PKK過激派金髪ロリ
「じゃあ、ノエルさんとシエルさんは双子で、ヨミさんとは幼馴染なんですね」
「そうだよー。ちなみに、私がお姉さんなんだー。ヘカテーちゃんも私のこと、お姉ちゃんって呼んでもいいよ?」
「ではノエルお姉ちゃんで!」
「……ん゛っ、可愛いっ。やばいよヨミちゃん、この子超可愛い」
東雲姉弟、ノエルと弟の
ヨミたちよりも先にプレイしていたシエルに、二週間前からプレイしていて筋力値と魔力値の高いヘカテー、普段いる場所が高レベルすぎてステータスが結構育ってきているヨミからすれば、もはや雑魚過ぎてお話にならない場所だ。
ではどうしてここにいるのかというと、ヘカテーにお姉ちゃん呼びしてもらってデレデレしている無類の可愛いもの好きの、筋力値100の脳筋女騎士な幼馴染のためだ。
もう筋力が100となっているのだし、火力面で言えばもう問題ないだろう。
先ほど試しにゴブリンと一人で戦わせてみたら、クリティカルじゃないというのにメイス一撃で殴り潰していた。
元々のスピードファイターとして復活してるうえに、対ヨミのために偏った脳筋の二刀流と結構恐ろしいことになっているのだが、本格的なスピードファイターは中学に上がる前にやめているので感覚が鈍っており、それを取り戻す必要があった。
そのためこうして初心者エリアの『新緑の森』を突っ切っていきながら、その先にある『エヴァーグリーン丘陵』というエリアに向かっている。
『エヴァーグリーン丘陵』は『新緑の森』と隣接しているのだが、エリア一つ跨ぐだけで強さが大分違うエネミーで溢れている。
サービス開始直後の頃、攻略情報も何もない状態で探索していたプレイヤーが、装備もステータスも何も揃っていないまま『エヴァーグリーン丘陵』に行って地獄を見た、という話があるくらいには強いエネミーがいる。
とはいえ、前に予想した通り魔術師兼ガンナースタイルのシエルに、ハイスピード兼一打一殺脳筋騎士のノエル、筋力と魔力値補正の高い吸血鬼二人組という組み合わせなので、苦戦することはまずないだろう。
「ところで、ヨミがいる赫き腐敗の森ってどんな場所なんだ? お前、ネットじゃ割と有名人だから情報が飛び込んで来たぞ」
ノエルはヘカテーのことを構い倒しているので、ヨミの隣にやって来たシエルがぼそっと聞いてくる。
「一言でいえば地獄だね。今はようやく装備更新したからまだ多少はマシになったけど、基本攻撃が直撃したら即死クラス。赤い霧には腐敗の効果があって、長く触れ続けているとこっちが腐敗の状態異常になる。ボクは素で耐性が高いから、奥の方に行かなければゲージが溜まることはないけど」
「俺や姉さんはそうもいかない、か。めちゃくちゃレベル高そうだから、そこでスキル上げとかしたかったんだけどな」
「調べたら腐敗耐性をうんと上げる装備が売られているみたいだし、揃えてみたら? 何ならボクの素材融通するから作るのもありだけど」
「お前に言えることじゃないけどさ、俺はこれ始めて割とすぐに大会行きが決まったから、調整のためにFPSやっててあまりやり込めてないから行ってもせいぜい中堅最下位とかその辺のプレイヤーなんだ。お前の持ってるヤバい素材で作られた装備を着けてていい立場じゃないよ」
「そういうところは律義だねえ」
「パワーレベリングが嫌いなだけだ」
ヨミを倒すためにはどんなえげつない手段をもいとわないが、そのえげつないな手段は全て自分できっちりと揃えたものだけ。
自分の実力に見合わない装備は絶対に着けないし、イベントの大会などでチーミングを持ちかけられてもすぱっと断る。
レベル制MMOでも、シエルのレベルが低かったので一緒に狩りに行かないかと誘っても、せめてそこの適正レベルになるまでは地道に上げると言ってこなかったこともあるし、それはプロゲーマーになっても変わらない。
「あ、そうだ。大会優勝したんだってね。おめでとう。あとで試合のアーカイブを見ておくよ」
「おう、サンキュ。マジでこの大会きつかった。中学生に行かせるようなレベルじゃねえぞ」
