ギルドへ勧誘

ノエルがゲットしたラストアタック報酬の武器名を変更しました


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 ノエルに捕まったヨミが、ノエルの胸で危うく窒息死しかけるという一悶着があった後。

 ダークガーディアンビーストを討伐してパーティーメンバー全員にドロップアイテムが分配されたので、その場でアイテム確認と洒落込んだ。


 ヨミが入手したのは黒鎧の獣の硬骨と鋭爪、そして毛皮だった。見事に素材アイテムだったが、このボス戦ではサポートサイドだったので仕方ないと割り切る。

 シエルは黒鎧の大破片とヨミと同じ硬骨、そして牙を手に入れていた。彼もまた素材アイテムではあるが、ヨミより少しレアリティの高い鎧の破片を手に入れており、ちょっと羨ましいと思っていたら盛大にドヤ顔をかまされた。軽くわき腹を小突いておいた。

 ヘカテーはノエルの次にダメージを出していたようで、鋭爪と硬骨のほかに召喚魔術の触媒となる獣の瞳を手に入れていた。


 召喚魔術は名前の通り、使い魔や精霊などを召喚する魔術で、契約した精霊・使い魔をその場に召喚する以外に、触媒などを用いて特殊な使い魔を呼び寄せることができる。

 彼女の手に入れた瞳はまさにその特殊な使い魔のための触媒で、まさかのこのダークガーディアンビーストを召喚することができるという。

 それはすごいと思ったが、肝心のヘカテーが召喚魔術を持っていないので宝の持ち腐れが確定している。


 最後にノエルは、一番ダメージを出していたので黒鎧の大破片に黒鎧の獣の硬骨、鋭爪、毛皮、牙とシエルとヨミが入手したものすべてと、ラストアタックのボーナスとして人間の女性サイズにサイズダウンした黒鎧と、ブラックメイスを入手していた。

 どっちも筋力要求のみの装備だったため、余裕でその要求値をクリアしているノエルは早速その鎧とハンマーを装備した。


「どうどう!?」

「女騎士っぽさは増したけど……」

「こう、黒騎士みたいな感じだね」

「ノエルお姉ちゃんかっこいいです!」


 とはいえノエルは気に入ったようで、ワンスディアの鍛冶屋で強化してしばらくは使いこむと宣言していた。

 そんなこんなで戦利品の確認を終えた辺りで、ヨミはずっと考えていたことを打ち明ける。


「ギルド?」

「ヨミちゃんそう言えばギルド作ったって配信で言ってたね」

「ボクも今年の対抗戦とかギルドランク戦に出たいからさ。それで、どっちも最低人数五人でさ、その、三人とも入ってくれると嬉しいなー……なんて」

「私はいいよー。ギルド入った方が得するみたいだし」

「俺も特に問題ないな。お前が普段いる赫き腐敗の森にも行ってみたいし」


 ノエルとシエルは即答する。

 幼馴染二人は即答してくれて安心するが、ヘカテーはそうはいかないだろうと彼女の方を見る。


「ギルドですか……。正直ギルドに入るなんて考えていませんでした」

「それはどうして?」

「私、小学生なんです。親切にしてくれる人というのは一定数いるんですけど、小学生って知った途端に態度を変えたりする人が何人かいましたし、そうでなくてもなんかちょっと目が怖い人とかもいたので」

「それは……うん……」


 小学生はネットゲーマーからはキッズと呼ばれて嫌われる傾向にある。

 というのも、小学生と大人とでは話題が全く合わないこと、ネット上であっても子供相手には危害を向けないように、ある程度の最低限の良識くらいは持っている大人は少なくないので、子供相手だと「子守り」になってしまうことで、それを嫌がる大人は多いのだ。


 それ以外の変態紳士諸君にとって、金髪赤眼のロリっ子吸血鬼とか大好物だからに他ならないからだ、というのは言わずに飲み込んだ。

 銀髪赤眼の吸血鬼のヨミでさえ、百五十ないくらいの低身長なこともあってロリ呼ばわりされたし、配信にも目を疑う変態が一定数存在している。

 年齢を明かしていないこともあって、流石に小学生とは思われていないが中学に上がったばかりの女の子という認識をされているようで、それが拍車をかけている。


 ヨミでそれなのだから、小学生のヘカテーなんてもっと酷いだろう。

 常識のあるロリコンどもはノータッチでいるだろうけれども。


「その、私も入ってもいいんですか?」

「もちろん! ボクはそんな年齢とか気にしないし、何なら全員春休み明けたら高校生な未成年だし。それに、ヘカテーちゃんとも仲よくしたいしさ」


 ゲームの楽しむのに年齢なんて関係ない。そう思っているからこそ、ちょっと一部のプレイヤーにヤバい衝動を抱えていそうだが、純粋にこのゲームを楽しんでいそうなヘカテーとも一緒に楽しく遊びたい。

