ。ついでだ、ボクの手持ちのお菓子もあげちゃう」

「わぁ! お菓子もあると本当にハロウィンみたいです!」


 たまたまインベントリに入っていた未開封のお菓子があったので、それをヘカテーにあげる。

 お菓子を受け取ったヘカテーはぱっと表情を明るくして、早速一つ取り出して食べる。ちなみにお菓子はクッキーだ。


「ヨミちゃん、私も一個欲しいかも」

「残念ながら、一個しかなかった」

「しょぼーん」

「口で言うな。ログアウトしたらクッキー焼いてあげるから」

「約束だよ? 破ったらしずちゃんと協力して、」

「分かった分かった、分かったからシズまで巻き込もうとするな。あいつ巻き込むと収集着かなくなるから」


 妹のシズもFDOを始めてから、色々とインスピレーションを受けたのかゲーム内だけでなくリアルでも衣装を作り出そうとしている。

 今は受験生なので服飾には手を出していないが、日に日にシズの部屋に裁縫セットや布が増えて行っているので、来年から本格的になりそうで怖い。高校に行っても剣道部のままであってほしいと願うばかりだ。


 ヘカテーと合流してからは三人で町を歩き、屋台が出ていたので綿菓子やたこ焼きを買ったりして三人でシェアして、射的もあったので挑戦してみたら思ったより難易度が高くてやりごたえがあり熱中した。

 色々楽しんだ後で、これただの縁日じゃないかと気付いて笑い、美琴とか来ていそうなので探し回る。

 流石に知らないプレイヤーにいきなりトリックオアトリートというのは気が引けるので、まずは知り合いから済ませておきたかったのである。


 いないかなーと探し回っていると、離れたところで男性プレイヤーが地面にうつ伏せに倒れており、大鎌を持ったメイド服を着た女性プレイヤーがヒールの高い靴で頭を踏みつけて見下ろしていた。

 こんな堂々と何をやっているんだと目を逸らそうとしたが、男性を踏みつけているのがリタであることに気付いて驚愕する。

 本当に何をやっているんだと思っていると、男性プレイヤーがポリゴンとなって消える。彼女から手を出すとは思えないし、何かされたのだろう。


「リタさん、こんにちわ」

「おや、ヨミ様にノエル様、ヘカテー様。こんにちわ」


 大鎌をしまったリタがカーテシーをする。

 リタはゲーム内ではメイドロールプレイを徹底しているため、メイド服のままかとちょっと残念に思ったが、よく見るといつものメイド服とデザインが違う。


「三人ともいらしていたのですね」

「まあね。で、今何してたの? はたから見たらリタさんが女王様にしか見えなかったけど」

「あぁ、お恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね。ただ、先ほどの殿方がちょっとしつこく付きまとってきたので、お掃除をしたまでです。このイベント中であれば、PKをしてもPKにはなりませんので」

「こういうイベントだし浮かれちゃうのかな。そう言えばフレイヤさんは?」

「もうじき合流する予定です。……あら、噂をすれば」


 リタがヨミの後ろに目を向けたので振り返ると、そこには誰もいなかった。


「ひゃあ!?」


 もしやもう少し離れた場所にいるのかと思った瞬間、突然後ろに柔らかいものが当たりいい匂いがすると同時に、両目が塞がれる。


「嘘ですよ。『トリックオアトリート』」


 耳元に口を近付けて囁くように、ものすごく色っぽい感じで言われてぞくぞくと震える。


「い、今ポイント持ってなくて……」


 なんでこの人のゲーム内での所作はここまでいちいち色っぽいんだと突っ込みつつ、ヘカテーにポイントを譲渡してしまっているのでポイントがないと言うと、着ている服の感触が変わる。

 そこでぱっと両手を放されて視界を確保し振り返ると、サキュバスコスに変貌したリタがいた。

 ヨミが着ていたデザインのものがそのままリタのサイズに合わせて変化しているだけで、先ほどノエルにも着せた時にすさまじい破壊力を発揮していたが、リタはそれの比じゃなかった。


