丘陵の黒鎧の獣

「シエルはさ、キークエストクリアしてるからグランドクエストの正式な挑戦権を得ているんだよね?」


 変わらずエヴァーグリーン丘陵を進んでノエルのスキルレベル・熟練度上げに付き合っているヨミ。

 オークを集落を見つけて、手出し無用と女騎士が突撃していった時は大丈夫かと不安になったが、オプションのめちゃくちゃ深いところに隠されているように存在しているらしい倫理解除コードがあるとはいえ、未成年が多くプレイしている基本全年齢のゲーム。

 知識として知っている薄い本的なエロティックな展開になることは絶対にないし、一撃の重さだけでなく速さがあるのでオーク程度ではノエルを捕まえることすらできず、一撃一殺でポリゴンへと変えて行っている。


 そんなワンサイドジェノサイドを眺めながら、ヨミがシエルに質問する。


「あぁ、持ってるな。グランドクエスト【雷鳴に奉げる憎悪の花束】ってやつ。ヨミのは?」

「ボクのは【焼き払い腐敗する赫に親愛なる殺意を込めて】、だね」

「俺らのものだけなのかどうかは知らないけど、クエスト名が竜王に対する負の感情なのがすごいな」

「王でこれなんだし、元凶の竜神とかのクエストとなると、もはやとんでもない悪口になってそうだね」

「二人とも何の話してるの?」


 オークの集落の殲滅を終えたらしいノエルが、すっきりした表情で戻ってくる。


「終わったか」

「うん、数もそこそこいたからいいレベル上げになったよ。それと見て見て! 真鍮の円盾ゲットしたよ! これで一層女騎士っぽくなった!」


 嬉しそうに真鍮色のラウンドシールドを見せてきて、もう左腕に装備しているようでそれっぽく構える。


「ボクが言えることじゃないけどさ、普通複数体一ってかなりきついんだけど」

「ノエルお姉ちゃん、すごく速かったです」

「別にまとめて複数相手にしなくたって、一対一をその数だけ繰り返せばよくない?」

「極論で言えばその通りなんだけど、それ結構難しいからね?」


 先日のPK襲撃の際も、可能な限り一対一の状況に持ち込んだうえでクリティカル狙いで対処していたが、そう簡単にできるようなものじゃない。

 PKだってプレイヤーで、当然連携を取ってくる。二体一であれば片方を一時動けなくすることで、強制的に一対一に持ち込めるが数が増えればそうもいかない。

 可能な限りやったが、どうしても二人以上いたため一対一に持ち込めたとしても、すぐに援護が入ってそれが瓦解してしまっていた。


 戦いとは基本は数。トッププレイヤーはみんな火力と範囲がおかしいそうなので例外に当てはまりそうだが、ヨミはまだ単体に対しての高火力でしかない。

 なので、エネミーとはいえ一対一を数の分だけこなすをやってのけたノエルに、ヨミは呆れたような苦笑を向ける。


「よーし! 調子上って来たし、このままこのエリアのボス倒しに行こー!」

「まだ初めてそんなに経ってないだろ」

「ヨミちゃんだって行けたんだし行ける行ける」

「それはこいつのプレイヤースキルがキモいくらい高いからだ。姉さんはヨミほど考えて戦わない、ガチの脳筋じゃないか」

「じゃあそこはシエルがカバーして?」

「……調子のいい姉め」


 はぁーと長く息を吐くシエル。ノエルからのお願いは、よっぽど酷いものじゃない限りは断ることはなく、なんだかんだで仲のいい姉弟だ。


「このエリアのボスってどんなやつ?」


 どこにボスがいるのかを知らないので、このメンバーで唯一知っているヘカテーに案内を頼んで進む。


「ダークガーディアンビーストっていう、十メートルくらいの大きな獣型のエネミーです。大きい分速度はないですけど、代わりに一撃が結構重いです。ボスなだけあって強いですよ。……ヨミさんは赫竜を倒せるので、弱く感じると思いますけど」

