ギルド対抗戦 予選 1

 転送されたヨミたちの視界に飛び込んできたのは、砂漠だった。


「おぶ……」

「ヨミちゃああああああああああああん!?」


 燦燦と輝き肌を焼くように照り付ける太陽。ゲームの中とはとても思えない暑さに、速攻でノックアウトされる。

 慌てたノエルがお姫様抱っこで抱き上げて、近くにある大きな岩の陰に向かって走っていった。

 砂漠エリアはこれが初めてで、こうなるのは完全に予想外だった。


「いや、ごめん。今までずっとお日様の下の出ても全然平気だったから、ちょっと予想外だった」

「現実でもお肌真っ白だもんね。こっちだと吸血鬼さんだから、リアル以上に弱いのかな」

「ステータス5%ダウンは思い切り受けてるね。パーセントだから、ステータスが大きければ大きい分だけマイナスされる数値はでかいね」


 ウィンドウを開いてステータスを確認すると、HPとMPは影響を受けていないが、筋力がしっかりと下がっている。

 あと隠し効果なのかどうかは分からないが、不調というわけではないが思うように体を動かせそうにない倦怠感を感じる。

 今まで何度も太陽の下で活動してきたし、特にこうした不調というのを感じることはなかった。なので種族特性の『日光弱点(最弱)』は大したことはないとばかり思っていた。


「しっかし、最弱でこれってことはもし普通の吸血鬼だったらより酷いってことだよね。考えたくないなあ」

「掲示板で情報収集してたら、吸血鬼の基本スペックはヨミよりいくらか見劣りするけど基本種族より筋力と魔力はかなり高い。その代償として、太陽の下を歩くとステータスが20%マイナスされる上に、常時スリップダメージを受けるんだと」

「まぁじでぇ?」

「ちなみにそれで日光弱点(強)だそうで、もう一個上の日光弱点(最強)ってのがあるらしい。そっちの方の情報は出回ってないけど、最弱が5%で強が20%ってのを考えると、最強は25%もステータスダウンを食らうんじゃないかな。日光ダメージは言わずもがな」

「ろくに歩けないだろそれ。というか普通、吸血鬼としてのスペックが高いやつの方が、デメリットが大きいとかじゃないのこういうのって。ヘカテーちゃんは?」

「私はヨミさんほど軽くはありませんけど、一応ステータスダウンを受けてますね。10%くらいでしょうか」

「10%か。結構デカいけど、自己バフで帳消し以上にできるのが幸いだね」


 ヨミも吸血鬼に関しての情報をちまちま集めており、その過程でヨミの種族である真祖吸血鬼ノーブルブラッドというのは吸血鬼の中でも最高レアな種族で、現状ヨミ以外にいないのが確定している。

 自分から吸血鬼という種族以外の情報を明確に明かしていないので、日光の下を歩けるくらいには強い吸血鬼であるという認識をされているが、真祖吸血鬼であると言うのは割れていない。

 なので公式の攻略サイトや、考察ギルド『アーカーシャ』が運営している考察サイトにも真祖吸血鬼の名前はない。アーカーシャサイトにはヨミ自身の項目があって、もしかしたら特別レアな種族なのかもしれないという文面があったのには、少し肝を冷やしたが。


「大丈夫? 歩けそう?」

「うん、平気。ありがとう。少し驚いて立ち眩みみたいになっただけだから」


 数値がデカい分ダウンの影響も大きいが、減った分は強化スキルでどうにでもなる。流石に魔術にまで影響はないだろう。というかむしろあったら怖い。


「とりあえず、この砂漠エリアからはさっさと移動しよう。シエルは今日一日はスナイパーじゃなくてガンナーでお願い」

「分かってるよ。危なくなったらお前に援護飛ばすけど、基本はしなくていいな?」

「この状態なのに? やっぱり鬼畜ブレーンな外道ガンナー兼魔術師だな」

「あの、とりあえず前方から敵ギルドが猛ダッシュしてきていますけど」

「あぁ、見えてる。何なら右側からもこっちに向かって来てるね」

「いきなり三つ巴!? やだー!?」


 五人一組のギルドチームが十組一つのマップに転送される。

 あまり広すぎると他ギルドとの遭遇率が低くなって時間がかかりすぎてしまうのでマップ自体は広いが、極端な広さをしていない。

 また、予選なので時間がかかりすぎてしまわないために、初動である程度ギルドがぶつかるようにするため、ランダム転送だが必ず近くに他のギルドがいるようになっている。


 その手の情報は去年の対抗戦以降から一般的に知られており、ヨミたちも転送後すぐに戦いが始まること自体想定していた。

だが流石にいきなり三つ巴になるとは思っておらず、運営が談合絶許スタンスなので間違いなく協力関係にあるギルドじゃないのは確かだが、一つのギルドと戦うと他のギルドに漁夫の利を許してしまう。