 周囲から男性プレイヤーの視線が面白いくらいリタに集中するのが分かる。

 リタもスタイルはいいが、ノエルほどの大きさはない。しかし、一個上だとしても同じ女子高生だと言うのにあまりにも溢れ出る大人の色っぽさに、体のラインがくっきりと出るサキュバスコスが合わさり、なんか特効兵器みたいな威力になっている。


「リタさんにその衣装はダメでしょ……」

「そうですか? わたしは結構気に入っていますよ」

「リタさんは素でサキュバスっぽいから、すごく似合ってるけどさ……」


 一方で自分の今の格好を見てみる。

 フリルがあちこちに施された可愛らしいメイド服だ。頭のホワイトブリムの感触がちょっと落ち着かないが、自分が着てみると思ったほど露出がなくて助かる。


「イタズラで衣装交換できるというのは楽しいものですね。これで後でフレイヤ様をからかってあげましょう」

「あまりやりすぎないようにしてあげてね」


 以前もリタにからかわれて真っ赤になって泣きそうになっているフレイヤを見たことがあるので、あまりやりすぎないようにと釘を刺す。

 しかし返って来たのが妖しい笑みだったので、多分後で真っ赤になって壁際まで追い詰められているフレイヤが見られるかもしれない。

 まだ姿を見せないフレイヤに心の中で南無と合掌しておき、引き続きかぼちゃ町を練り歩く。


 美琴と早く合流したかったが、モデルの方の撮影にちょっと問題が起きたため少し遅れると言う旨のメッセージを受け取っている。

 ならばアーネストたちはどうだとメッセージを送るが反応がなく、フレンドリストを見る感じインしているので、どこかをほっつきまわっているのだろう。

 人が一番集まりそうな場所はどこだろうとマップを開き、中央広場当たりならアーネストとかがいそうだなと、全員でそこに移動することにした。



「あ゜ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 道中でゼーレとフレイヤと合流し、知らないプレイヤーに襲われて反撃でクリティカルで撃退したり、いきなりポイントをあげると言ってきたり、わざとポイントがない状態で来てヨミにイタズラを仕掛けられたい願望を持った変態が来たりして、ポイントをちょっとずつ溜めていった。

 結局アーネストは中央広場にいなかったので、しつこくメッセージを送り続けることでやっと返事が返って来た。

 どうやらかぼちゃの町の最西端に大きな館があるらしく、そこがちょっとしたダンジョンになっているのでそこに潜っているとのこと。


 なんでもっと早く教えてくれなかったんだと愚痴をこぼしつつ全員でそこに足を運び、意気揚々と館の中に足を踏み入れてから一分後にこの悲鳴である。

 自分でもどうやって出したのかよく分からない変な悲鳴が口から出た。


『オキャクサン! オキャクサン!』

『たくさん来た! おもてなししなきゃ!』

『あはははは! お菓子くれないと悪戯しちゃうよ!』

『美味しそうな匂いがする。この吸血鬼から美味しそうな匂いがたくさんする』

『ご馳走持ってる! ねえねえ、ご馳走頂戴?』


 アーネストがいると言うこの館。町の隅の人気のないところにあり、周りがちょっと不気味で、今日はハロウィン。これだけ条件がそろっていれば、想像することなんて容易かっただろう。

