番外編 ハロハロハロウィン!

番外編 とりっくおあとりーと!

新章が始まると言ったな? あれは嘘だ(ハロウィン近いんで番外編です)

ちょっぴり未来のお話

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 十月三十一日。古代ケルトにおける新年である十一月一日、その前日で日本でいうところの大みそかに当たる日。秋の収穫物を集めた盛大なお祭りが開かれる日、というのがハロウィンの元だ。

 それが時代が進むにつれて変化していき、今では大人も子供もお化けなどのコスプレをして町を練り歩いたり、子供はジャック・オー・ランタンのバケツを持って近所を回り「トリックオアトリート」と言ってお菓子を貰うイベントとなった。


 年に一度のお祭り騒ぎ。当然ゲームもその日に何かしらのイベントを用意していることが多く、FDOも当たり前のようにハロウィンイベントが開催された。

 一日だけは短いからか、十月三十日の十二時から三十一日の二十三時五十九分までの一日半の日程となっている。


「ハロウィンイベントねえ。昔はバケツ持って近所回ってお菓子貰ったっけ」

「今の時代そういうのかなり珍しくなってるよね。その内私たちがあげる側になりそう」

「随分先の話だね?」


 FDOにログインしていたヨミとノエル。三十日も三十一日も土日休みだし、出された課題は金曜日の間に全部片付けたので暇を持て余している。

 どうしようか、何をして時間を潰そうかとギルドハウスのソファーの上でぐでーっとくつろいでいると、いきなりハロウィンイベントがサプライズ開催されると言う告知がされた。

 調べると、去年も事前告知なしでサプライズ発表されたそうだが、大盛況で終わり一年を通してまたやってほしいと言う要望が多かったそうだ。


「なになにー? 『イベント限定マップが三十一日二十三時五十九分まで登場。みんなで仮装をしてハロウィンを楽しもう!』だって」

「暇だしこれ行く?」

「行くー! あ、続きがある。『プレイヤーの仮装は、ゲーム内での行動や言動ログを参照し、自動で生成されます。もちろんご自身で用意することも可能ですのでご安心ください』。へー、運営が用意するのがあるんだ」

「ノエルは鎧着こんだ女騎士になりそうだね」

「それじゃあヨミちゃんは吸血鬼か、最近魔王ムーブするようになったから魔王様だ」


 ぶっちゃけノエルの女騎士姿は見慣れているので、もっと別のものが見たい。かといって変に露出があるようなものはやめてほしいと言う気持ちもある。

 自動生成される仮装となると、ノエルはずっと女騎士をやっているので普段のとは違う女騎士衣装が出てくるだろう。


「マップは……ワープポイントから選択できるって。早速行こうよ!」

「他に何かイベントの内容とか書いてない?」

「マップに付いたら追加説明されるって」

「ここで全部説明してくれよ」


 そう愚痴をこぼしながらソファーから腰を上げて、ノエルと一緒にフリーデンのワープポイントからハロウィン限定マップに飛んだ。

 それが、ヨミにとって中々な地獄となることを知らずに。



「おー? 女騎士じゃない?」


 マップに着くと、ノエルはいつもの騎士服からとんがり帽子の魔女になっていた。

 右手には箒が握られており、ゆったりとしたローブに体が隠されているが、それでもなお激しく存在を主張する巨乳が、ローブを押し上げている。

 てっきり別デザインの騎士になるとばかり思っていたが、これは非常にありだ。と、ヨミは考えている余裕はなかった。


「な、な、な、なんだよこれぇ……!?」


 お腹がほぼ丸見えになっているキャミソールタイプのレオタードに、二の腕辺りまで隠すロングスリーブ、普段履いているものよりも短いミニスカートに、むちむちな太ももを覆い隠すニーソ。

