剣聖 vs 魔王 1
ヨミちゃんシーン三連チャンじゃ!
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フレイヤと美琴が本気で戦い、そして双方ともに大打撃を受ける少し前。
アーネストによって転移し二人きりになったヨミは、全力をもってアーネストと戦い、アーネストもまた全力をもってヨミと刃を交えていた。
元は周囲に花壇があり景観のいい場所だったのだが、月明りを受けて本来の強さを取り戻し、そこに様々なバフを重ね掛けしたヨミと、自身の強化スキルとそのほか強化系の魔術やらバフやらで対抗したアーネストとの激しい応酬によって、地面は抉れ、斬り裂かれ、粉砕され、美しかった景観は見るも無残な荒廃しきった戦場と化している。
「ゼアァ!」
裂帛の気合と共に、剣に魔術を乗せた上で放たれた『ヴォーパルブラスト』を、ヨミが最小の行動で回避して、髪の毛を少し散らしながら同じく『ヴォーパルブラスト』を胴体に向かって放つ。
アーネストはその突きを、戦技が強制キャンセルされるほど体を動かすことで回避し、ヨミはその僅かな硬直を逃さずに左手の剣で初動を揃えて硬直をキャンセルして『サベージイレイザー』で斬りかかる。
硬直を終えたアーネストが瞬時に初動を揃え、片手剣戦技90で覚える戦技『デイブレイク』で下から迎撃してくる。
魔王と剣聖の膂力とシステムのアシストを受けた剣が衝突し、とても武器同士がぶつかって出るようなものではない音を響かせ、地面が捲れて衝撃でひびが地面に入る。
「ハハッ! 私の膂力に純粋に力で返してきたのは君が初めてだよ!」
「美琴さんとかフレイヤさんがやってそうなもんだけどね!」
「美琴は技で受け流すし、フレイヤは防御がバカみたいに硬いからね! だから、こうして純粋な力のみでここまでやり合えることがここまで楽しいとは思わなかった!」
ギリギリと鍔迫り合いをして、互いに歯と牙を剥き出しにする。
とても剣聖と呼ばれるような美青年がするような顔じゃないし、魔王と呼ばれてこそいるが見た目清楚系の美少女がするような顔じゃない。
すぐに分かったことだが、アーネストは極度の戦闘狂だ。女性が見惚れるレベルのアマイマスクと金髪碧眼(現在金眼)高身長、おまけにイケボ。つくづく元男してちょっとイラっと来るレベルの完璧イケメンだが、実は自分と似ているところがあると知ってちょっとだけ親近感がわいた。
でもその戦闘狂の笑顔すら彼の魅力を引き立てるのだと知って、余計に腹が立った。
「イケメン許すまじ!」
「なんか理不尽だな!?」
「お前ほどじゃないけど、イケメンは身近で見慣れているんでね!」
筋力は拮抗。このまま鍔迫り合いで駆け引きしてもあまり意味がなさそうだったので、出の速い初期戦技の『スラストストライク』を右の剣で放つ。
初動を検知させる段階で気付かれ、発動した時には腕を伸ばし切っても届かない場所まで下がられており、ついでにアロンダイトにエフェクトをまとわせていた。
固有戦技は使われた形跡はないし、ぶっちゃけ使ってほしくない。
アーサー王伝説に出てくるランスロットが持っていたとされる、無毀の名剣アロンダイト。ランスロットがアーサー王の妃と不倫したため不倫した騎士の剣というイメージが尽きがちだが、実は結構すごい剣だ。
無毀の名剣と言われるように刃毀れは決して起こさない。一説にはエクスカリバーの姉妹剣ではとも言われており、ドラゴンを倒したという逸話がある。
なのでアロンダイトの固有戦技にはかなり強い竜特効が付いているのだが、それとは別にヨミ特効にもなる炎と聖属性のどちらかもある。
ただでさえ筋力を上げるために耐性を犠牲にしているのだから、そんなもんを至近距離でぶっぱしないでくれよなとお祈りしながら、逆袈裟に振り上げられてきた剣を体を反らして回避する。
剣を上に振り抜いたアーネストがそのまま初動を揃えて真垂直の振り下ろしの『ノヴァストライク』を繰り出してきたので、ヨミは『デイブレイク』で迎撃。