「あれと比較したらなんでも弱く感じるよ」

「行動や攻撃パターンは、教えたほうがいいですか?」

「ボクはいらない。自分で模索したほうが楽しいし」

「俺も同意見だね。姉さんは?」

「一撃食らったら瀕死になりそうな紙装甲な私に聞く?」

「だよね。ヘカテーちゃん、ノエルにウィスパーチャットで教えてあげて」


 こくりと頷くとノエルを手招きして、ウィスパーに切り替えて情報を教える。

 ノエルはゲーマーだが、攻略情報が出ているならそれをしっかりと見てから挑むタイプだ。理由は、ゲーマーではあるがプレイヤースキルがヨミとシエルほど高くないからである。

 ヨミとのタイマンでも勝率四割というのも、ヨミの行動や癖などを長いこと見ているから知っているため、他のプレイヤーと比べて行動を予測することができるから得ている勝率だ。

 もし彼女にそういう事前知識や経験がなければ、ノエルはヨミに絶対に勝てないくらいにはスキルに差がある。

 だから盾持ちの筋力特化の脳筋なのだが。


 道中のエネミーを轢き殺しながら進んでいくと、遺跡のような場所に辿り着く。

 これはすごいと厳かさを感じて呆けていると、先頭を歩いていたヘカテーが立ち止まる。

 若干遅れてヨミたちも止まると、視線の先に灰色の毛皮に覆われ、その上に黒曜石のような艶やかさのある鎧を付けている大きな獣がいた。


『ENCOUNT BIG ENEMY【DARK GUARDIAN BEAST】』


 向こうは既にこちらを視認しているようで、ウィンドウが表示される。

 人狼をモチーフにしているようなシルエットで、顔を半分ほど黒い兜が覆っていて眼は見えないが、こちらを鋭く睨み付けているのを感じる。

 長く太い前足にはナイフのように鋭い爪が生え揃っており、もしあれを入手できるのならいいナイフになりそうだ。


「あれがダークガーディアンビーストです。新緑の森に隣接するエリアのボスだからと勘違いされやすいですけど、初心者から見ればこのエネミーの火力はかなり高いです。しっかりとタンク、アタッカー、サポーターと役割を分担しないといけない相手です」

「あいにく、俺を除いて全員前衛アタッカーなんだよなあ」

「シエルもアタッカーでしょ」

「俺は後衛アタッカー。ガンカタで戦えるとはいえ、あれ相手に俺の打撃が通じるとは思えん。あと今回は姉さんがメインだから俺はサポートに回るし」


 そう話していると、黒鎧の獣が狼のような遠吠えを上げる。

 『BATTLE START!』の表示と共にHPバー一本と、その下に三本のブロックが現れる。

 戦闘開始となり、黒鎧の獣が重い足音を立てて走ってくる。

 唯一ヘカテーから教えられた足が遅いという情報は間違っていないようで、人狼モチーフの癖に鈍いなとおかしく感じながらヨミとヘカテーは右に、シエルは左に散開し、ノエルは馬鹿正直に真っ向から突撃していく。

 真っ先に獣はノエルに向かって左足を振り上げて、ナイフのような爪で斬り付けるように振り下ろしていく。


「おりゃああああああああああああああああ!」


 それを気合と共にメイスで殴りつけ、パリィですらないのに弾き上げる。

 ボスエネミーとはいえ所詮は初心者エリアの隣のエリアのボス。ここまで筋力ステ極振りは想定していなかっただろう。

 体がぐらりと傾ぐが持ちこたえ、殴り上げられた左足をもう一度振り下ろす。


「もういっちょお!」


 それを再び殴り上げる。

 これでまだ装備スキルなどが付いていない素の強さだというのだから、今後筋力アップ効果の付いた装備などを着るようになったらどうなるのだろうか。


術式装填セット強化弾エンハンス


 などと思っていたらシエルが銃に術を込めて、銃口をノエルに向けて引き金を引く。

 銃声が響いて弾丸が真っすぐノエルの方に飛んで行き、まさかフレンドリーファイアかと思ったが、ノエルのHPは1ドットも減らない。


「おぉ!? なんか力が湧いてくるよ!?」

「姉さんに強化の術式を直接撃ち込んだ! 大体三分くらいは持つけど、リキャストがあって三分半かかるから重ね掛けは期待しないでくれ!」

「りょーかい!」


 前足での攻撃を止めて嚙みつきを仕掛けてきたのを後ろに少しだけ下がって回避してから、ドンッ! と爆ぜるような音を立てて一気に接近して、ただただ全力で力任せにメイスを顔面に叩き込む。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 あの脳筋に強化の魔術をかければどうなるか。