 普段であれば絶対にすることのないかなり際どい格好に、ヨミは顔を真っ赤にしてその場にしゃがんでうずくまる。


「わぁ……。ヨミちゃんがすごいことになってる……」

「もうやだ……おうちかえる……」

「ま、まあまあ、自分で用意したものも着ることができるっていうし、試しに普段着ているのをみてみれば?」


 言われたとおりにインベントリを開いて、普段着ているものを着ようとするが、ブブッとなるだけで着替えられない。

 ならばと他にもシズが大量に用意した、インベントリの肥やしになっているのはどうだと色々試すが、一部を除いて不可能だった。

 ちなみにその一部の衣装は、ミニスカナースにミニスカメイドである。


「着ることできるの選んでも大差ないのきついんですけど」

「まさにハロウィン限定って感じだね。ヨミちゃんは……頭に角、腰にコウモリの翼に尻尾……」

「……これさ、まさかとは思うけどサキュバス?」

「っぽいね。言動行動ログを参照に自動生成ってあったけど……ヨミちゃんのメスガキ演技を参照された?」

「んなもん参照すんなクソAI!?」


 うがー! と頭を抱えて叫ぶ。なんてものを参照してくれたんだと殴り掛かりに行きたいが、相手は運営のAIなのでFDOに存在しているはずもなく、行き場のない怒りをとりあえず近くの木にぶつける。


「はぁ……、もういいや。もうこのままでいこう。酷いようならナース服に着替える」

「どっちにしろちょっとえっちだね」

「もっとマシなものを普段からシズに作らせとけばよかった」


 絶対に言うことを聞かずに、趣味全開の際どいのとか超フリフリなものとかを用意するだろうが。

 ひとまず一息ついてから、人目に付かないよう近くにある路地裏に二人して入り込み、そこでイベント内容について目を通す。


 まず、ハロウィンイベント期間中今いる特別マップ『伽藍洞のかぼちゃ町』に着たプレイヤーには、『トリートポイント』というものが付与される。

 これはプレイヤー間で譲渡したり奪うことも可能。譲渡方法は、他プレイヤーの前で『トリックオアトリート』ということで相手の前にウィンドウが表示され、自分の持つポイントを渡すか渡さないかの選択を迫られる。

 ポイントを渡すと所持している『トリートポイント』がその分消失。ポイントがなくなったからイベントマップから追い出されると言うことはない。

 ポイントがなくなっても他プレイヤーに『トリックオアトリート』と言い、そのプレイヤーから譲渡されれば再び獲得が可能。

 PKすることで獲得可能だが、その場合マップ内に存在しているゴースト系エネミーに付きまとわれる。キルされることはなく、ただただ自分の周りに付きまとわれる。

 他にも、特定エリアに出現するエネミーを倒すことでポイントの獲得も可能であるので、頑張って探し当ててみよう、とのことだ。


 『トリートポイント』を持っていない、あるいは持っているのに譲渡しなかった場合、イタズラトリックを仕掛けることが可能となる。

 イタズラは『トリックオアトリート』と言った側が仕掛けることができ、その際はどのイタズラをするのかを選ぶことができる。

 例として挙げると、本来ならPKすることでしか付きまとってこないゴースト系エネミーを付きまとわせたり、視界の色調反転、ドキドキなランダム味のビーンズ、激辛ハバネロチョコ、衣装交換などがある。

 同じ人にイタズラを仕掛ける回数は無制限だが、同じイタズラはできない。相手側は仕返しでやられたことをやり返すことは可能だ。


 イベント終了時に『トリートポイント』の所持数を元に、運営からハロウィン限定のスキルもステータス上昇も何もないただのアクセサリーや、ギルドハウスなどに置くための置物、FDO内限定のお菓子などがプレゼントされるそうだ。


「なんだか楽しそうだね」

「確かに。でも、選択可能なイタズラで、この衣装選択は結構ヤバくない?」

「そお? 色々楽しめそうだけど」

「ボクの場合、リスナーに見つかったらやばいことになりそうでさ」

「あっ……」


 ヨミのリスナーは基本変態である。

 コメント欄でしか変態コメントをしてこないだけまだましだが、今日はハロウィン。仕掛けるイタズラの中にリスナー歓喜のものがあるので、見つかりでもしたら何されるか分からない。

 ヨミもノエルも未成年だし女性プレイヤーなので、セクハラ行動や発言はした時点でヨミたち側が通報して牢屋送りにできるが、逞しい変態リスナーのことだ。抜け穴をどうにかして見つけ出そうとするだろう。