「というわけだから、プランBよろしくなヨミ」

「できればこんな砂漠エリアの時に、そっちを選ぶような状況になってほしくなかったよ」


 『ブラッディアーマー』と『ブラッドエンハンス』を重ね掛けして、ブリッツグライフェンを装備する。

 ずしりと感じるその重さに頼もしさを感じながら、全力で踏み込んで一人で前方からくるギルドに向かっていく。

 シエルの言ったプランB。それはすなわち、『二つのギルドから襲撃された場合、一人で片方を殲滅して来い』というものだ。

 ちなみに他にもプランC『三つのギルドから襲撃された場合、ヨミ一人で二つ抑える』、プランD『四つ以上のギルドが入り乱れる混戦になった場合、ヨミが一人で二つ抑えつつノエルとシエルが頑張って一人一つ対処して、ヘカテーとジンがひたすら耐える』もあるが、ヘカテーとジンは絶対に嫌だと言い切っているので多分プランDまで出ることはない。

 このプランを考えたのは当然シエルで、ヘカテーとジンは苦い反応を示していたが、他ゲームでのヨミを知っているノエルとシエルは平気だと笑い飛ばしていた。


 ステータス5%ダウンは少し痛いが、低くなった分は自分の強化魔術と一瞬だけ筋力を強化するというブリッツグライフェンの機能の一つを使えば問題ない。

 何より、いくらステータスで劣っていようと冗談のような圧倒的格上相手にプレイヤースキルで食らいつけるのだから、五人程度で自分のことを仕留められるわけがないという自信がある。


「うえぇ!? 一人で来た!?」

「待ってヨミちゃんじゃん!? 最悪、いきなり最強格引いちゃったじゃん!?」

「慌てるな! いくらヨミちゃんが強いからって、流石に五人相手にするのは無理だ!」

「でもでも、あの子他のゲームで単身でギルド潰したとか言われてるけど!?」

「デマか誇張表現だろ! この試合で一番の脅威はヨミちゃん何だし、行くぞ!」


 予想外にもヨミが一人で突っ込んで来たからか、少し狼狽えた様子だったがすぐに持ち直して、魔術師と思しき女性プレイヤー二人を後方に、先頭を盾にエフェクトをまとわせた男性プレイヤーが走り、ロングソードを持った男性が左に走り、拳銃を持った女性が右に広がり銃口を突きつける。

 この時一番警戒すべきなのは、タンクでもなく中衛のガンナーでもなく、後方の魔術師だ。


 魔術師は、術の発動に詠唱が必要になるためどうしても火力を出すのに時間がかかるが、その分放たれる魔術の威力は高い。

 しかも支援特化なのか攻撃特化なのか見た目だけで判別するのは難しく、魔術を使わせてやっと分かることが多い。

 何より、ヨミに取って魔術師が一番厄介なのは、


「……───フレイムランサー!」

「パニッシュランサー!」


 必要な要求値を整えて取得した、ヨミにとっての弱点属性の魔術を呪文を唱え切ってMPさえ消費してしまえば、何度でも使えてしまうと言うことだ。

 結構な距離が開いているが、いきなり炎の槍と聖属性の槍が後方の魔術師から飛ばされてきて、回避しようにも左側には剣士がスタンバイしており逃げ道を封鎖しており、右側にはガンナー、前方には『チャージシールド』で突進してくるタンクがいるため、逃げ道は実質ヨミの後方にしかない。

