第16話 フレンチキス(世界基準)するなら…

実力テストの結果は87点だった。


奥さんは狂喜した。実乃里ちゃんのお父さんの喜びようも凄いらしい。


…実乃里ちゃんの落ち込みは凄かった。


それを見た奥さんたちは、実乃里ちゃんの向学心?をさらに喜び、全幅の信頼の証とか言い出して、金一封及び来月からの俺の時給は倍になった。


それをもたらした我が生徒は…授業時間になっても布団を被ったままベッドから出てこない。

奥さんはそれを目の当たりにしながらも「後はよろしく」とばかりに困惑した俺と、ケーキと紅茶を置いて出て行ってしまった。


「実乃里ちゃん…」

思わず伸ばした俺の手は空中で止まった。


「(まさかとは思うが…こいつ裸で寝てるんじゃないだろうな!?)」

…有り得る…最低でも下着姿で寝ているような気がする。

…不用意に近づいて、ベッドの中に引き摺りこまれたら…


実乃里「失礼ですわ!そんな破廉恥なことは致しませんわ!」

「うわあ!」


こ…こいつ、心が読めるんかい!?

突然。布団を跳ね上げてその身体を現した実乃里ちゃんは、泣き腫らしたように真っ赤な瞳だったが、服はいつもの制服姿…ミニのタータンチェックのスカートが今にも捲れそうだけど…ちょっとだけ着崩れた美少女だった。


「惜しかったね」

実乃里「先生…わたくし悔しくて…悲しくて」

「いや…頑張ったよ、本当に」

白々しかったかな…実乃里ちゃんは再び布団を被ってしまった。


「実乃里ちゃん、約束通り今度の日曜日にドライブに行こう。奮発して今度は箱根のほうに行こうか?日帰りで温泉でも入って豪華な昼食を楽しんで」

実乃里「温泉…ご一緒に?」

「…別々で!」

実乃里「……」


実乃里ちゃんが頑なにベッドの上で動かなくなった。

不味ったかな…


「そんなに楽しみだったの?フレンチキス」

実乃里「何度も何度も答案を見返しましたわ…何度も何度も何度も何度も…」

怖いわ!

実乃里「クラス1数学に強いくそガリ勉ボウヤにも媚びへつらって…間違った箇所の詳細まで教えて貰って」

うん、その子嬉しかっただろうな…実乃里ちゃんみたいな超絶美少女に頼られて。

実乃里「僕がいつでも教えてあげるよ…とか、上から目線で言われて…思わずカッターでメッタ刺ししそうになりましたわ…でも、採点に間違いは無く…」

怖い…美少女の闇って本当に怖いわ。


でもな…


「そんなに楽しみだったなら、軽くやるか?舌と舌を使ったキス」

実乃里「…えっ!本当ですの!?」

「…但し」


俺は実乃里ちゃんに提案した。

・ドライブを辞めて電車デートにする。

(危険な車密室を避ける)

・ク⚪ニは無しで。

・デート中、ひと気の無いところでフレンチキスを試してみる(密室を避ける)


実乃里「…どこに行かれますの?」

「水族館なんかどうだい?品川とかならおしゃれで良いデートスポットだよ?」

暗闇に紛れるし…


実乃里ちゃんがやっと…ベッドから出てきた。服装や髪を整えながら。


実乃里「先生?であれば『葛西臨海公園』の水族館が良いですわ!マグロやペンギンさんにお会いしたいですわ!」

「…良いよ、君が行きたいなら。葛西臨海公園にしよう」

実乃里「はい!…あ!先生…とても楽しみなのですが一週間待って頂けますか?今週の日曜日は用事がございまして」

「一週間後だね?大丈夫、付き合えるよ」

実乃里「嬉しい!」


やっと…やっと笑顔を見せてくれた実乃里ちゃんと、俺は授業を始めた。


可愛いな…と思った俺は…やっぱり甘かった…

『葛西臨海公園』…そこには大いなる罠が隠されていたのだった。


※本日は19時にもう一話投稿予定です。


(再掲載)【近況ノートにて、実乃里ちゃんのイメージ画を投稿致しましたっ!(^ω^)】

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093078672225277

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