 ここはいわゆる、ゴースト系エネミーしか湧かない限定ダンジョンだったのである。


「来るなあああああああああああああああああ!?」

『ご馳走! ご馳走!』

「ぎゃああああああああああああああああああ!?」

『あはははは! 変な声! 変な声! もっと聞かせて!』

「いやああああああああああああああああああああああ!?」


 ヨミの周りに群がってくるゴーストたち。それをMP消費度外視の強力な魔術を連射することで追い払うヨミ。

 しかし魔術だからと無条件でゴーストに効くわけではなく、特効である浄化系や神聖魔術はヨミ自身にも特効なので取得は不可能。

 追い払っても何度でも周りに群がってきて、その都度悲鳴を上げる。

 ヨミはマイナス値カンストしているレベルでホラー耐性のない、ホラーよわよわな女の子なのである。


 しかもこのゴースト、所持しているトリートポイントに引き寄せられているようで、リスナーから献上されたことでポイントが一番多いヨミの周りに一番多く集まっている。

 あまりリアルすぎるとダメな人はガチ泣きするからか、ある程度はデフォルメされてちょっと可愛らしい見た目にこそなっているが、真にホラーダメな人はこれでもアウトだ。


「ヨミさんがここまで悲鳴を上げるの珍しいですね」

「いつもは頼りになるんだけど、ホラーは本当にダメだから」

「リタと同じですね」

「え、リタさんホラーダメなの!?」

「……ノーコメントで」

「そんな雑談してないで助けて!? へるぷみー!?」

『お菓子どこにあるの?』

「触るなあああああああああああああああああああ!?」


 ぶんぶんとブリッツグライフェン(両手斧モード)をぶん回して追い払う。物理性能なんてゴーストには完全無効であるため、ゴーストからすれば変な動きをする面白いやつ程度にしか認識されていない。

 なので何度追い払ってもまとわりついてくる。悪意はなく攻撃してくる様子もないが、プチパニック状態のヨミからすればまとわりつかれること自体が攻撃みたいなものだ。


「なんだなんだ、随分と賑やかじゃないか」

「そんなこと言ってないで助けてあげようよ。ヨミちゃん泣きそう、ていうかもう結構ガチ泣きしてるよ」


 螺旋階段から降りて来たアーネストたちが姿を見せ、顔を真っ青にして泣きながらゴーストを追い払っているヨミを見て笑う。


「あの魔王がゴースト相手に泣いている様はもっと見てみたいところではあるが、後で恨まれそうだしな。イリヤ、頼んだ」

「はいはい。……『パージレイン』!」


 イリヤがぶつぶつと呪文を唱えた後、対ゴースト特化魔術の神聖魔術が放たれる。

 正確な操作で浄化の雨はゴーストだけを撃ち抜き、この世のものとは思えない絶叫を上げて蒸発して消える。


「うわあああああああん! ノエルぅうううううううううううううううう!」

「よしよし、怖かったねー。もう大丈夫だから、思う存分お姉ちゃんに甘えちゃっていいからねー」


 付きまとわれていたゴーストから解放されたヨミは、ガチ泣きしながらノエルに飛び込む。

 それを受け止めたノエルは、慈愛の笑みを浮かべながらよしよしと頭を撫でて慰めている。


「ちょうどいいタイミングだと思ったが、全く使い物にならないなこれ」

「ホラー耐性ない人にはあれちょっときついんじゃない?」

「だがヨミの殲滅力も必要だ。……それに、ヨミの悲鳴が配信に乗っかってから、リスナーがヨミを求めだしているからな。連れていくほかないだろう」

「兄さんもなんだかんだで鬼畜だよね」

「も、とはなんだ。私は別に、ライバルがホラーで泣き叫んでいる様が見たいわけじゃないからな」

「あー……。その、アーネストさん、ここには一体何があるのですか?」


 本来であればヨミが聞くところだが、使い物にならないのでフレイヤがアーネストに聞く。


「この館の奥の方に、地下室への階段があってな。そこを下っていくとかなり広い空間に出るんだ。そこにはアンデッド系のエネミーが大量にいて、倒すとポイントがもらえるから殲滅していたんだが、あまりにも数が多い。その空間の奥の方にも何かデカいのが見えるし、私とイリヤだけじゃクリアできそうにないんだ。そこにヨミからしつこくメッセージが来て、丁度いいと思った次第だ」


