雷鳴に奉げる憎悪の花束 2

【ヨミちゃんの】ヨミちゃん激推しの集いスレ Part53【むちむち太もも】


601 無名の冒険者

相変わらずスレのサブタイが終わってる件


602 無名の冒険者

>>601 でもここにいるやつら全員ヨミちゃんのことが大好きだし、ヨミちゃんのあのむちむちな太ももも大好きな紳士諸君だから


603 無名の冒険者

否定できないのが辛いでごわす


604 無名の冒険者

あの太ももで膝枕とかされたら一瞬で溶けそう


605 無名の冒険者

そりゃもう、最高級枕なんかじゃ比べ物にならんくらい最高だろうな


606 無名の冒険者

ワイはあの太ももに顔を挟まれたい


607 無名の冒険者

>>606 うんうん、分かるよその気持ち。あの太ももに挟まれたらそれだけで天国に行けそう


608 無名の冒険者

本人にそれ言ったら文字通りの天国に連行されそうだな


609 無名の冒険者

色んな武器使いまわしてるけど、格闘系も行けるのだろうか。行けるならぜひともスカートの中の桃源郷を刮目して脳裏に焼き付けながら桃源落としを食らいたい


610 無名の冒険者

>>609 流石にチョイキモいわ。気持ちは理解できるけど


611 無名の冒険者

ヨミちゃんPS化け物級だけど、多分行っても中学二年生とかそこらへんじゃない?


612 無名の冒険者

あの鬼強プレイヤースキルで中学生はないだろ。でも高校生だとも思いたくねえ……。ヨミちゃんは正真正銘のロリであってほしい……


613 無名の冒険者

>>612 あれでロリ名乗れるくらいの年齢だったら逆に怖いわ


614 無名の冒険者

そういや、今日って配信するのかな?


615 無名の冒険者

あの子SNS持ってるのにあまり告知しないからなー。ほぼゲリラ配信染みてる


616 無名の冒険者

それでも人気すごいからすぐに集まるんだよな。大体大暴れしてるだけだけど、楽しそうにしているからそれでいい


617 無名の冒険者

最近ヨミちゃんのPvP処女奪ったジンって野郎がギルドに入団したのは許せない


618 無名の冒険者

>>617 言い方よwwwww


619 無名の冒険者

おいやべーぞ! ヨミちゃん配信してるけど、とにかくやべーぞ!

https://Yomi_channel/fantasiadestinyonline.livestreem.com


配信タイトル:【決戦】黄竜王アンボルトを倒す


620 無名の冒険者

ふぁ!?


621 無名の冒険者

はい!? 黄竜王!?


622 無名の冒険者

ここにきて未確認のグランドエネミー情報ぶっこまないでくれます!?


623 無名の冒険者

こうしちゃいられねえ配信に行くぞ!


624 無名の冒険者

これまた考察スレが大盛り上がりするぞー


625 無名の冒険者

ほんと退屈しないなヨミちゃん。登録者数爆増してて怖いし理由が分からんって言ってたけど、こういうとこだよ


626 無名の冒険者

笹食ってる場合じゃねえ!


627 無名の冒険者

ちょいとギルメンに連絡して叩き起こすわ



「遅い時間にこんばんわ。そろそろいい加減に始まりの挨拶を考えないとと悩んでいます、どうもヨミです。タイトルにもある通り、現在ボクはグランドエネミー黄竜王アンボルトに挑むために行進しています」


 配信を始めると、SNSで告知したのがほんの数分前であるにもかかわらず爆発的に同接数が増えていく。

 理由は分かっている。黄竜王アンボルトという名前も未確認だったグランドエネミーに挑むからだ。


”可愛いけどまずは説明を求む”

”納得のいく説明オナシャス! できないなら太ももで挟んでください!”

”スレで太もも議論した奴がそのまま来てんのかこれ”

”まずマジでそれは竜王なの? パチモンとかそんなことはない?”

”待って、ヨミちゃんの後ろに何人いるの!?”

”プレイヤー、じゃないな。まさか全部NPC?”

”アンブロジアズ魔導王国軍の紋章あるやん。え、まさかのNPC参加型クエスト?”