 それに、特にヨミは今サキュバスになっているので、システム側で用意されているイタズラではなく、ヨミ本人に何かしてほしいと懇願してくる輩もいるだろう。

 ノエルに怒られるのが怖くて頻度が減っているメスガキ演技はリスナーに日々求められており、こういう時だからこそやってほしいと言う輩が出てくるかもしれない。

 以前もグランドとは関係ないレイド戦の時に、雑魚って罵ってほしいだの、ゴミ虫でも見るような目を向けてほしいだの、土下座するから頭を踏んでほしいだの欲望を隠そうとしないバカが二人くらいいた。

 キモかったのでサクッと無視していったが、今回は一人二人じゃ済まない可能性がある。


「じゃあさ、私と衣装交換、」

「絶対にダメ。ノエルがこれ着たら確実に死人出るだろうし、こんな格好をしているノエルを野郎どもに見せたくない」


 美琴直々にモデルにならないかと誘われるレベルのスタイルの持ち主だ。そんなノエルがサキュバスコスなんてしたら、男どもの視線を総なめすること間違いなしだ。

 ぴっちりと体に張り付くようにフィットしており、お腹におへそ丸見えのレオタードに超短いミニスカート。

 ノエル本人がエロいとかではなく、どっちかというとふわふわしており大人しい印象だが、それもそれで破壊力というのがある。

 夏の水着イベントの時は仕方なかったが、ああいう時以外でノエルの肌をゲーム内でも男に見せたくない。その気持ちが強く、衣装を交換しようという提案を速攻で却下する。


「やーん、私を独り占めしたいだなんてー」

「変な妄想しない。……でも、ボク自身がノエルのサキュバスコス気になるから、一回だけやってみる?」

「そうだねー。じゃあヨミちゃんからどうぞ」

「それじゃあ、『トリックオアトリート』」


 そういうと、ノエルの前にウィンドウが開き、たおやかな指でさっとトリートポイント譲渡を拒否する。

 直後にヨミの前に『トリートポイントの譲渡が拒否されました。イタズラを仕掛けることが可能です』というウィンドウが出てきて、選択可能なイタズラの中から衣装交換を選ぶ。


 特に演出などはなくぱっと衣装が交換される。

 ヨミが黒いとんがり帽子の魔女の衣装になり、ノエルがサキュバスの衣装になる。

 そして案の定、体のラインが出ない服でも主張の激しいノエルの胸は、体にぴったりと張り付くようにフィットするキャミソールレオタードのおかげで、その形をはっきりと見せつけていた。


「うわぉ……」

「こ、これ結構恥ずかしい……」


 ノエルも普段こんな格好をしないので、足をもじもじとさせながらみるみる顔を赤くしていく。

 ちょっと動くだけでふるふると胸が揺れ、ノエルにこの衣装はまさに鬼に金棒だ。もし男がこれを見たら、間違いなく昇天する。

 ヨミも思わず凝視してしまい、恥ずかしがったノエルがさっと両腕で胸を隠すが、それがまた煽情的で蠱惑的で、ほぼ無意識のうちにスクショしてしまう。


 ちょっぴり怒ったノエルが、今のヨミの姿をスクショしてから『トリックオアトリート』と言ってポイントを要求してきたので拒否し、イタズラされ返されることで元のサキュバスコスに戻る。

 そしてすぐにまたスクショされ、この姿を納められたことに恥じらいを感じて頬を赤らめた。


「……行こっか」

「だね」


 ちょっと気まずい雰囲気になりながら路地裏から出て、人が増えてきたのではぐれないようにと手を繋ぎ、「伽藍洞のかぼちゃ町」を二人で歩き回ることにした。


===

作者が勝手にやってる『勝手にQ&Aコーナー』


Q.ノエルちゃんのスリーサイズっていくつ?


A.身長160cm台で93/65/92。ヨミちゃんほどじゃないけど太ももはむちむち。


え? 癖がすぎる? 好きを詰め込んで何が悪い

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