「その中学生が部隊のブレーンやって大会優勝に導いたんでしょうが。どうせえげつない罠とか色々張って、敵味方から悪魔や死神なんて呼ばれてたんじゃない?」
「そういう作戦を立てるのだってれっきとした戦略さ」
「まそうなんだけど。というわけで、FDOでも脳筋しかいないボクたちのことをよろしく頼むよ、参謀殿」
「誰が参謀だこの戦闘狂」
「なにおう!」
と言いつつじゃれようとするが、シエルの方からすっと距離を取る。
「……何?」
「いや、ノリとかは今まで通りだけどさ、流石にスキンシップまで前のノリで来られるのはこっちが困る」
「ほほう」
気まずそうにしながら白状するシエルに、悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「あんだよ」
「それはそれは。つまり、ノエル以外の女の子から触れられるのは意識して気まずいとか、そんな感じですかにゃあ?」
「言い方。もう姉さんともそんな姉弟間スキンシップもしてねえよ。家に帰ってきたらノータイムで飛びつかれはしたけど。……それと、お前を元男だと知っていても今はとんでもない美少女なんだから、自分の見た目とか体のことを考えろバカ」
最後の方をウィスパーチャットに切り替えてから話すシエル。
改めてシエルの方から、ヨミが完全に女の子になってしまっていると言われると、胸の奥がチクリと痛む。
ノリとか付き合い方は今まで通り、隣の家に住む幼馴染のままでいてくれるのは非常にありがたいが、やはり性別的な問題もあって今までのように肩を組んだりとかそういう触れあいというのは難しくなってしまった。
ノエルがリアルでは、女体化したことで逆にスキンシップが激しくなったので勘違いしていたが、それは心や趣味嗜好はともかく体はもう女の子だから向こうの遠慮がなくなっただけで、体が男だった頃はスキンシップは控えめになっていた。
そうなったのは、空という弟がいて思春期男子にノエルのスタイルはあまりにも猛毒なので控えたほうがいいと言われていたのが理由だったのだが、思春期男子から思春期女子にTSしてしまったことでタガが外れて結果的暴走したわけだ。
「ま、お前がどうなろうとヨミはヨミだ。前みたいなバカ騒ぎは難しいけどさ、今まで通り親友として付き合っていくさ。だからそんな泣きそうな顔をするな。あとで姉さんに何言われるか分かったもんじゃない」
「怒ると怖いのは知ってるだろ」と後ろでなおもヘカテーを可愛がっているノエルを肩越しにチラ見して、冷や汗を浮かばせながら苦笑する。
「……うん、そうだね。ありがとう。やっぱり持つべきは親友だね」
接し方はほぼ変わらないし変えるつもりもないと知り、憑き物が落ちたようにほっとする。
「ところでお前、竜王関連のクエストをクリアしたんだろ? ってことは、ユニーク装備を持ってるだろ」
ウィスパーチャットから元の全体チャットに戻したシエルが、話題を変えるように聞いてくる。
「……ナンノコトデショウカ」
「隠さなくてもいいよ。俺も持ってるし」
「…………ん!?」
さらっととんでもないことが明かされ、シエルの顔を見上げる。
その顔はしてやったりと少し意地の悪い笑みを浮かべていてちょっとイラっとしたが、それは後でどつくこととして真相を聞き出すことを優先する。
「グランドキークエストっていう、竜王の眷属を倒す特殊クエストがあるだろ。ネット掲示板とかでお前が赫竜王の眷属を倒したって話は知られているし、配信内で赫竜が関わるショートストーリークエストをクリアしたって言ってたのも、切り抜きかなんかで見たからさ」
「ボクの配信の切り抜き観てるんだ……」
「流石にツウィーターで見たこともないグランドエネミーの名前がトレンド入りしてたら気になって見るし、それがお前の配信からの情報だと知ればな。このゲームでも大暴れしているようで何より」
ヨミが発生させたグランドキークエストは、未だに何が条件なのかは分かっていない。
状況的に見れば、アルマ経由で発生したショートストーリークエスト【赫に蝕まれる一人の母】を進ませることで、その原因となっているロットヴルムに挑むためのクエスト、かつ赫竜を生み出した元凶たる王に挑むためのグランドキークエスト【赫の王への挑戦権】が発生したと考えたほうがいいだろう。