 濁流のように流れていくコメント欄。いくつかヨミの太ももに挟まれたいだの、太ももに挟まれながらスカートの中を見たいだの、身の毛がよだつ変態コメントが流れていくのが見えたが、極力そういうのには反応しないようにする。


「本当にグランドエネミー、グランドクエストなのかって疑うのも仕方ないけど、間違いないよ。ボクたちはボルトリントを倒したことで挑戦権を得て、シエル経由でグランドクエストを発生させたからね」


 そう言って設定を少しいじり、一つのウィンドウを表示する。そこには『GRAND QUEST:【雷鳴に奉げる憎悪の花束】』の文字がしっかりと表示されている。

 このゲームはハッキングなんてものはできないし、自分でウィンドウを偽装することもできない。つまり、カメラ越しにも見えるように設定して表示したウィンドウに書かれているその文字は、紛れもなく本物である証だ。


 ヨミが秘匿するべきその情報を開示していること、これから未だかつて討伐成功報告の上がっていない怪物に挑むこと、プレイヤー5人に対してNPCが200人という竜王に挑むにしてはあまりにも少数で挑むこと。

 それらにコメント欄は混乱しているようにコメントが流れていく。


「この作戦を立案したのは、クインディアに駐留している魔導王国軍第十五魔導騎士大隊隊長のガウェインさんなんだ。今隣に映ってるこの人がそうだよ」

「む、話していいのか?」

「どうぞ。別に変にかしこまる必要はありませんから、言いたいこと言っちゃってください」

「そうか。ではまずは簡単な挨拶からとしよう。ヨミ殿より紹介に預かった、アンブロジアズ魔導王国軍、第十五魔導騎士大隊隊長のガウェイン・ソールエクスだ。こういうのはよく分からんが、よろしく頼む」


”クインディアにいるバリトンダンディボイスの騎士の人か……ケッ”

”なんだよこのクソイケメンはよぉ……”

”バリトンダンディボイスだから中年のオヤジかと思ったら、めちゃくちゃ若いガチイケメンだった件”

”こういうイケメンには殺意が湧く”

”ずっと兜被っててなんでだろうと思ってたけど、顔隠しとかないと女性がめちゃよって来るな。ウラヤマシイ”

”ヘカテーちゃんがちょいちょいチラチラ見てて、シンプルに殺意湧く”

”ヨミちゃんとノエルちゃんが全く意識していない。もしやこの二人、百合っ子なのでは……?”


「……なぜ挨拶しただけで殺意を持たれるのだろうか?」

「あ、あはは……。そこはあまり気にしないでください。多分冗談みたいなものですので」

「そうか」


 ガウェインはこの世界の住人なので、当然こういうことへの知識など持ち合わせているはずがない。

 文字を見て何故だと首を傾げ、本当にそう思っているわけじゃないからというと少し安心したように表情を緩める。


「乱入とかされたら困るから場所は言わないけど、ボクたちはアンボルトがいるっていうエリアに向かってます。一応この人たちの案内がなくても来られるようにはなってるけど、案内がないと迷うような場所になるよ。だから今からこれに参加するって言ってログインしたり場所を特定しようとしても無駄だからやめてね」

「もし勝手についてくるようなら迷惑をかけるバッドマナープレイヤーとして、私がその首を落として処しますので覚悟してください」


 この戦いはプレイヤーだけでなくNPCがいる。そしてNPCたちは死んでしまえば復活はしない。

 きっちりと計画を立てて挑んでいるので、そこに関係のない第三者に乱入されると指揮が乱れてしまい、最悪死人が出てしまう。

 ヨミがしっかりと警告してもいいのだが、PK絶許幼女がいるので彼女に任せたほうがいいだろうとお願いしておいた。


 案の定、ハイライトの消えた瞳で斧を撫でながら言うと、一致団結したように決して邪魔はしないと言うコメントが流れて来た。

 それだけヘカテーが強いことは知られているし、それだけ恐れられている。この一週間の間、何度かPKギルド『黒の凶刃』から襲撃を受けては情け容赦なく叩き潰してきた甲斐がある。

 ヨミも何度もあった襲撃の中で、命のストックがあったほうがいいと考え最大数の十個のストックを確保している。

 ちなみに検証したのだが、ストックがある状態でHPがなくなった場合、流石に全快ではなく四割ほど回復して復活する。やはり即時蘇生能力持ちで全回復復活は反則過ぎるのだろう。