 淡々と説明するアーネストの言葉に、ヨミがびくっと体を震わせる。

 アンデッド系エネミーが大量にいる。奥の方にデカいのもいる。想像するだけで体が震えあがる。


「……ボク、町に戻ってもいい?」

「ダメ。ヨミちゃんも行こ?」

「やだああああああああああああああああああ!!!」


 逃げようとするが、STRが上のノエルからは逃れられない。

 お姫様抱っこさせられてしまい、じたばたとあがくがあまり暴れるならまたゴスロリファッションショーを開くと脅される。

 しかしアンデッドを見るくらいならそれのほうがいいと言ったが、なら頑張ったらご褒美をあげるとちょっとだけヨミの顔が首の近くに来るように抱き寄せてきて、数秒の葛藤の末に了承した。



「ア゛ー……」

「ヴゥ……、ヴア゛ァ……」

「ア゛ヴー……」

「消し飛べえええええええええええええええええええええええええええええ!」


 ずり……ずり……と足を引きずりながら迫ってくるグール……ではなくゾンビ。どっちも変わらんだろと思ったが、ハロウィン期間中なので読み方がゾンビに寄せられているようだ。

 そんなゾンビの大軍がぞろぞろとヨミたちの方に迫ってくるが、ブリッツグライフェンを大砲形態にしてフルバーストの『雷禍レビン雷砲撃レールキャノン』をぶっ放して、前方をまとめて殲滅する。

 溜まった熱をバシュゥウウウウ! と排熱してから斧形態にして、それを地面に何度も叩きつけることで衝撃からエネルギーを生成し、一定ラインを超えてくるゾンビは『クリムソンドレイク』で粉微塵にする。

 そしてエネルギーが溜まったら、また大砲に切り替えて全ぶっぱを繰り返す。


「よっぽど近付かれたくないんだな」

「ヨミ様のお気持ちはよく分かります。あんな汚らわしいもの、寄ってほしくありませんもの」

「道理で、リタも遠距離武装を使っているわけだ」


 ホラーダメ組のヨミ、リタ、ヘカテーの三人は徹底して遠距離攻撃を行い、残りの大丈夫組は前線に出て自分の得物でゾンビを倒していく。

 アーネストは剣なので首を斬り落としているが、ノエルとイリヤは打撃攻撃がメインなので、フィルターがかかりグロテスクな部分はダークゾーンに包まれているが、肉が叩き潰される音はそのままだ。

 それが聞こえてくるたびに背筋をぶるりと震わせて、ブリッツグライフェンを地面に叩きつける腕に力が入る。


「せっかく素晴らしい武器があるのだから、それで殴りに行けばいいだろうに」

「絶対に嫌だ!」

「だが自分から殴りに行けば、早くここから出られるぞ。あとここには大量のゾンビがいるし、ストックの確保ができるかは不明だが可能ならずっと奥の手を使えると思うぞ」

「……そうか、そうだね。自分から殴り殺しに行った方が、早く終わるよね」


 スン……と真顔になったヨミ。瞳にはハイライトがなく、それを見たアーネストがひくりと頬を引きつらせる。危うく笑いそうになったのを必死に堪えた的な意味で。


「結局は物理なんだ……。物理こそすべてを解決する……。パワーイズパワーなんだよ……」

「アーネストさんどうするんですか。ヨミさんが壊れちゃいましたけど」

「……くっ、くふふ……。だ、ダメだ……! 笑いが、堪えられない……!」

「……素晴らしい性格をしていますね。女の子が怖がっていると言うのに」


 ゆらりと幽鬼のように前に出ると、自分の血を燃やしながらMPを血液に変換する魔術を発動させ、高い自己回復能力でHPとMPを減る速度よりも高くする。

 一度ブリッツグライフェンを背中に集めてから、斬赫爪を取り出してそれにパーツをまとわせ、そこにさらに影をまとわせて間合いを拡張し、開幕斬赫爪の固有戦技を発動。

 地面を踏み砕く勢いで踏み込んでから前方を薙ぎ払って一気に殲滅。どしゃどしゃと地面に切り伏せられたゾンビが倒れ、ヨミの脚を掴もうとした奴は『ブラッドドレインスキューア』で串刺しにされる。

