第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部

清水 魚心

昼下がりひとり道ゆく春の家こえかける影人にゃらざりけり

歌意


お昼頃で人気のない住宅地を春の陽光に包まれながら独りで歩いていると、一軒の家に何かが蠢く気配がした。

門塀を「越えかけた」その影に「声掛けた」ものの、それは人ではなくて猫であったのだなぁ




この歌にはかなり技巧を凝らしました。

まずなんといっても猫ですよ、猫。

「人にはあらざりけり」を音便変化させて「にゃ」とし、猫という語を一度も使わずに猫を表現しました。


次に掛詞です。

「こえかける」が、猫が塀を「越えかける」瞬間と、動く影に自分が「声かける」様子の二つを表しています。


極め付けは本歌取りです。

この歌は同じく猫を題材に詠まれた


顔よきが まづ貰われて 猫の子の

ひとつ残りぬ ゆく春の家


という佐佐木信綱さんの短歌を本歌取りしたものなのです。

本歌取りというと、ただ元になった短歌に使われている言葉を真似して使えばいい、それだけではなくて、本歌の持つ全体の雰囲気や詠み手の世界観をしっかりと踏まえることが大切なのです。


それでいうとこの短歌では、本歌の一匹残ってしまった子猫の寂寥感を、人だと思って話しかけた影が猫のもので、結局この春の住宅地には自分ただ一人だけなのだという孤独感に繋げているので、よくできたつもりでいます。


まぁ、カクヨム短歌・俳句コンテストの結果はからっきしだった訳なのですがね……笑


選定委員の佐佐木定綱さんがこれに気づかなかったはずはないのですが……どうしてでしょう?

流石にちょっと媚を売りすぎだったのかしらん。

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部 清水 魚心 @uogokoro

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