 だが後方には、もう一つのギルドに向かって走っているとはいえノエルたちがおり、下手に後方に撤退すると彼女たちも巻き込みかねない。

 なのであえてタンクに向かって更に加速する。


「うそん!?」


 虚を突かれたようで、炎と聖属性の槍を回避しながら急接近してくるヨミを迎撃するようにバスターソードを突き出してくる。

 欲を言えば上からの斬り下ろしをしてきてほしかったが、これでもまあいいだろうとしっかりと構えたブリッツグライフェンを体の発条を使って、突きに合わせるように振るう。

 バギィンッ! という硬質な音を響かせてバスターソードを腕ごと弾き上げ、ブリッツグライフェンに『クルーエルチェーン』で鎖を巻き付けてから上に思い切り放り投げて、タンクに密着するレベルで近付く。


「あっ、いい匂い……」

「キモっ!?」

「ふぐぅ!?」


 そりゃこれだけ超接近すれば匂いもするだろうなという冷静な意見が頭の中に浮かび上がるが、反射的に口から出たのはシンプルなキモいと言う罵倒だった。ついでにみぞおちに向かって、比較的最近習得した格闘スキル『崩拳一式・犀破』を使って拳を撃ち出す。

 鎧を着こんでいるのでダメージは入らず、ヨミにも血のガントレットがあるので自傷ダメージは入らず、ただ盛大な金属音を響かせるだけだった。

 このタンクの男性が女の子に罵られることと、女の子に殴られることに快感を見出す被虐趣味のやべー奴だったら、このキモいと言うシンプルな罵りと殴られた痛みすら快楽に変換していただろうが、幸いそういった特殊趣味ではなかったようだ。


「リーダー、早く離れて! 魔術当たっちゃう!」

「そ、そうだった! 悪いけど、至近距離で見つめ合い匂いも堪能する時間がないから……」

「わざわざキモいこと言わないでくれます!? 『シャドウソーン』!」

「影の茨ぁ!?」


 排除の優先度合いが魔術師からタンクに移りつつあるが、感情に流されて優先順位をめちゃくちゃにしてしまうのは悪手だ。

 とはいえ一々中々にキモいことをいうこの男に軽く灸を据えてやりたかったので、ただ縛るのではなくスリップダメージも与える『シャドウソーン』でその場で縛り上げる。


術式装填セット強撃弾ブースト!」


 ガンナーの女性が術式を銃弾に装填する。

 複雑な魔法陣が銃をスキャンし、弾丸が魔術によって強化される。

 弾丸魔術『強撃弾』は、弾丸の強度と炸裂する火薬の威力を増加させることで威力を上げると言う、弾丸魔術の初期魔術だ。

 ただ弾丸の威力を強化すると言うシンプルなものでありながら、ガンナートップのプレイヤーも愛用するほどの汎用性と使いやすさがある。

 貫通特化の『貫通弾ペネトレイター』や貫通力と弾速度大幅強化する『電磁加速弾レールバレット』を使ってこない辺り、この女性も強撃弾を愛用しているタイプのようだ。


 影に潜って回避できるが、それだと上に投げ飛ばしたブリッツグライフェンに繋げてある影の鎖が切れてしまう。

 かといってこのままだと、強化された炸薬によって撃ち出された強化された弾丸を食らい、大ダメージを受けてしまう。

 なら狙える場所そのものを一か所だけ、自分の頭だけに限定させて射撃のタイミングも誘導させてしまえばいい。


 後衛の魔術師の魔術は既に放たれて迫ってきている。タイミングをミスればその瞬間ヨミの即死。

 ヨミを倒した五人がヨミの後方にいるノエルたちの方に向かい、最悪敵同士で挟まれてしまって倒されるか、彼女たちが戦っている敵に勝っても漁夫の利で倒されてしまう。


 絶対にミスしてはいけない。その緊張感がヨミをより深く集中させる。


「『シャドウアーマメント・ロングソード』!」


 なんだか久々に使う気がする、影の武器生成魔術。

 右手にロングソードを作って、それでタンクの右脚の付け根にある僅かな鎧の隙間を狙って突き刺して機動力を大幅にそぎ落とし、ついでに兜を付けていない頭の無防備な顎に強烈な一撃を叩き込んで、バッドステータス『脳震盪』を引き起こして動けなくさせる。