 アンデッドで命を持たないのでストックは増えなかったので舌打ちをし、残りの多くのゾンビに向き直る。


「おいコラゾンビども。ボクはさっさとこんなところから出たいんだ。命のストックも増やすことができない腐乱死体なんかが、ボクの足を止めるんじゃない!」


 キレたヨミが全速前回フルスロットルで暴れ回り始める。細かな姿勢制御なんて知ったことかと直線的に動き、無理に大鎌を振るのではなく自分が進む速度に任せて刃を置き、そこにゾンビを巻き込んでいく。

 一体一体動きが遅くかなり弱いので、秒間で数体、多い時は十体以上を倒していく。

 何度も斬赫爪を振るい、付属しているブリッツグライフェンが衝撃からエネルギーを生成していき、満タンになると斬赫爪を覆うようにブリッツグライフェンを接続して、大鎌形態のフルバースト『雷禍レビン大鎌撃グリムサイズ』で、巨大な雷の大鎌で一気に刈り取る。


 ヨミが前線に加わったことで殲滅速度が爆発的に上昇し、見る見るうちにゾンビが減っていく。

 途中でスケルトンなんかも加わったが、余っているパーツでブーツを作りたまったエネルギーを使ってただの蹴りに衝撃波を追加して粉微塵にする。

 満タンまで溜まれば再び大鎌撃が繰り出され、三十分もしないでスケルトンとゾンビは壊滅する。


『よくぞ我がしもべ共を倒した。ならば、この我が直々に、』

「ちぇすとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

『ぐおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』


 奥の方で鎮座していたぼろぼろのローブのようなものを着た巨大な骸骨、動き出したことで『リッチ』であることが判明するが、そんなもん知るかとエネルギーをちょい消費してカッ飛び、顔面目掛けて『雷霆ケラウノス脚撃ヴォーダン』を叩き込んで地面にはっ倒す。


『な、なんだ貴様!? 不意打ちとは何と情け、』

「『イクリプスデスサイズ』!」

『ぶっはああああああああああああああああ!?』


 容赦ない極大魔術の一撃た再び顔面に叩き込まれる。この館ダンジョンのボスのようで、ちょっと亀裂が入るだけで大したダメージは出ない。

 だが、ダメージが入っているなら必ず倒せる。完全に殲滅モードがオンになったヨミは、極端に偏りつつある思考でそう考えながらがすがすと顔面を何度も蹴り付ける。


「おい、くそデカ骸骨。お前がどんな思いでここにいるのか知ったこっちゃないが、ボクに言わせりゃ、死人がいつまでも現実にいるんじゃねーよ」


 10秒チャージ血液パック消費したMPを回復してから、頻繁に使うため詠唱ストックしておいた『血濡れの殺人姫』を発動し、全身が真っ赤に染まり上がる。

 筋力が上がり、蹴り付ける威力も上がったのでエネルギーの蓄積も早まり、半分ぐらいになったので右足を真っすぐ上に振り上げて、エネルギーを全消費する。


「もう一度棺の中にぶち込んでやるよ!」


 四股を踏むように振り落とされた右足で顔面を思い切り蹴り、ぐっと膝を曲げた状態から跳躍して天上に足を付け、それを蹴って真っすぐ墜落するように大鎌を叩きつける。

 それがリッチとヨミの戦いのゴングとなり、アーネストたちはヨミの援護に回った。

 四分後には、暴力的な手数と火力によって頭蓋が砕かれあばら骨が粉砕され、その下にある弱点を蹴り壊されたリッチが、問答無用と言わんばかりにさらさらと崩れ去っていた。


 そしてヨミは、ポリゴンとなって消えていくリッチを見ながら呟いた。


「次のハロウィンは、絶対にここに来ない」


 それだけ言って、真っすぐノエルの方に走って行って癒しを求めた。

 ちなみに、リッチ撃破によってヨミは大量のトリートポイントを獲得し、ゴールデンジャックオーランタンの置物と、初期衣装のサキュバスコスと、コウモリの髪飾り、パンプキンパイにパンプキンプリン、パンプキンクッキーをたくさんもらった。


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次こそ新章の開始です

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