お互いの剣が弾かれ、アーネストは『サベージイレイザー』、ヨミは『ヴォーパルブラスト』の構えを取り、先にヨミが瞬間移動もかくやという速度で踏み込み、アーネストが袈裟懸けに振り下ろした剣で弾く。
下に弾かれた剣で初動に持っていき、再び『デイブレイク』を発動。振り抜いていたアーネストは戦技の初動が間に合わず舌打ちをして、硬直する前に左手を地面に向けて足元を爆破することで、爆風で自ら吹っ飛んで行った。
無茶苦茶なことをするなと苦笑しながら剣が空ぶったので、硬直に入る前に間合いを詰めるためだけに右の剣で『ヴォーパルブラスト』を使って離れたアーネストに接近し、ぎりぎり届かずに終了する手前で五連撃戦技『デッドリープレデター』で四肢を斬り落とすように四度振るってから、最後に心臓を刺すように体重を乗せた突きを一撃叩き込む。
アーネストはそれを全て動体視力と反応速度のみで対処して回避と防御を行い、心臓への突きを半身になって回避しながら首を狙って突きを放ってきた。
まだ足が地面に着く前だったので、背中の接続デバイスでブーツを作り、エネルギーを消費して脚力を大幅に強化してから地面を強く踏み、一定以上の強さでの踏み込みなので衝撃波が発生してアーネストがたたらを踏み、ヨミが上に吹っ飛ぶ。
「『ジェットファランクス』!」
MPを多く消費して大量のジェットブラックの槍を作り出し、下にいるアーネストに向かって一斉射出する。
ジェットブラックの槍とジェットの如き速度で飛ぶ槍の意味を持つ槍衾は、ドンッ! という音を立ててアーネストに向かって行ったが、上に跳んだ時点である程度の攻撃を予測していたのか、アロンダイトに戦技とは別の輝きが見えた。
「『ウェポンアウェイク』───『
固有戦技が使われた。
眩い閃光が刀身から放たれ、横薙に振るわれる。その軌跡に沿って白い炎とも光の本流ともいえる斬撃が放たれ、漆黒の槍の軍勢を飲み込んでヨミをも飲み込もうとする。
咄嗟に両手の剣とブーツ、背中の接続パーツをかき集めて盾に変形させて、しっかりと両手で持ちつつ体を縮こませて盾の裏にすっぽりと隠れる。
グランドエネミー氷の竜王ウォータイス戦で見せたほどの威力と規模じゃないので、今ので使用する際に消費したMP、あるいはチャージ時間に応じて威力が増減するものだと確信。
盾でどうにか防いで直撃は免れたが、完全に属性をカットできるわけではないのでダメージを受けている。どっちの属性なのかは喰らっても分からないが、盾越しでも二割ほどHPが削れたのを見て、最低威力でも食らったらアウトだなと冷や汗を垂らしつつ、いつでもお前を殺せるぞというアーネストからの熱いメッセージに、ぞくぞくと背筋を震わせて燃え盛る闘争心にガソリンが注がれる。
盾の裏にいるのでそこにできている影の中に潜り、盾をそこに放置してアーネストの後ろから飛び出る。
武器を完全に放棄した状態での接近に、反応したアーネストは驚いた様子を見せずに、首を刎ねようと振り返りながらアロンダイトを振るう。
「『シャドウアーマメント・デスサイズ』!」
回避を取らずに影の大鎌を作り上げ、その柄で刃を防ぐ。
ぐっと押し込もうとしてきたのでみぞおちに横蹴りを叩き込もうとするが、外受けで受け流される。
「『ジ・パニッシュメント』!」
受け流された時の勢いを殺さずに戦技の初動を取り、単発の回転斬りを繰り出す。
一瞬視線を逸らしたのが見えて、随分と余裕だなと少しむっとして突進からの攻撃に繋がる『ソロウラメンテーション』で体当たりするように接近し、横薙り大鎌を振るう。
反応が若干遅れて防いだアーネストは後ろに押し飛ばされ、ヨミはそのまま続く追撃で袈裟懸けに大鎌を振り下ろす。
上に掲げられたアロンダイトで防がれるが、刃は内側に付いている。それを引き寄せて後ろから攻撃し、引き寄せた勢いを使って回転して追撃を入れる『アトラクトクレセント』を使う。
