金色の王を知る者がいる場所へ

残念ながら四つ巴はテンポの都合上スキップです

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 銀月の王座、夢想の雷霆、剣の乙女、グローリア・ブレイズの四大ギルドのマスターが、四つ巴の戦いをしていると掲示板で一気に注目を集め、すさまじい衆人環視の中で激戦を繰り広げ、三人揃ってフレイヤの超火力兵器で吹っ飛ばされフレイヤの勝利で幕を下ろした後。

 四人は一緒にバトレイド内にある喫茶店で一息ついていた。


「アーネストたちと戦ってからと言うもの、申請マッチで普通にマッチしなくなったんだけど、どうしてくれんの」

「私だけのせいじゃないだろそれ。ヨミは元から連戦連勝の無敗記録を打ち立てていたし、ランダムマッチやレートマッチはともかく申請マッチで勝負を挑みたがるプレイヤーはそういないだろ」

「それもそうだけど、普通の戦いたいプレイヤーが申請しなくなった代わりに、変態が来るようになった」

「それは……決勝戦でヨミさんがやったあの、めすがき? のせいでは?」

「ごふっ」


 フレイヤからの強烈な言葉の右ストレートでクリティカルを受け、テーブルに突っ伏す。

 確かのあの一件以降、配信すればメスガキを所望する変態紳士が集うようになってきたのは事実だ。

 一部の人にそれがぶっ刺さるのは分かる。クラスの男子の一人が、生意気で調子に乗っているような女の子が好きだと宣言しているくらいだし、ネットで調べ物をしている時にちょっと触れただけで別のサイトに飛んでしまう広告にも、時々メスガキ系のアダルト漫画のものがあったりもする。


 ヨミは見た目清楚な中身戦闘狂で好奇心がちょっと強めな女の子で、勝つためなら自分の瘴気が削れて後で発狂するような行動も、厭わないわけではないがやるし、相手の反応がどんなものなのかが気になるからやる。

 根っからのメスガキではなく演技であるため羞恥心100%で、それがまた無理をしてやっている感じがあっていいらしく、変態からの人気を集める理由となっている。


「ボクはもっとこう……ボクのプレイヤースキルが目当てで配信に来てくれるような配信者になりたかった……」

「可愛い女の子ってだけで人は集まるよ? 私もフレイヤさんも、きっかけこそFDO内で大暴れしたことでリスナーが増えたけど、最終的に私たちだから来るようになった感じだし」

「ルナさんは両立させていましたね。小さくて可愛い女の子だからと見入ったら、派手な魔術のレパートリーで魅了して引き込んでましたし」

「私のギルドにも君のファンがいるが、どうにも君の人気獲得の一助になった存在がいるらしいぞ。なんでも、女の子の配信者の初配信には絶対にやってくる謎の人物がいるらしい。そしてその大部分が、必ず後々大物配信者になるそうだ」

「あ、私もそれ聞いたことある。なんだっけ、新人の美少女配信者の初配信は何があろうと絶対に視聴する紳士さん、だっけ?」

「何そのちょっと頭悪そうな名前」

「文字通り、女の子の初配信を決まって視聴する謎の人物ですよ。かなりの数の女性配信者が生まれるのに、決まっているから分身でもしているんじゃないかと噂されています」


 何気に気になる話だ。もしかしたら自分の初配信にいるかもしれないので、時間がある時に一番最初のアーカイブを見返してみることにする。

 注文していたケーキとコーヒーが運ばれてきたので、テーブルに突っ伏していたヨミは体を起こして、自分の前に置かれたいちごショートケーキに目を輝かせる。


「……戦闘中はまさに戦闘狂そのものだが、こういう時は年相応というか、かなり幼く見えるな」

「分かるー。ヨミちゃんちっちゃくて可愛いから、スイーツでこんな顔するとたくさんあげたくなっちゃう」

「そういう美琴さんも、結構似たような表情をしていますよ」

「え、嘘!?」

「本当だよ、美琴さん。モデルさんで体形維持が大変だから控えていても、本能には抗えないんだね」

「言い方もうちょっとどうにかしようね?」


 美琴が注文したのはガトーショコラとブレンドコーヒー、フレイヤはレアチーズケーキと紅茶、アーネストはブルーベリータルトケーキとエスプレッソだ。

 時刻は午後三時頃。おやつの時間に丁度いい。


「そろそろ真面目な話をしようか。金竜王の方はどうなっている?」


 適当に談笑しながらケーキを食べ、紅茶やコーヒーをお替りしたところでアーネストが真剣な声音で言う。


「アーカーシャのマスターのシンカーさんが、自分のギルドを総動員して捜索してくれてるけど、中々見つからないって。行動パターンを割り出そうにも、目撃情報が急に減ったから割り出しようがないって」