「ヨミ殿、そろそろ見えてくるぞ」

「分かりました。……ここからはコメント欄をあまり見ないから、キチンとマナーを守ってね。あと、変態コメントもやめてね」


 どうせ言っても無駄だろうと思いつつ、右手の人差し指をぴっと立てながら言っておく。

 分かったというコメントが流れて行ったが、本当に分かっているのだろうなと一抹の不安を感じつつ、カメラから視線を外す。

 その先にあるのは、とてつもなく巨大な谷への入り口だった。


 ボルトリントは天候を支配し雷を落とすという攻撃を行ってきた。なら黄竜王アンボルトも同じことどころか、それの上位互換攻撃をしてくるだろう。

 谷という場所にいて自分の利点を潰すのではないかと思ったが、しっかりと空が確認できるので、落雷ができないということに期待はできないだろう。


 一歩進むごとに、王のいる間に近付いている。それを感じ取っているのか、だんだんと討伐隊の緊張感が高まっていくのが分かる。

 ヨミも王と戦うのはあの時以来なので緊張しているが、経験が一度だけでもあるからまだ気持ちに余裕がある。

 どう見ても本気ではなかったが、それでも一回は一回だ。人型であの存在感と威圧感だったから、本来の姿ならどうなのだろうかという不安もあるが。


「…………あれ?」


 進むこと三十分ほど。ログイン前に飲んだカフェインが回り始めたのかいつも以上に頭が冴えるような感覚が出始めた頃、一際大きな空間に出た。

 直径だけで何メートルあるのだろうか。200人が大きく広がってもなおすさまじい余裕があるほどの、とにかく巨大なエリア。

 マップを開き確認すると、『琥珀の谷:王の間』と書かれている。ここなのは間違いないだろう。


 後方支援の魔術師たちに灯りの魔術を使ってもらい暗闇を払うが、そこには何もいない。

 もぬけの殻だ。ドラゴン伝説のように金銀財宝がそこにあるでもなく、赫き腐敗の森で戦ったように人の姿を取った王がいるでもなく、赫竜の巣で戦った赫竜のように体を丸めてそこにいるでもない。

 文字通りの、もぬけの殻。


「どういうことだ?」

「まさか、こちらの行動を察知して移動したのか?」

「竜王がそんなことをするはずがない。伝承では奴は今まで───」

「じゃあどうしていないんだ」


 ざわざわと、NPCたちがざわつき始める。

 コメント欄も、どうしていないんだと不思議がっている。

 そんな中で、ヨミは言い表せない違和感を感じていた。


 過去のことを思い出す。ボルトリントとロットヴルムは、自分が守護しているエリアか与えられたエリアに最初からいた。こちらが姿を認識し、向こうが侵入者に気付いた時点で戦いが始まる。

 では、一度だけ経験のある赫竜王バーンロットの時はどうだったか。あの時はレッドゴブリンと戦っていた。力が強く最初はやや苦戦していたが、所詮は力が強いだけのゴブリンだった。

 それと戦っている時に突然、奴は姿を現した。鱗の鎧が擦れる音を聞いていなければ、気配を感じ取って先に回避していなければ、ヨミもあの時ゴブリンと一緒に真っ二つにされていただろう。


 まさかあの時と一緒で、何かと戦っている最中に来るのかという可能性が浮かび上がるが、耳に届いた音を聞いて即座に否定する。

 顔を上げる。夜でもはっきりと分かるほど、そこにあるのが見える巨大な雲。ガウェイン曰く、琥珀の谷はアンボルトの住処でありそれを示すため、常に雷雲がかかっているという。

 その雷雲から、雷が見える。当然だ、読んで字の如く雷の雲なのだ。


 いや違う。そうではない。そういう意味ではない。

 空中に亀裂が入っているかのように走る雷が、ヨミが見上げた時にはまるで、何者かの意思によって生き物のように一か所に集まっていくのが見えた。


「タンク隊、魔術師隊、全員全力で防御!」


 すさまじい悪寒を感じた。同時に、喉が張り裂けるほどの大声を上げて指示を出す。


「で、ですが前方には……」

「前じゃない! 上だ! 奴は、黄竜王はあの雲の中からボクらを見下ろしてる! 早く防御を! じゃないと全員今ここで死ぬ!」


 鬼気迫るヨミのその指示に、真っ先に反応したのはやはりジンだった。


「『ギガントフォートレスシールド』、『エレメントディスパーション』!!!」


 雷竜の鱗盾を空に向けて盾戦技とタンクスキルを同時に発動。巨大な城壁のようなエネルギーシールドが展開され、それにタンクスキルがエンチャントされる。その能力は一つの属性に限定してそれを無効化することだが、無効化できるのにも限度がある。しかも使用中はHPが減ると言うデメリット付きだ。