引き寄せ攻撃を、後ろに目でも付いているのかと思うほどあっさり回避されて、引き寄せた勢いでの回転斬りも後ろに下がって躱される。
「……さ、さっきから思ってたけど、そんな丈の短いスカートでくるくる回るんじゃない! もう少しスカートのガードを固くしたらどうなんだ!?」
「にゃ!? ど、どこ見てんだこの変態!? お前、ボクみたいな女の子が好みとか言わないだろうな!?」
「そんなわけあるか! 誰がロリコンだ!?」
「誰がロリだ!?」
アーネストは気まずそうに顔を背け、ヨミは顔を真っ赤にして左手でスカートの裾をぎゅっと抑える。無意識のうちに内股になっており、自覚した瞬間女の子化がどんどん進んでいると地味にショックを受けた。
しかし、ゲーム内の顔は、現実の自分の顔の面影が残る程度に変えられるので、ゲームでこれだけイケメンならリアルでもかなりのイケメンの部類だろう。
声もいいし高身長でイケメンで、ステータスありきのMMOゲームだが剣術の腕がすさまじく高いし運動神経も高い。ここに勉強もできるが付け加えられればまさに完璧超人になって、現実ではさぞかしモテていることだろう。
そんなアーネストでも、ヨミがかなり激しく動き回ったり勢いを付けるためとはいえ回転するため、その都度スカートが翻って気になって仕方がないようだ。
ゲーム内なので匂いでの未経験者か経験者の判別はできないが、女慣れしていて女の子の下着が見えそうになって狼狽えるなんてことはないだろうから、多分こいつ童貞だなとかなり酷い判断を下す。
「そ、そんにゃに女の子のパンツが気になるのかな? んー? 気になるってんなら、特別にちょっと見せてやってもいいけど?」
顔から火が噴き出そうなくらい真っ赤にして、噛みながら恥ずかしさで涙目になりつつもやや引き攣ったメスガキスマイルを浮かべ、左手でスカートの端を摘まんでほんの少しだけたくし上げる。
確実に後でノエルからお叱りを受けるかお仕置きされるが、アーネストに今戦っているヨミを強く女の子だと意識させることで、下手に弾き飛ばしたりすると見えてしまうぞと釘を刺す。
「ば、バカ!? 内面はともかく、清楚な女の子がそんなはしたないことをするな!?」
「うっわ、すっごい狼狽えよう。ちょっとキモいかも」
「酷いな!?」
真っ赤になってあたふたと狼狽えるアーネストを見て、ちょっと可愛いと思ってしまった。もうだめかもしれない。
慌てつつも、やっぱりしっかりと男のようでちらりと視線がこっちを向く。その気持ちはよく分かる。一回でもそうやって意識してしまうと、ついつい視線を向けたくなってしまうのは非常によく分かる。
「あれあれぇ? なんだか視線をボクの太ももとかお腹辺りに感じる気がしますけどぉ? やっぱりアーネストってロリコンなのぉ?」
くすくすと笑いながら言う。恥ずかしさでダメージを受けるなら、もう既にセルフクリティカルでポリゴンになって消えているだろうってくらい恥ずかしい。
「私は断じてっ、ロリコンじゃないっ!」
「あはは、怖ーい! そんなにムキになって否定すると、かえって怪しいよ?」
「分かっててもその声でそう言われると、めちゃくちゃ腹が立つな……!」
煽りすぎたようで、逆に冷静になりつつあるアーネスト。でも楔はしっかりと打ち込めたっぽいので、少し動きにくいかもしれないがあえてスカートがふわふわと翻る様に動く。
それがかなり効いているようで、ふわりとスカートが浮くたびに動きが悪くなる。正直ここまで効果があるとは思わなかったが、代償として正気度が大幅に削れた気がした。
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近況ノート更新しました。スカートたくし上げヨミちゃんです
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