先日の配信内でも蒼竜王ウォータイスの眷属の蒼竜グレイシアニルというドラゴンがいると言われていたし、本来は眷属を倒して挑戦権を得てから王に挑むことができるのだろう。
しかし、そうなると調べた限りではあちこちを飛び回っているからランダムエンカウントする金竜王ゴルドフレイは、その眷属を倒さずともエンカウントして挑戦することができるということになる。
「で、シエルは何のキークエをやったのさ」
「俺が挑んだのは黄竜ボルトリントってやつだったな。最初のオープニングで黄竜王は雷を支配するって言ってたから、その眷属だから雷使ってきた。倒すのに一週間かかって地獄だったぜ」
「人数は?」
「俺一人。ひたすら死にまくって行動パターンや雷撃のタイミングとかを覚えて、一日かけて戦略立ててから徹夜でぶっ通して戦ってやっと勝てた。……そう考えると初見で二時間以内に倒したお前、かなりのバケモンだな?」
「ぃやかましいわ! こちとら一回の失敗で色々とヤバいことになるところだったんだよ!」
何しろセラの命がかかっていたのだ。シエルがやったように、何度も死に戻って行動を覚えるという手段は時間的にも取れなかった。
だから一度も死に戻りせずに攻撃を全回避、あるいはパリィなどでどうにか生存して、その場で一回目の戦いで行動パターンや攻撃手段などを把握するしかなかった。
「で、そのキークエをクリアした時に、そいつが守護してたっぽい遺跡の中からごっついリボルバーを入手したんだ。今俺がホルスターに入れてるのがそのリボルバーで、竜特効付きのユニーク武器だ」
「竜特効……。あれ、ボクのユニーク武器にはなかったんだけど」
「特効付いたのはクリアした後に、近くにある村にいた鍛冶師にボルトリントの素材を使って強化してもらってからだったから、お前も貰ったユニーク強化してみたらどうだ? 何なら、お前はユニークアイテムと言っても過言じゃない赫竜王の左腕を持ってんだし」
「ソウダネ」
「……お前、何かに使ったな?」
「ナンデモナイヨ」
「……そういうことにしておくか」
もうとっくに武器に加工してしまっているなんて言えない。
それにしても、眷属の素材を使って強化をしたら竜特効が付く、となると竜王のの素材を使って作った武器はどうなのだろうか。
気になって仕方ないので、ウィンドウを開いてプライベートモードにしてからインベントリの肥やしとなっている斬赫爪を確認する。
結論から言えば竜特効は
大体こういう何か力が秘されている場合は、ものすごいレア素材を使って強化した時に開放されるのが多い。
竜王関連のレア素材と言ったらそれはもはや心臓とかその辺になってくるので、レア度高すぎたりしないだろうかと先行きが不安になる。
「みぃつけたあああああああああああああ!!」
ついでに、斬赫爪の要求値表示は実はバグで、本当装備できるようになっていたりしないだろうかとあまりにも淡い期待を抱いてチェックして、何一つ変わっていないことに肩を落とした瞬間、甲高い女性の声が響いて思わずびくりと体を跳ねさせる。
シエルもノエルも、ヘカテーもその大声に驚いており、一体何事かとそちらに顔を向けると、くたびれた白衣を上に羽織って
シエルが『知り合いか?』と尋ねる視線を向けてくるが、会ったことすらないのでふるふると頭を振る。
「ど、どちらさま……?」
白衣を着ているので研究者、あるいは考察ガチ勢のプレイヤーであってほしいと祈りながら訪ねる。
「自己紹介なんてどうでもいい! あたくしがアナタ欲しいのはたった一つだけ!」
ずんずんと大股で近付いてくる女性。
その眼差しはまるで、得物を見つけた肉食獣の如く爛々と輝いており、ヨミがどう逃げようと絶対に追いかけ回してやるという何かを感じる。
やがて、至近距離まで来た女性がガッと肩を掴んで顔を近付けてくる。
「赫竜王バーンロットがいる赫き腐敗の森に、あたくしを連れて行きなさい! 報酬なら言い値で払うわ!」
はあはあと興奮しているように息を荒くする女性が、声高に言う。