 どうだろうかと優しい眼差しで返事をせかさずに待っていると、少しだけもじもじとしてからゆっくりと小さな口を開く。


「それじゃあ、その、よろしくお願いします」


 控え気味に、しかしギルドに誘われたのが嬉しいのがしっかり伝わる笑顔を浮かべて言う。


「うん、よろしくねヘカテーちゃん」

「よろしくー!」

「わっ! よ、よろしくお願いします、ノエルお姉ちゃん」

「しかしこれで四人かー。街で募集……は、やらないほうがいいだろうね」

「だな。お前配信のおかげですごい人気だし」


 登録者数は先日まさかの二十万人突破を達成しており、今もまだ登録者は伸び続けている。

 ただ適当に話しながらエネミーを倒したり、バトレイドで暴れているだけなのに日々登録者が増えていくので、そろそろ恐怖を感じ始めている。


「シズちゃんこっちに呼び込めないか?」

「あの子ゲームにあまり興味ない子だからなー。ボクを犠牲にすれば来るとは思うけど」

「お前を犠牲って……あぁ、そういう。あの子昔から姉さんの影響でめちゃくちゃ可愛いもの好きのお洒落好きだもんな」

「日々獲物を狙う肉食獣の如き目を向けられて気が気じゃないよ……」


 そこに自分の母親もいるというのだから、本当に気が気じゃない。その内リアルでもゴスロリ衣装を着せられそうで怖い。

 剣道を部活でやっていて全国大会で上位に入るくらいの腕をしているので、このゲームに連れてくることができればいい戦力になるのだが、前述の通り無類の可愛いもの好きでヨミの姿が妹の可愛いものにしっかり当てはまっているため、始める代わりにコーディネートをされそうな気がしてならない。

 もう女の子なんだし女の子のお洒落の勉強をしたほうがいいのは分かっているが、詩月の用意しようとする服はお洒落の範疇にないと思う。


 しかし一般募集なんてできるはずもないし、性別の変更ができないので女性アバター=リアルも女性となるので、変な直結厨がやってくるのは想像に難くない。

 ここはやはり自分を生贄として剣道少女な妹を召喚するしかないのかと、ものすごく嫌そうにため息を吐く。


「でも、シズちゃんにこれを始めさせるにしても、ソフト自体品薄で入手難しいよ? 私は通販で買う時に間違って二本買ってうち一個をヨミちゃんにあげられたけど、あれだって奇跡的に買えたようなものだったし」

「となると、どうにかしてメンバーを揃えないといけなくなる、か」


 最後の一人が集まらない。

 まだ時間があるとはいえ、このまま四人のままとなってしまうと対抗戦にもランク戦にも参加できなくなってしまう。


「なら年中行われている個人ランクの方でフリーの人を見つけて、その人を勧誘するって言うのはどうですか?」

「個人ランク? そんなのあるんだ」


 まだバトレイドに行ったことのないノエルが首をかしげる。


「はい。ヨミさんはまだ挑んでないですよね?」

「そうだねー。基本は内部レートマッチだから強い人と当たるみたいで楽しそうなんだけど、ボクはそこまでガチでやりたいわけじゃないから」


 プレイヤーにランクが付けられて、その勝敗によってポイントが与えられたり剥奪されることで変動するランクマッチ。

 ストーリーも攻略もそっちのけで、そのランクマッチで1位を獲得するために対人戦ガチ勢が日々激戦を繰り広げている。

 談合も一切許さない運営としても有名なので、プレイヤーのランクはしっかりとそのプレイヤーの実力に合ったものになっている。

 そこの上位層ならば即戦力として非常に期待できるが、その一方で上位勢となればもうすでに他のギルドから勧誘を受けて入っているか、ランクマッチ以外の全てを捨てているガチ勢のどちらかな可能性が高い。


「個人ランクか。丁度興味あったし、余裕を見つけてちょっと潜ってみるか」

「マジ? それは助かる」

「お前は来ないのか」

「そういう勧誘はシエルに任せた」

「丸投げすんなよな、ったく……」


 とは言いつつも断らない辺り、お人好しだなと微笑みかける。

 そっちの方からも勧誘をかけながらどうにか最後の一人となるメンバーを探すことになり、とりあえず今日の残りはノエルの他ステータスの育成に割り当てることにした。


 本人の希望もあって赫き腐敗の森に行って、ヨミとヘカテーの腐敗耐性高い組はなんともなく、腐敗耐性が普通のノエルとシエルは早速腐敗状態になってしまい、すぐに引き返して泣く泣く手前の大深緑の森で育成をすることになったのは別の話。

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