「うちも捜索特化のメンバーにお願いしてはいるけど、あまり芳しくないわね」

「……皆さんが竜王捜索に勤しんでいる中、私は魔導兵装作成に勤しんでいました」

「戦力の増加も大事な準備だよ、フレイヤさん。フレイヤさんの魔導兵装の火力は戦いにおいてとても重要だから」

「そう言ってくださると助かります、ヨミさん」


 相変わらずゴルドフレイ捜索は難航している。

 ランダムエンカで遭遇回数と目撃情報数はぶっちぎりで多いのだが、飛んでいる場所が目視できないほどのはるか上空であること、遭遇できたと言ってもほぼ奇襲みたいな攻撃で反応できずに即死することもあり、あくまで確認されているグランドの中で一番多いと言うだけだ。

 ステラが来てからはアンブロジアズ魔導王国内の空を飛び回っているとシンカーから教えられたが、ここにきて姿が見えなくなった。


 キークエストをクリアした際に『金色の王は摩天の頂にて挑戦者を待つ』とウィンドウが表示されたので、そこに行ったのではないだろうかと発言してみたが、美琴もかつてソロ討伐した際同じ文言が出たと言い、亡霊の弾丸がゴルドフレイと戦ったのはその後の話なので、引きこもったわけではなさそうだ。

 ではなぜここにきて見えなくなったのか。考えられるとしたら、眷属を生み出すために一度姿を見せなくなった可能性だ。


 眷属の竜は王によって一週間後に再び生み出される。それを生み出している間は動くことができず、襲われる危険のない安全な場所にいるのではないかと推測する。

 四人とも考察ガチ勢ほど考察できるわけではないので、あとでシンカーに連絡を取って彼女の意見も聞くことにする。


「今のところ、金竜王について詳しいNPCはステラさんと竜王が生まれた頃から生きているクロムさんですよね?」

「マーリンもある程度は詳しそうだけど、直接見たステラさんと何百年も生きてるクロムさんよりは詳しくないだろうね」

「……一人、もしかしたら彼女ら以上に詳しい人物がいるかもしれない」


 顎に手を当てて少し考え込んでいたアーネストがぽつりと零す。


「マジ?」

「あくまでもしかしたら、の話だ。三人とも、魔王国ナイトレイドという言葉に聞き覚えはあるか?」


 美琴とフレイヤは頭を左右に振り、ヨミも同じようにしようとしたところでぴたりと止まる。

 そう言えば、以前マーリンがステラと話した時に、竜王がどんな基準で国を滅ぼしにかかっているのかの推測を話して、その中に確かそんな名前の国があったはずだ。


「魔王国ナイトレイドは、かつてはノーザンフロスト王国とここアンブロジアズ魔導王国に隣接していた巨大な魔族の国だ。魔族と人間の間にある確執は説明するまでもないだろう。魔王国は私がいる国とこの魔導王国と幾度となく戦争を繰り返していたが、数百年前に金竜王によって滅ぼされた」

「そうだったんだ。それで、ゴルドフレイに詳しいかもしれない人って言うのは、その生き残りってこと?」

「あぁ。私はあるイベントでノーザンフロスト王国の王族入りを果たしていてね、時々城に戻らないといけないんだ。いつだったか、数か月ぶりに城に戻った時に侍女たちが『この王国内に魔王国の生き残りがいる』と噂話をしているのが聞こえてね。気になってイリヤたちに捜索してもらっていたんだ」

「結果は?」

「ノーザンフロスト王国の端っこの方、かつてナイトレイドとの国境付近に、小さな村落を確認。そこに、銀髪の吸血鬼を筆頭に数十名もの魔族が生活しているのを確認したそうだ。銀髪の吸血鬼は、」

「魔族の中でも最も高潔で、純血な吸血鬼。真祖吸血鬼、つまりは魔族の王族」


 言葉を遮り、ヨミが言う。

 アーネストは満足気な笑みを浮かべるとこくりと頷く。


「基本は人と敵対しているが、私たちには君がいる。彼らと同じ、銀髪の、純血な真祖吸血鬼がいる。ここは一つ、彼らに会いに行くのも手じゃないか?」


 アーネストのその提案に、ヨミ、美琴、フレイヤは一度顔を合わせてから頷く。

 そうと決まればと、残っている飲み物を飲み干して店を出て、ノーザンフロスト王国へ行く準備をすることにした。

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