お風呂でガールズ(?)トーク
ここから一日一話投稿になります
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目を覚ますと詩乃はゲームの中からログアウトし、現実世界に戻ってきていた。
プレイヤーがゲーム内で意識を失うと、それを検知して自動でログアウトするように基本設定でなっているため、ゲームの中で眠ったらまたゲームの中、ということは起こらない。
ただしこれは後でいじることが可能で、一月に一度だけという制限ではあるが、ゲームの中で一夜を明かすことも可能だ。
目を覚ますと時刻は七時半となっており、その時間を見た瞬間顔面蒼白になったのは言うまでもないだろう。
大慌てでのえるに連絡して、全力の謝罪を敢行してから夕飯にあり付けはしたのだが、帰宅するよりも先に腕を掴まれてのえるの部屋に連行された。
中学生になってからは行く機会のなくなったのえるの部屋に足を踏み入れ、綺麗に整えられていてほのかに甘くいい匂いがすることにドキドキしていると、にこりと満面の笑みのはずなのに震えあがるような怖さを感じ、これは割と本気で怒っている時の笑顔だと自分から床に正座する。
ちなみに妹の
実に薄情な妹だ。
「私が何で怒っているのか、詩乃ちゃんなら分かるわよねえ?」
「……はい」
消え入りそうなほど小さな声で返事をする。
のえるが怒っている理由。それはもちろん、ゲームを優先して食事を後回しにしたことだ。
今の時代、プロゲーマーという職業が昔と比べて一般化して、ゲームというジャンルそのものは広く受け入れている家庭も増えている。
昔は友達と遊びに行くと言ったら、サッカーをしに公園に行ったりどこか外に遊びに行くの意だったが、現代では友達と遊ぶ=ゲームをするに置き換わりつつある。
こんな時代ではあるのだが、それはそれ、これはこれだ。家族や友人と過ごす時間の方が大事だし、約束をしたのにそれをほっぽり出したりすれば当然悪いことだ。
のえるの怒りももっともなことなので、反論せず言い訳もせずに甘んじて受け入れる。
「とりあえず、言い訳だけでも聞こうかしら」
ふぅ、と一つ息を吐いてから優しい声色で、しかしそれなのにいまだに何か圧を感じる声で促してくる。
下手な誤魔化しをすれば、この後に何が待ち構えているのか分かったものじゃないので、全て素直に話す。
最初は、バトレイドで朝一番から対人戦を五回こなしたことや、森の中で武器スキルの熟練度や魔術の熟練度などを上げたり、フリーデンの人たちの手伝いをして回ったりしていたのをどこか微笑まし気に聞いていたが、バーンロットの左腕を使った武器をクロムに作ってほしいと依頼した辺りから、徐々に呆れが混ざり始めて来た。
途中で少年たちに、ほんの僅かな脚色ありの他ゲーの武勇伝を利かせた辺りではまた微笑ましげな眼を向けてきたが、アルマからセラが血を吐いて倒れたと聞かされたという辺りから、また呆れが混じって来た。
「……そ、それで、引くに引けなくなって一時間以上も、その、ロットヴルムって言うバーンロットの眷属と、真正面からガチファイトしてました……」
最終的にはものすごく呆れた目を向けられ、それがものすごく怒っているのではないかと感じてしまい、びくびくとしながら簡潔に話す。
「……はあぁぁぁぁぁ。まあ、お人好しなところがあるからしょうがないっちゃしょうがないかあ。空も前に、FDOのNPCは人間とほぼ変わらなくてほっとけないって言ってたし」
「え、あいつFDOやってたの?」
「うん。あの子一足先に推薦で高校受かってたじゃない? だから私たちよりも余裕があって、大会に行くちょっと前までやってたのよ」
それは初耳だった。
気に入ったゲームはすぐに勧誘してくるような奴なのにどうしてと思ったが、あの究極の負けず嫌いなことだから、少しでも先にステータス的なアドバンテージを得るためにあえて口にしなかったなと内心で苦笑する。
あとはその頃はまだ受験戦争中だったので、気を使っていたというのもあるだろう。
「ともかく、詩乃ちゃんはそれでそのセラさんっていう人は救えたんだよね?」
「多分、だけどね。ロットヴルムから撒き散らされてた赤い腐敗の霧が倒した後になくなってたから、状況的にもセラさんにかかってた腐敗は消えていると思うけど」
あの後すぐに意識を失ってログアウトしてしまったから、まだ確認できていない。
あの辺りはあのドラゴンの縄張りだったため、あれよりも弱いエネミーは近寄っては来なかっただろう。
アルマが町を抜け出して勝手にやってきたから、恐らくはフリーデンの男衆とフリーデンに駐在している衛兵たちが捜索しに来てくれているだろうし、後のことはそこまで極端に心配しなくてもいいだろう。
だがセラのことに関しては直接確認しなければ何も分からないので、のえるに許してもらえるのであれば自宅に戻って確認しておきたい。