───あ、これ結構アカンタイプの人だ。考察ガチ勢すぎてちょっと頭のネジぶっ飛んでいるタイプの人だ。
「そ、そういわれましても……」
「報酬が足りない? 何ならあたくしが抱えている財産を全て渡したっていい!」
「い、いえ! そういうわけじゃなくてですね!? ボク自身ワープポイントでしか移動手段がなくて、具体的にどこにあの森があるのかって言うのが分かっていないんです!」
現在プレイヤーが発見している最前線の街というのはシクスティアルと呼ばれている街で、赫き腐敗の森はその一個手前のクインディアという街が最寄となっている。
ただ最寄りだからと言って近いというわけではなく、こうしてサービス開始から一年経っているのにヨミ以外にフリーデンにすら到達していないのだから、余程巧妙に隠されているのだろう。
アルベルトに頼めば地図をくれるだろうし、セラのためにクインディアに癒しの聖水や浄化の聖水を買いに行っていたアルマにお願いすれば、案内だってしてくれるはずだ。
ではなぜクインディアのワープポイントを開放していないのかというと、まだ最初のエリアすら満足に探索しきれていないからというのがデカい。
そして解放できているのがワンスディアとフリーデンのみという関係上、仮にこの女性がクインディアまで来ても案内することができない。
アルマに頼んで案内してもらってもいいかもしれないが、どうにもこの女性はただあの森に行きたいだけじゃないように感じる。
「そ、そうなのね……。それは残念だ……」
「えっと、なんかごめんなさい?」
「気にしなくていいよ。そりゃそうだよね、ヨミちゃんは始めたばかりの新規プレイヤーなんだし、まだ行き方なんて分かるはずもない」
「……その、グランドキークエストって言うのをクリアしていr」
「詳しく聞かせてもらおうじゃないの!?」
「うひゃい!?」
なんか申し訳なくなってきたので、ヨミがクリアしているグランドキークエストの情報を少しだけ開示しようと口にした瞬間、水を得た魚のように生気に満ち溢れた目を向けて来た。
食い気味に来たので思わず変な声を上げてしまい、咄嗟にシエルの後ろに隠れようとしたがまた肩を掴まれてできなかった。
「グランドキークエスト。それは七体の竜王に正式に挑むためにクリア必須なクエスト。その難易度の高さゆえにソロでのクリアはできないとされている。アナタはあの森ではソロが強制されているのにソロでクリアしたということだから、不可能を可能とした逸材! 是非っ、是非とも詳しく、それはもう詳しく教えてほしいのだけれど!」
「お、落ち着いてください!? 流石にグランドや竜王関連はそんな簡単に共有していいものじゃないと思うんですけど!?」
「ならあたくしがマスターを張ってる考察ギルドをサブマスターに完全委任するから、あなたのギルドに入れば問題ないわよね!?」
「本当に落ち着いてぇ!?」
目が怖い。怖すぎる。
何かのガチ勢というのはそれそのものに命を懸けている生き物だ。考察ガチとなると、その情報を得るためならどんな手段でも取ってしまうのだろう。
下手したら自分のこんな風になっていたのだろうかと、あり得たかもしれない未来に震えていると、うなじあたりにチリっとした感覚があった。
咄嗟に女性を抱き寄せて右手に影のショートソードを作り、戦闘モードに切り替える。
シエルは右足のホルスターにあるリボルバーのグリップを握っていつでも抜けるようにし、ノエルとヘカテーも己の武器を抜いて構える。
「まさかまた、こうしてPK連中に狙われるとは思わなかったんだけど……、こそこそしていないで出てきたら? というか、PKerってそうやってこそこそ気配を隠して奇襲を仕掛けないとまともに戦えないくらいなっさけない人なの?」
挑発するように言うと、魔術で姿を隠していたのか染み出るように姿を見せるPKたち。
以前とは人が違うので別のグループのようで、きっちりといい装備に身を包んでいる。
前と同じ装備に着られていると感じることはなく、対人に特化しているPKかと当たりを付ける。
「お前がヨミか。取引───」