 影のロングソードは刺したまま放置して、地面を這うほど低い姿勢でガンナーに向かって走り出しながら、もう一度影のロングソードを作る。


「ミライちゃん!」


 ローブのフードを目深にかぶっている魔術師の一人が、ガンナーの女性と思しき名前を叫びながら杖を彼女の方に向けるのを確認する。

 同時にガンナーが砲撃のような銃声を響かせて銃弾を放ち、瞬く間に超加速した弾丸が的確にヨミの眉間目がけて飛翔してくる。

 もちろん弾丸など目視できていないが、銃声が聞こえたと同時に銃弾の軌道の上に刃を置くことくらいはできる。

 ロングソードが押し込まれるような感触が伝わり、刃と接触した弾丸が自ら進む力で両断されて、ヨミの左右を通過して砂漠に突き刺さる。


「嘘でしょ!?」


 まさかの弾丸斬りに動揺して構えが大きくぶれる。その瞬間を見逃さずに、左手で掴んでいる鎖を思い切り引き寄せて、上に大きく投げ飛ばされていたブリッツグライフェンをヨミの進む先の地面に向かって叩き付ける。

 グリップから手が離れているので固有戦技も機能も使うことはできないが、高い筋力をフルに使った全力の力技による叩きつけによって、砂煙が盛大に舞い上がってその中にヨミが飛び込む。


「砂煙の中に隠れた!」

「任せて! 接続ロード───魔力マナ収束コンヴァージェンス形成フォーム防壁プロテクト強化エンハンス……『フォースシールド』!」


 ミライと呼ばれたガンナーの女性に杖を向けていた魔術師が呪文を唱え、ガンナーの正面に魔力の障壁を張る。

 それと時間を同じくして、もう一度放たれた聖属性の槍と炎の槍が大きく弧を描きながらヨミがいるであろう砂煙の中に飛び込み、炎が炸裂し光の槍が突き刺さる。


「倒すことはできなくても、これで大ダメージ……!」


 弱点属性による魔術攻撃で大ダメージを受けたと思っているようだが、ヨミは砂煙の中に飛び込んだ時点でブリッツグライフェンをその場に放置し、影の中に潜って魔術師の背後に姿を現している。

 思ったよりあっさり『シャドウダイブ』が決まってしまいやや申し訳なさがあるが、これは試合だからとひっそりと心の中で謝罪しつつ、ガンナーに防壁を張った魔術師を、後ろから抱き着くようにして左手で口を塞ぎ、影のナイフで喉を掻き切る。


「ッ、ッ、ッ……!?」

「……え?」


 隣に立っている仲間が視界の端でポリゴンとなって消えたのがよほど不思議なのか、惚けた表情をしてそちらに目を向けるもう一人の魔術師。

 そんな彼女の死角に滑り込んで背後に回り、背中から確実に仕留めるために使ったナイフ戦技『バックスタブ』を発動。


「が、ぁ……!?」


 背後からの強烈な一刺しに目を見開き、あり得ないと言った表情でHPを一撃で全損して膝を突き、地面に倒れてポリゴンとなって消える。

 それを確認するよりも早く、放置されているブリッツグライフェンに向かって鎖を飛ばす。


「ラン!? ミカ!?」

「マジか、あの一瞬で影に潜ったのかよ!?」

「よくも……よくも二人を!」

「バカ!? 行くなクリフ!?」


 クリフと呼ばれたロングソード持ちの剣士が、強化系のスキルを併用しているのかすさまじい速度で突進してくる。

 弓を引き絞るように構えられた剣にはエフェクトが滾っており、この状況で使うとしたら恐らくは威力の高い『ヴォーパルブラスト』だろう。


 力ずくで鎖を引っ張ってブリッツグライフェンを引き寄せて、クリフが『ヴォーパルブラスト』を放つと同時にグリップを掴んで、流れるようにギミックを二つ起動。

 瞬間的に筋力が増幅され、合わせて使った両手斧戦技『ブラステッドターミネート』を上からピンポイントで柄の近くに叩き込む。

 特大武器と呼ばれるほどの重量武器の上からの振り下ろしは、システムのアシストがありとはいえ片手で堪えられるものではない。

 ロングソードが下に弾き落とされて戦技中断が発生し、僅かな硬直。そんな彼の眼は諦めの色を感じさせなかったが、同時起動させた機能の一つである追撃が発生し、右手が手首から先が消し飛ぶ。


