蒼穹を駆ける金色の星に慈愛の怒りの贈り物を 11
ステラ様のイラストが欲しいという要望が(主に作者)からあったため、イラストを作りました。近況ノートへどうぞ
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『こざかしい羽虫共がぁ!!』
ステラを守るためにかなりの数のプレイヤーが散ってしまい、残りは100人いるかどうかとなっているが、ステラの身の安全はエマが守っているという安心があるからか、残っているプレイヤーが総出でゴルドフレイの周りに群がる。
剣を叩き付け、魔術をぶつけ、弓矢を放ち、銃弾を放ち、少しでも意識を逸らすかダメージを入れようと奮闘している。
そのあがきともとれる行動が気に食わないらしいゴルドフレイは、激しい怒りの籠った声で叫びながら尻尾を振り回し、前脚を振り払い、ブレスで消し飛ばす。
シェリアが行動を把握してタイミングよく指示を出しているので被害は最小限に抑えられている。
だが向こうは向こうで優れた指揮能力を持っているのがいると分かっているのか、未来まで予測されて指示を出されているならそれを超える速度で攻撃すればいいと言わんばかりの速度でめちゃくちゃに攻撃してくる。
ただでさえ少なくなっているプレイヤーがどんどん減っていき、これでまだ正真正銘の本気形態にまだ移行していないのかと、ちょっとした絶望すらある。
「マジでアンボルトは竜王最弱格だったんだな……!」
眷属ゴルドニールと戦った時点でボルトリントと大きな差があったので、あれで本当に最弱格だったのかと分かっていたが、こうして戦うと本当に再認識させられる。
張り付くように攻撃していたプレイヤーを蹴散らした後、ステラを抱えるエマを見つけたのかヨミたちを無視してフィールド端にまで行こうとしたが、回復用魔導兵装か何かを使ったのか復活したフレイヤの特大火力を受けて足止めをされる。
そこにノエルが自分を砲弾として電磁加速して直線的に突っ込んでいき、シュラークゼーゲンを胴体に叩き込んで鱗を砕く。
「ぎゃっ」
いくらかHPが減り、同じ個所に戦技を叩き込もうと大きくメイスを振りかぶったところで、ゴルドフレイが高速回転しながら尻尾で殴り飛ばす。
短い悲鳴を上げて吹っ飛ばされたノエルは、数度地面をバウンドして滑りながら止まる。筋力極振り構成であるためHPと耐久が低く、一撃でHPが消失している。
「アスクレピオス!」
フレイヤが空間凍結の十字架をゴルドフレイの足元に投げて突き刺し、その場に固定してからノエルの方に駆け寄り、蛇が巻き付いている翼の生えた杖のようなものを取り出して、それをノエルに向けながら起動する。
淡い緑色の光がポリゴンになっていくノエルを包むと、ポリゴンになっていた手足が巻き戻る様に再生していきHPを全快させる。
「ぷはっ!? た、助かりました!」
「お気になさらず! ですがこの杖は未完成品で、そう何度も使えるものじゃない上にこれ一本しかないので、気を付けてください!」
「あいさー!」
そんな蘇生能力まであるのなら最初から使えと言いそうだったが、未完成品なら仕方がないと飲み込む。
むしろ未完成で蘇生までできるのかと、冷や汗を垂らす。
「もう流石にこれを使うしかないですね! 『
どこかから大きな白い柱を取り出すと、それに手を触れながら言の葉を紡ぎ、柱の外表が変形しながらフレイヤの体を覆って鎧になり、残った部分が白の螺旋を描くようなランスと大盾になる。
対抗戦決勝で序盤から見せてくれたフレイヤの兵装だ。竜王戦作戦会議中に教えてくれたが、アテネの戦鎧は現時点でのフレイヤの最大火力だそうだ。
代わりに消費するMP量がすさまじく、短期決戦になってしまうのがネックだと話していたが、背後にMPタンクを五つほど付随させているので短い時間制限はある程度は解消されているようだ。
地面を踏み砕きながら爆速突進していくと、空間凍結から抜けたゴルドフレイは見えていると大きく口を上げて丸呑みしようとする。
「随分と学ばないですね! 『アイギス』!」
左手の大盾を前に突き出して起動すると、堅固な防御結界が正面に張られてゴルドフレイの噛みつきを防ぐ。
ギリギリと拮抗するが70メートルの巨体の押し込みにまで拮抗はできずフレイヤが後ろに押されて行くが、攻撃自体は防げている。
どんな防御性能だよと言いたいが、フレイヤがああしてタンクとして前線を張っているのでヨミは斬赫爪とそれにまとわせているブリッツグライフェンの固有戦技を同時に発動させながら接近する。
『何度やっても無駄だぞ、吸血鬼の小娘ぇ!』
フレイヤからいきなりヨミの方に向かって大きく口を上げて攻撃してくるが、ヨミは焦らない。
「何度やれば学習するのですかねあなたは!」
ヨミとフレイヤの位置が入れ替わる。既に何度も見せているはずなのに、二人の位置を入れ替えることを忘れているのか学習していないのか、面白いくらいに引っかかってくれる。