一歩前に踏み出してきた大柄の男が話している途中で、真横から銃声が鳴ってその男の額を打ち抜く。
見ると、無感情に早撃ちを決めたシエルがおり、ポリゴンとなって消えて行った大男に向かってサムズアップをしてから反転して、びしっと下を指す。
「一昨日来やがれドブカスども」
そしてめっちゃ清々しい笑顔を浮かべて毒を吐く。
「取引? するわけねーでしょバーカ。情報が欲しいなら自分で苦労して集めたらどうですかぁ? それともぉ、こうやって人に頼らないとグランド関連を何一つ見つけられないほど頭よわよわなんですかぁ?」
それに便乗してできるだけイラつく笑みを浮かべながら言う。
後ろから突き刺すような視線を感じるが、今は無視してほしい。
「……───」
さて、ここからどうしようと頭の中で組み立てていると、後ろからヘカテーが何かをぶつぶつ言っているのが聞こえた。
もしやPKと会うのは初めてなのではないかと心配になって振り向くと、
「PKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロスPKコロス……」
「ヒェッ」
人形のように整っている顔には殺意以外の感情の一切が排除されており、両手斧を握っている両手が何かを堪えるようにぶるぶると震えている。
ほんの少ししか彼女のことを知らないが、抱いていた素直で元気ないい子という印象と大きくかけ離れているその様子に、思わず小さく悲鳴を上げる。
「うふっ、うふふふふっ……! PK、PKだぁ……! 何の役にも立たないゴミはぁ、お掃除してあげないと……」
「あ、あの、ヘカテーちゃん?」
あまりにも急激な変貌に、流石のノエルも少し引いている。
左手でインベントリを操作したヘカテーの眼前に、血液パックが五つほど出現すると、それを左手で掴んでぶつぶつと呪文を唱えるとパックが破れて、彼女の周りに五つの塊となって浮遊する。
「性根の腐ったその首、全部叩き落して魚の餌にしてあげます!」
五つの血塊が分裂して大量の血の剣となり、爆速で飛び出していったヘカテーを追いかけるように不規則に動きながら突撃していく。
PKと何かあったのか、特に何かあったわけではないがPKがよほど許せないのか、単身でPKたちに突撃していったヘカテーは、シエルの先制で一人潰されて士気がぐらついている相手の防御ごと両手斧と高い筋力値でねじ伏せていく。
戦闘態勢を取ったはいいが、暴走状態になってしまった彼女の近くで戦うと巻き込まれそうなので、ヨミは投げナイフで、シエルはリボルバーで援護することにした。
「な、なんだこいつ!?」
「ぎゃあああああああああああああ!?」
「こ、このチビ───むごっ!?」
「ひぃいいいいいいいいいいいいい!? 防御しても意味ないいいいいいいいいいいいいい!?」
「いやだああああああああああああ!? せっかく苦労して揃えたオレの装備をロストしたくなべぎゃ!?」
もはや阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
「あはははははは!! PKはぁ、全員死すべしい!!」
そしてそんな地獄絵図を作り出している張本人は、楽しそうに笑いながら次々とPKをクリティカルでぶちのめしていく。
数で不利だというのに、自分で操っているのかは不明だが不規則に動く血の剣軍もあり、死角からの攻撃は防げているし逆に相手を死角から攻撃している。
キレたら怖いタイプの人がいるのは知っているし、何ならノエルがまさにその部類なのだが、ヘカテーはノエルとは別のベクトルで怒らせてはいけないタイプだったようだ。
「……俺たちはPKは絶対にしないようにしような」
「元々するつもりはないけど、そうだね」
瞬く間に減っていくPKたちに少し同情しながらも、自分たちは決してPKをせず、ヘカテーのことを怒らせないようにしようと胸に決めたのであった。
それはそうと、あの血の剣を作って操る魔術がヨミの好みにぶっ刺さっているので、あれは是非とも習得してみたいと思った。
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