 それを皮切りに他のタンク職NPCが同じように頭上に盾を構えて、盾戦技とタンクスキルを使い、魔術師たちが属性防御魔術とタンクの展開したシールドに強化魔術をエンチャントする。


「『ウェポンアウェイク』───『ボルテクスエクスクルージョン』!」


 更に、ジンが雷竜の鱗盾に付けられた固有戦技を使う。その能力は、雷に限定して攻撃を自分に引き寄せ、かつそのダメージを大幅にカットすると言うものだ。

 あらかじめ魔術師隊にはそのことを教えてあるので、回復支援の魔術師たちが全体回復魔術を発動させる。



 その直後、激しい雷光が視界を白く焼き、音が消滅した。



 ボルトリントと合計三度、戦った。激しい雷の攻撃に、慣れたと思っていた。どうせ竜王の落雷など、それよりも少し強い程度だろうと高をくくっていた。

 認識が、あまりにも甘かった。


 先に視界が元に戻る。咄嗟に目を閉じたとはいえど、その激しい雷光はあまりにも眩しく、少し視界が白んでいる。

 反射的に両手で耳を塞いだが、それを突き抜けて来た雷鳴。現実なら鼓膜が弾け飛んでいただろう。

 兜を被っているため顔は見えないが、激しい耳鳴りが聞こえる中ガウェインが必死に大きな声で何かを叫んでいる。

 ぽつぽつと、冷たい雨が降ってきて顔と髪を、服を、地面を濡らしていく。


 ───そうだ、状況はどうなった?


 視界が完全に元通りになり、顔を上げる。ほぼ全てのNPCたちは耳を塞いでうずくまっているが、問題はないようだ。

 上を見ると、一撃で九割が消滅しているタンク職の人たちが展開したシールドが映った。

 たったの、一撃だ。それだけで、複数のタンクの防御を九割も破壊した。


 顔を動かして、パーティーメンバーを確認する。

 ノエルとヘカテーがお互いに抱き合って震えている。シエルは顔を少し青くして耳を塞いでいる。ジンはタンクスキルで減ったHPを自動回復スキルで回復させている。

 視界端に目立たずに表示されているパーティーメンバーのHPを確認する。スキルの影響でHPとMPの減ったジン以外、無傷だった。


 ほっと安堵の息を吐く。いきなり脱落者が出なくてよかったと、安心した。

 その直後、その安心を根底から恐怖で塗りつぶす厄災そのものが降り立った。


 それは、あまりにも巨大だった。ロットヴルムよりも、ボルトリントよりも、もっとずっと巨大だった。

 ぱっと見の目測で、全長約50メートル。全身が鮮やかな琥珀の鱗に覆われており、背中の巨大な翼と鋭い爪が生え揃う前足と後ろ脚。

 歪に捻じれている角を頭に持ち、長い首を持つ頭。真っ赤な眼光。それはまさしく王たる風格を醸し出しているが、ヨミはそれを見て開いた口が塞がらなかった。

 それは、その王は、黄竜王アンボルトは、あまりにも、信じがたい姿をしていたから。


「あぁ……そんな……!」

「ば、化け物……化け物お……!?」

「い、嫌だ……死にたく、ない……」

「お、俺たち、は、あんな、あんなのと、たた、戦おうと……」


 瞬く間に、恐怖が蔓延する。

 瞬く間に、全員が死を予感する。

 瞬く間に、高かった士気が食い潰される。


 仕方がない。仕方がないだろう。誰だってあんなものを見れば、恐怖するし、死ぬと確信するし、戦意を殺される。

 何しろ、降臨した雷鳴の王は───


「「「グゥルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」


 ───三つも、首を持っているのだから。


『ENCOUNT GRAND ENEMY【LORD OF AMBER :AMBOLT】』




===


モンハンのミラボレアスとムフェトを足して黄色にしてギドラみたいに首が三つあるやべー奴だと想像してください

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