ヨミに向けてしてきた攻撃をフレイヤが入れ替わることで再び受けて、フレイヤがいた位置に移動したヨミが真下から斬赫爪に赫の腐敗とブリッツグライフェンの雷をまとわせながら逆鱗を狙う。
ギリギリのところで首を大きく動かされてずれてしまい、ただひたすらに硬い首の鱗に当たり、一定時間が過ぎたのか体にエネルギーをまとい直して防御を固め始める。
「もうこれ以上時間はかけられませんから、その防御は禁止ですよ!」
「これ以上硬くなるんじゃないよ金ぴかトカゲ!」
『誇り高き竜王をトカゲと呼ぶな吸血鬼ぃ!?』
「似たようなもんだろ!? 体がでっかい爬虫類じゃないか!」
全消費したエネルギーの確保のために、弱点を狙って手数を減らすよりも全身をまんべんなく殴りまくって蓄積を優先させる。
「ははは! その通りだな! 寒い地域じゃ活動もできない変温動物なトカゲじゃないか!」
回復に時間がかかっていたアーネストが飛んでくる。本気形態の
神聖騎士は一日に何回も使用できるにはできるが、再使用するには一時間以上のインターバルが必要になるため、実質一戦闘の一回しか使えない。
グランド戦は必ず長期戦になるので、タイミングと運がよければ二度、三度と使えるそうだが、本気状態が解除されるとプレイヤー側のダメージソースの一つが減ってしまう。
可能ならアーネストの本気が維持されている間に決着を着けたいが、それにはやはりこの防御破壊をしなければいけない。
逆鱗を攻撃すると制御が一時的に乱れて防御が張れなくなっているので、逆鱗を破壊してしまえば完全に制御を失って完全に防御が張れなくなるのではないだろうか。
多くのプレイヤーたちがその弱点を狙い続け何十発も攻撃を叩き込んでいるので、逆鱗の耐久も大分減っていることだろう。
『ヨミ、逆鱗破壊を狙うつもりだな? 俺も手伝うぞ』
「私もー!」
シエルがパーティーチャットでヨミが何を狙っているのかを察したのかそう言って来て、近くまで来たノエルもシュラークゼーゲンを振りかざしながら賛同する。
「わ、私もお手伝いします!」
「逆鱗見つけたのうちだし、何もしないわけにはいかないからねぇ」
「俺はタンクだからあそこまで行けないけど、可能な限りヘイトを買ってみるよ」
ヘカテー、ゼーレ、ジンも参戦し、このやり取りを聞いていたシェリアがメインアタッカー陣のアーネスト、フレイヤ、リタ、美琴、に通達する。
「ではわたしが前衛となり、ジン様とともにヘイトを買います。あわよくば、逆鱗に一撃を入れようかと」
「無茶はしないでください。あなたのスキルで復活できるとはいえ、大幅な弱体化が入るのですから」
「その時は、フレイヤ様がお願いします」
「間に合えば、助けますよ」
こんな戦場でもやはりメイド服なリタが、大鎌を携えて疾走する。彼女の固有スキルを発動しているのか、FDO最速の称号が伊達ではないことを証明してくれる。
ゴルドフレイも顔の周りをあの速度で動き回られると鬱陶しいようで、人が羽虫を払うかのように腕を振り回している。
ジンがリタの下へ『クイックドライブ』で瞬間移動してから『タウント』で一旦リタからヘイトを引き剥がし、視線が逸れたところをリタが鋭い斬撃を顔面にお見舞いする。
なんだかんだであの二人の相性がいいのではないかと即席の連携を見て思い、あの二人がヘイトを買っていくれている間にヨミたちで逆鱗を破壊しようと動く。
もう既に、フレイヤから借りているMPタンクの中身は空っぽになっているため、自分の血液を消費する『ブラッドイグナイト』とMPを消費して血を作る『ブラッドクリエイト』の平行発動を止め、『ブラッドエンハンス』、『フィジカルエンハンス』、
『ブラッディアーマー』の三つを使って強化する。
そこにシエルが逆鱗破壊チーム全員に
奥の手も使ってしまいたいが、ストック数が死にすぎたせいで残りが四個とかなり少なく、『ソウルサクリファイス』は直前まで起動していたバフや強化魔術を弱体化解除とともに全部再起動させるため、『血濡れの殺人姫』を使ってしまったら二分間は連続して使い続けなければいけない。
もしヨミもエマと同じようにストックを十五個も持つことができていれば、今ほど時間を気にせずに思い切りやっていたかもしれないが、ないものねだりをしても仕方がない。
「手始めに……ステラさん! 一発でかいのかましちゃえ!」
エマとステラの位置を把握した後で射線が被らないように行動し、大きな声で叫ぶ。
アスカロンを抜いて上段に構えたステラは、その剣身から銀色の光の柱を放ち、渾身の力を込めて振り下ろす。
特大の銀光の奔流の斬撃が真っすぐゴルドフレイに向かって行き、気付いた奴が回避しようとしたところにリタが超加速して左目に大鎌を突き刺して行動を阻害する。
片目を失い悲鳴を上げている間に『
勇気をもって戦いに自ら参加したステラのその一撃を合図に、ヨミたちは逆鱗を破壊してやろうと互いの最大出力の攻撃をお見舞いする。
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