「いっ……!?」

「ふんんっ!」


 痛覚軽減機能をオンにしたままだったのか、あるいは雷の追撃が入ったことに対してなのか、反射的に体をやや強張らせながらも後ろに下がってしまうクリフ。

 一歩前に踏み込んで体の捻りを加えた薙ぎ払いを叩き込み、胴体の中ほどまでブリッツグライフェンを食い込ませ、そこに再び追撃。

 追撃で胴体が千切れ飛んで地面を転がり、問答無用のクリティカル判定で体がポリゴンとなって消える。


「三人目。次」


 次に排除すべきはガンナーだ。

 ミライは両手でしっかりと銃を構えてこちらに照準を合わせており、引き金にかかっている指には力が入っているのが分かる。

 銃口と視線からどこ狙いかを算出しながら彼女に向かって走り出し、マズルフラッシュが見えた瞬間少しだけ横にずれて弾丸を回避する。


「なんで……!? なんで弾丸を避けられるのよ!?」


 半ば狂乱になりながら引き金を何度も引き、砲撃のような銃声を撒き散らす。しかしそのどれもが、ヨミが一瞬前までいた場所を通過するだけだ。

 弾丸斬りや弾丸避けの理論は配信の中でも言っているし、自分が掲示板上で謎の人気を獲得していて、配信の中で言ったことがまとめられたりしているのは知っているので、てっきり弾丸斬り・避けの対策はされているとばかり思っていた。

 意外とそういうわけでもないんだなと思いつつも弾丸をブリッツグライフェンで弾き、ミライが悲鳴を上げながら引き金を引き切るが、カチッ、という音が鳴るだけで銃声はならない。弾切れだ。


「り、弾丸リロー───」

「『シャドウバインド』」


 シエルから教えてもらっていなかったら、このまま真っすぐ拘束魔術も使わずにいただろう。

 弾丸魔術ではなくセットで覚えられる銃魔術と言うものの中に、MPを消費して一瞬で弾丸を装填する『弾丸装填リロード』というのがある。

 非常に便利でMPを消費してでも使う価値があると力説されていたのが功を奏した。


「ひっ……」

「えっと、ごめんなさい。めちゃくちゃ怯えられた顔されても、これは試合なんで」


 正直、結構整った顔をしているミライが恐怖を浮かべた表情を向けてくるのにちょっと興奮するのだが、内なるSっ気を理性で心の檻の中に閉じ込めながら、処刑人のようにブリッツグライフェンを振り上げて、袈裟懸けに斬り付けてHPを全損させる。


「さて、残りはあなただけですけど、どうします?」

「……四人があっという間に倒されるような相手に、片足だけで挑むほど蛮勇じゃないよ。降参だ降参」

「あ、降参するとポイント入らないとかないですよね?」

「デカい斧構えながら言わないで!? 大丈夫、超高性能なAIが戦闘ログを見てきちんと君が倒したって判定になるから」

「なら安心です」

「やー、マジで強いね君。でも次戦うことになったら負けないから。『アイ、リザイン』」


 降参を宣言したタンクの男性が、その場から転送されて消える。


『報告:最初のギルドが脱落しました』


 ほぼ同時にアナウンスが聞こえて来た。どうやら最初に脱落した場合、このように全てのプレイヤーに報告が届くようになっているらしい。

 視界の邪魔にならない端っこに小さくウィンドウが表示され、右上の端に表示されていた残存チーム数が10から9に減っており、その下にあるポイントが+120となっていた。


「えーっと、ギルドを一つ潰したら50プラスだからそれを引いたら70、シエルが一人キルしたら10ポイントプラスって言ってたから、順位上昇分は20か。これ、順位に応じて順位ポイント増えるのかな」


 増えたポイントを計算するヨミ。

 まだ九位に入っただけなので何とも言えないが、かつてバーテックスチャンピオンに携わっていた開発陣の人がこれに関わっているというのだし、きっと順位が上がるごとにもらえるポイントも増えていくのだろう。

 検証はまた後でにしようと頭の隅に追いやり、離れた場所でまだ戦闘を続けているノエルたちの方に向かって走り出す。



===

Q.ポイントってどんな風に増えてくの?


A.1キル プラス10


ギルド壊滅 1/+50、 2/+75、 3/+90、 4/+100、 5/+110、 6/+120、 7/+120、 8/+130、 9/+140、 10/+150


順位上昇  10位/+0、 9位/+20、 8位/+30、 7位/+40、 6位/+50、 5位/+60、 4位/+70、 3位/+80、 2位/+90、 1位/+100


その他 5~50

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