 その答えは殴られて数メートル吹っ飛んだ黒鎧の獣が、身を以て証明してくれた。

 たったの一撃で一本目のHPがごっそりと六割も減り、改めてあの火力がとんでもない速度で突っ込んでくるようになったという恐怖を実感し、冷や汗が流れる。


「……ノエルお姉ちゃんって、結構強い人です?」

「うん、まあ……強いっちゃ強い、のかな?」


 呆れた様子のヘカテーがぽつりと零し、ヨミも曖昧に答える。

 まだ初期装備で攻撃力が高くないからあの程度で済んでいるが、もしヨミがメイスを作ることができてそれを貸してあげていたら、多分一撃で一本目を削り飛ばしていたかもしれない。


「さ、ノエルとシエルだけに任せるわけにはいかないし、ボクたちも仕事しようか」

「はい!」


 右手にロングソードを作り、ヘカテーは背中に背負っている両手斧を抜いて構え、一緒に走り出す。

 顔面にメイスを食らってもがいていたダークガーディアンビーストは、ヨミたちの追撃から逃れるために急いで起き上がり、二人まとめて薙ぎ払おうと右腕を振るってくる。


「『ブラッドシールド』!」

「『ブラッドメタルクラッド』!」


 少し先に出ていたヘカテーが血を左手首から放出して硬質化させ、血の盾を形成して攻撃を防ぎ、ヨミはロングソードに血をまとわせて硬質化させる。


「『ブラッドイグナイト』!」


 血を燃焼させ、赤い霧を体から発生させたヨミが一気に急接近していき、胴体を撫でつけるように剣を振る。

 今まで戦ってきたエネミーが硬すぎたため、このボスが身に着けている鎧もかなり硬いと分かるのだが、比較対象がおかしいため斬りやすいと錯覚してしまう。


 すれ違うように後ろの方まで駆け抜けていき、後ろの右足を斬り付けて動きを封じようとするが、本能か咄嗟に足を動かされてしまいダメージは入ったがそこまで深く斬り付けることはできなかった。