「確認は後でさせてあげる。でも今は、ご飯を食べに来なさいって言って分かったって返事したのに、事情が事情とはいえほっぽり出しかけたことに対するお仕置きが必要ね」
「うっ……。や、やっぱりそうなる、よね……」
さて、一体何をされるのだろうか。着せ替え人形にでもされるのか、あるいはセラの安否を確認した後はすぐに戻ってきて、そのまま抱き枕にでもされるのか。
「今日も一緒にお風呂に入ってもらいます」
「…………うふへぇ!?」
最初は言葉の意味が理解できずにフリーズしていたが、ゆっくりとその発言を嚙み砕いて理解すると、瞬間湯沸かし器の如く顔を真っ赤に染め上げて奇妙な声を上げる。
ついでについつい、同年代の女子と比べるとあまりにも立派に育っている二つの膨らみに目が向いてしまい、それはダメだろうと理性で本能を捻じ伏せて即座に目を逸らす。
が、どうしても残っている男としての理性の方がやや強いようで、じりじりと視線が戻ろうとする。
「昨日も思ったけど、詩月ちゃんやおばさまに女の子のお風呂での体の洗い方とか髪の毛のお手入れの仕方を教えられているとはいえ、やっぱりまだ雑な部分が目立ってるからね。ここはきちんと、私が詩乃ちゃんに女の子の体と髪の毛のお手入れの仕方を教えてあげないと」
「ちょ、ちょちょちょちょっと、待って!?」
詩月と母がやたらうるさいので、言われたとおりに気を使ってやっているのだが、付け焼刃もいいところなのでのえるから見ても合格点とは行かなかったらしい。
長い銀髪はさらさらと指通りはいいし、肌も荒れておらずすべすべで肌触りもいいのだが、逃げようと後ろに下がろうとした詩乃を捕獲したのえる曰く、もっと綺麗になれるとのこと。
「お、教えてくれるのはありがたい、けど、一緒に入るのは流石に……。昨日も言ったと思うけど、今はこんなだけど元は男で、中身はまだ男のままなんだけど!?」
「でも
「その通り、だけどっ」
「それに昨日はさせてくれなかったけど、詩乃ちゃんの長くて綺麗な髪の毛を、私もしっかりとお手入れしてみたかったんだよねえ」
本命はそっちかと天井を仰ぐ。
もう既にのえるに捕獲されて身動きが取れないのだし、抵抗したところでどうしようもないので諦めて力を抜く。
強張っていた体から力が抜けたのを感じたらしいのえるは、逃げないようにと右手で詩乃の左手の指を絡めるようにして繋いで、一度詩乃の家に向かう。
下着や着替えを回収した後、再びのえるの家に戻りそのまま脱衣所に向かった。
「ぅ……や、やっぱり一緒に入るのは流石に恥ずかしい……」
「ここまで来て今更でしょー。昨日も一緒に入ったんだしさ。ほら、早く脱いじゃないなさい」
「あ、ちょ、まっ……!?」
躊躇いもなく次々と服を脱いで下着姿になったのえるを見て、彼女が先にお風呂場に入ってからにしようとするが、逃げられないように腕を掴まれて引き寄せられて、なされるがままに服を剥ぎ取られる。
あっさりと下着姿になり、小学生の頃の話ではあるが何度もお互いの裸を見たことはあるが、思春期真っただ中で今ののえるの肌色とその抜群すぎるスタイルは目に猛毒だ。
お風呂に入る前からすでにのぼせているかのようにくらくらするが、そんなのお構いなしに下着も外されて一糸まとわぬ生まれたままの姿になる。
手を引かれてお風呂場に入り、椅子に座らせられる。
鏡が正面にあって、湯船から湯気が上がって少し曇っているとはいえしっかりと二人の少女の裸体を映したそれは、大分刺激が強かった。
できるだけ見ないようにしようと目を閉じると、のえるがボタンを押してシャワーからお湯を出して、しっかりと丁寧に長い髪を予洗いする。
細くてたおやかなのえるの指で梳かされるようにしながらお湯で髪を濡らされて、昔もこうしてお姉ちゃんを発揮して面倒を見てくれていたなと、幼少期特有のあの恥じらいのなさに呆れる。
そんなことを思っているのを他所にてきぱきと進めていき、時間をかけて泡立てたシャンプーで髪の毛を洗ってくれる。
教えてもらった通りにやっていたつもりではあるが、こうして他人に洗ってもらうと全然違う。何より、のえるに洗ってもらうのがとても気持ちいい。
溶かされるような気持ちよさに目を細めて堪能していると、洗い終えたのかシャンプーが洗い流される。
「うん、やっぱりきちんとお手入れすれば全然違うわね」
「そ、それは濡れているからじゃなくて?」
「違うわよ。ま、上ったら違いがはっきりと分かるようになるでしょうから、その時にね。じゃあ次は体を洗うね」
「さ、流石にそれは自分でやるからっ」
「えー」
「えー、じゃない。お願いだから流石にそれは勘弁して」
髪の毛を洗ってもらっている時はそっちが気持ちよくて意識していなかったが、遅れて背中に柔らかいのがちょいちょい触れているのを思い出して、それでも大分いっぱいいっぱいなのに体もとなると、悪さをすることはできなくても理性が飛びそうだ。