 するとそこに、針穴に糸を通すような精密さで一条の雷の槍がぶつかり、動きを鈍らせる。


「おいコラシエルゥ!? ボクに当たったらどうするつもりだぁ!?」

「当たらなかったんだからいいだろ! ほら、お前の方を向いたぞ!」


 その攻撃をしてきたのはシエルだ。

 とても銃弾とは思えない速度で飛んできたので、エフェクト的にも雷系の魔術を付けたものを撃ったのだろう。

 じとーっとシエルに睨みを利かせながら獣の攻撃を回避していると、別の術式に切り替えたのか魔法陣が銃をスキャンするように通過していく。

 以前も見たが、ああいうのは非常にロマンだと厨二心をくすぐられる。

 確かPKKした時にリボルバーを手に入れているので、銃のスキルを取ろうかと悩む。


「『カラミティ』!」


 その間に接近したヘカテーが戦技を発動し、跳躍してから全身を使って全力で斧を叩き付ける。

 ゴリっと鎧とHPを削り落とし斧を振り抜くと、地面にぶつかった途端にすさまじい衝撃を前方に放って更にHPを削る。

 隙も生じぬ二段構えとはこのことかと思いつつ、あの戦技かなり使えるなと習得すべき戦技リストに付け加える。


「君の相手は私だよ!」


 よろりと体を傾がせてヘカテーにヘイトを向けるが、いつの間に背中に飛び乗っていたノエルが脳天にメイスを振り下ろして地面に叩き付ける。

 その際、音を言葉で表すならゴギャアン!! という爆音を響かせていた。

 自分が食らったわけでもないのに、そのあまりにも痛々しい音に頭がなんだか痛くなってきた。


「ノエル! 火力を出すのはいいけど、あんまりやりすぎると武器の耐久なくなって壊れるよ!」

「えぇ!? そう言うの早く言ってよ!? ていうかそんなのあるんだ!?」

「超絶リアル志向のゲームなんだからあるに決まってるでしょ! とりあえずボクにメイスを投げて! 補強できるか試してみる!」

「できなかったら!?」

「メイス壊れたら殴れ!」

「絶対に成功させてぇ!」


 そう言ってメイスを山なりに投げて渡してくる。

 流石にそこは綺麗な投球フォームからの剛速球ではなかったと安心し、メイスを受け取る。

 メイスの武器スキルは習得していないので、成功するかどうかは分からない。失敗したらこれの代わりに彼女と相性のよさそうな赤刃の戦斧を貸そうと思っている。あれなら彼女の無茶な運用にも耐えられるだろう。


「『ブラッドメタルクラッド』」


 ぐっと柄を握って魔術を発動させると、血がメイスを覆って行き硬質化する。

 別にその種の武器スキルを持っていなくても、補強と強化はできるのだなと知り、これである程度戦略の幅が広がるなと笑みを浮かべながら、試運転のためにダークガーディアンビーストに向き直って走っていく。


「ガアァ!」


 上手く動かせなくなった後ろの右足を庇いながら立ち上がり、左前脚で攻撃を仕掛けてくる。

 それを冷静にタイミングを計り、ジャストパリィを決めて弾く。


「そぉ……れぇ!」


 胸の中央をメイスで思い切り殴りつけると、苦悶の声を上げて怯み動作をする。

 HPもぐっと減らすことができて、武器の耐久値とは別にある硬質化した血の耐久値が少し減っただけなのを確認する。


「問題ないね。ノエル!」

「……なんか私のメイス赤くなっちゃってるんだけど」

「ボクの血で補強してるからね。見た目はともかく、性能はいいよ」


 ちょっと引き気味にメイスを受け取ったノエルだったがすぐに気を引き締めて、左手に装備した盾を前に構えながらボスの出方を窺う。

 そこに一発の銃声が響き、弾丸が胴体に当たった瞬間全身に雷が網のようにまとわりついて、動きを封じる。

 それがシエルによる相手への行動デバフだと理解するよりも早く、ノエルが爆速で接近してメイスを大きく振りかざす。


 ボスへの行動阻害は一律効果時間が短いようで、ノエルが近付くころにはもう解除されてしまい、追い払おうと大きく顎を開けて食らい付こうとしてくる。

 『シャドウダイブ』で影に潜って素早く移動し、追い出されるように影から飛び出てアッパーをした顎に当てて強制的に口を閉じさせる。

 上を向けさせられた頭を追うようにノエルがジャンプして、メイスに淡いエフェクトが発生し、戦技が発動する。


「『インパクト』!」


 落下しながら全力でメイスを脳天にぶち当てる。体が縮み上がりそうな音を響かせ、メイスを振り抜く。

 メイスの熟練度10で覚える戦技『インパクト』は、殴った時のダメージとは別にほぼ同じタイミングでそれよりも少し強い追撃の衝撃波を発生させるシンプルなものだ。

 追撃発生なので最初の頃は非常に優秀な戦技だが、熟練度が上がっていくと『パイルインパクト』という上位互換戦技を習得するため、本当に最初にしか使われることがない戦技とやや不遇の立ち位置にある。


 だが、殴った時よりも少し強い威力の衝撃が追撃されるので、今の時点でノエルとの相性はめちゃくちゃいい。

 顔を地面に減り込ませるような形で叩きつけられたダークガーディアンビーストのHPが、頭という弱点を殴られたことで一気に削られ、残りHPは一本半程度となる。


「『スカーレットセイバー』───『ブレイドダンス』!」


 頭を地面に減り込ませているダークガーディアンビーストに、ヘカテーが血魔術で作った深紅の五本の剣を、自分が中心となって剣と踊る様に斧を叩きつけながら剣を操って攻撃する。


「さっきも思ったけど何その魔術!? 超カッコいい!」

「わ、私の攻撃性の血魔術です! 魔術レベル70で覚えました!」

「いいな、ボクもそれ覚えたい」

「そ、そんな羨望の眼差しで見つめられましても……」


 五本の血の剣が砕けて離脱してきたヘカテーに、羨ましいと視線を向ける。

 ヨミの血魔術はどれも強化系と偏っているため、ああやって攻撃するのに憧れがある。

 もしかしたら血魔術は全て強化系に偏って終わるのではないかという不安が出てくるが、流石にそんな意地の悪いことはしてこないだろうと今後に期待する。


 ヘカテーが攻撃しシエルが追撃の銃弾を放ったことで、ボスのHPはラスト一本となる。

 ラストアタックはノエルに譲るつもりなので、ここからはサポートに徹する。


「術式装填・強化弾!」


 リキャストが終わったのか、強化弾をノエルに撃ち込むシエル。


「来た来たあ! よっしゃ、このまま止め刺すよ!」


 顔の横にメイスを構えてエフェクトをまとわせる。

 ノエルの体がシステムのアシストを受けて走り出し、黒鎧の獣がノエルのことを強く警戒して離れようとする。


「『シャドウソーン』!」


 配信中ではないこと、周りにいるのが自分たちだけということで、習得したけど使っていなかった影魔術二つ目の拘束魔術を使い、非常に短い間だけその動きを阻害する。


「術式装填・麻痺弾パラライザー!」


 束縛が破られると同時にシエルが術式を装填し、麻痺弾を撃ち込んで一瞬だけ硬直させる。


「『クリムソンバインド』!」


 すかさずヘカテーが血魔術で体を縛るが、二秒ほどで破られる。だがその二秒もあれば十分だった。


「『スマッシュメイス』!」


 ただの全力の振り下ろしの単発戦技。されど、それを放つのはこのパーティーの脳筋。

 筋力100から繰り出される振り下ろしに戦技のアシストと補正が乗り、被っている兜を砕く音と共に再び顔が地面に叩きつけられる。

 クリティカルとは行かなかったがその高火力から残りのHPを削り切り、『DEAD END』の表示がされる。


『BIG ENEMY DEFEATED』

『エリア【エヴァーグリーン丘陵】のボス【黒鎧の獣:ダークガーディアンビースト】が撃破されました』

『ラストアタックプレイヤー:ノエル』


 眼前にこのようなウィンドウが表示されて一瞬肝が冷えたが、しっかりとワールドアナウンスではなくパーティーメンバーにのみ表示されているものだと知って胸を撫で下ろす。


「いやったー! 初ボス撃破ー!」


 ボスエネミーの体がポリゴンとなってきて言ったのを確認すると、ノエルが全身で喜びを表現する。


「始めてまだ数時間の初心者が、パーティー戦とはいえボス倒しちゃったよ」

「見てて思ったが、姉さんの瞬間火力半端ないな。つくづく味方でよかったと思うよ」

「あれでまだ成長するってんだから末恐ろしいよ。ノエルに追い越されないように頑張らないと」

「ヨミちゃーん! ボス倒せたー!」

「ぐぇ!?」


 急にこっちに来たものだから反応できず、ご立派な二つの膨らみに顔をうずめ、カエルが潰れたような声を上げてしまう。


「みんなで戦うの超楽しいし、ボスを倒すの超気持ちいい! 私このゲームドはまりしそう!」

「ぐえぇ……! わ、分かった! 分かったから放してぇ……!」


 逃げようと必死にもがくが逃げられず、見かねたシエルによって救出されるまでノエルの拘束は続いた。

 戦いが終わった後も油断しないようにしようと決意するのだが、善意や好意100で悪意0のノエルの行動には咄嗟に反応できないことを悟り、最終的にノエルの捕獲行動の回避は諦めることになるのを、ヨミはまだ知らない。

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