心の中で思春期男子の性欲を舐めるなと叫びつつ、ダメだと言っているのに泡立てているスポンジをひったくり、スポンジで肌を擦るのではなく立てた泡を手ですくってそれで洗う。
スポンジでしっかりと擦らないと汚れが落ちないのではないかと心配になるがそんなことはないらしく、擦って洗うと乾燥やかゆみの原因になるのでダメだと言われた。
のえるもスポンジで洗うのではなくしっかりとふわふわに立てた泡で手洗いするタイプらしく、ダメだと言ったのに柔らかな泡で背中を洗ってきた。
いきなりだったので思わず変な声が出てしまい、恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じたが、変に反応すればからかわれそうなので何も言わずにおいた。
髪の毛と体を洗い終えた後、お湯に髪の毛が浸からないようにまとめ上げてから先に湯船に浸かる。
温かいお湯が心地よく、自然と体が弛緩して疲れがお湯に溶けていく。
「……っ」
お風呂を堪能するために閉じていた眼を開けると、湯気で少しだけ見えづらくなっているがそれでもなおはっきり見えるのえるの裸体。
その中で一番目を引く大きな果実に目が吸い付き、引っ張られるようにその先端にある桜色に視線がずれていき、咄嗟に背を向けることで視界から外す。
彼女の言う通りもう女の子だし、元の性別に戻ることはもう決してないので早いこと女の子の生活に慣れたほうがいいのは分かっているが、一週間程度で慣れるのなら苦労などしない。
脳裏に強烈に、鮮烈に焼き付いてしまった幼馴染の裸を頭の中から追い出そうとするが、すぐに消してしまうのはもったいないという内に潜む醜い欲望がそれを邪魔する。
だが勝手に見続けて勝手に記憶し続けるのはよろしくないと理性で対抗するが、男としての本能は強く反発してくる。
「どうしたの?」
「うひぇい!? な、何でもないっ!?」
いつの間にか洗い終えたらしいのえるが、こっちの葛藤などお構いなしに無防備率100%の、眩しすぎる裸体を見せながら湯船に入ってくる。
至近距離で直視は本気で不味いと背を向けると、後ろから抱き寄せられて、柔らかいものががっつりと背中に触れて思考が完全にショートして停止する。
ちなみに昨日も同じように後ろから抱き寄せられて、同じように思考停止している。
「ねえ、詩乃ちゃん。今はちゃんとゲームを楽しめてる?」
身動き一つ取れないでいると、何かを心配するように小さめな声で耳元で言われる。
どうしてと思う間もなく、理由を察する。こんな姿になった直後は精神的に不安定だったし、連日涙を流して完全に引きこもっていた。
詩月経由でそれはのえるに伝わっているし、FDOを一つ譲ってくれたのだってこんな状態になっても楽しんで好きなことに打ち込んでほしいからだ。
のえるは今の詩乃のゲーム内の現状を、配信でしか知ることができない。
配信をする以上は色々と取り繕わないといけないため、楽しんでいるように見えて実はそこまで楽しめていない、というのもあるかもしれないと思ったのだろう。
「大丈夫、楽しめてるよ。楽しめてなかったら、多分こうしてのえるにお風呂に連行されることはなかったと思うよ」
「そっか、よかった」
もし楽しめていなければ、後ろめたさや罪悪感こそあれど『所詮は一NPC』と切り捨てていただろう。
だが今は全力で楽しめている。彼らをあの世界の住人の人間と認識し、たった一度しか会ったことのない一人の女性を助けるために全力を出し尽くした。
プレイ二日目に黒歴史を大量生産してしまったが、この三日間は確かに充実した楽しいゲームライフを送れている。
「思い切り楽しんでいるようで何よりだよ。でも、ご飯とかはきちんと食べること。いい?」
「はい、ごめんなさい。反省しています」
「反省しているならよろしい。あーあ、空早く帰ってこないかなー」
「一緒に始めなくたっていいだろうに」
「同じタイミングで遊びたいの。何より、私は脳筋で詩乃ちゃんも脳筋寄り。そうなると突撃しか能のない女の子パーティーになっちゃうから、私たちをまとめるブレーンが必要なのよ」
「ボクが脳筋寄りなのは否定しないけど、ガチ脳筋ののえるにはあまり言われたくないかも」
「む、言ったなー? そんな悪いこと言う子にはこうだ!」
「わひゃあ!? ちょ、どこ触って……あっはははははは!! や、やめて、くすぐったい!」
わき腹をくすぐられ、ぞくぞくと背筋を震わせながらくすぐったさに笑い声をあげる。
仕返しをしようにも後ろから抱かれるような形になっているのでできないし、やり返すにも正面を向く必要があり、それは刺激が強すぎるのでできない。
結局のぼせかけるまで一方的にのえるにくすぐられ、お風呂場に詩乃の笑い声と楽しそうなのえるの声が反響し続けた。
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