第34話 結成!キャットタワー探索隊!
◇
クロトの熱烈なお出迎えを終えた俺たちは、リビングへと向かう。
するとそこには何事もなかったかのように、猫ハウスの中から俺たちを見るクロトがいた。
「ちょっと心配だったんだけど、すっかり落ち着いてるみたいだね」
木陰さんがホッとしたように微笑む。
柔らかな笑顔が本当に素敵だ。
「みたいだな」
さすが木陰さん。
『いたずらしやがって、こいつめ。なに素知らぬ顔して座ってやがる。こちとら危うくスケベ男子に認定されて、入学早々に高校生活が崩壊するかもしれない大ピンチだったんだぞ?』
とかなんとか思ってた俺と違って、天使のように優しい。
「もしかして運動不足だったりするのかな?」
「ストレス発散だったってことか。そういや昔、キャットタワーが置いてあったな。もしかしたら物置小屋を探せばあるかもしれないから、後で探してみるよ」
「だったらせっかくだし今からみんなで探しに行かない?」
と、陽菜がそんな提案をしてきた。
「別にいいけど、普通の部屋に物が置いてあるから、3人も入ったらかなり狭いと思うぞ?」
「狭いかもだけど、そっちの方が早いでしょ? 3人いれば――なんとかって言うし」
「3人いれば文殊の知恵だね、陽菜ちゃん」
「盛大にショートカットしたな……」
大事なところを全部ぶん投げてるじゃないか。
「ところで文殊って、なに?」
「お、俺に聞かれても……」
急に視線を向けられても困る。
俺はすかさず木陰さんに視線を再度パスした。
すると、
「たしか、ものすごく頭のいい仏様のことだったような……?」
どうもそういうことらしい。
スマホで調べれば答えはすぐわかるんだけど、そこまですることでもないというか。
そこでイチイチ調べちゃうのは、ちょっと空気読めてない感があると思う。
「じゃあ美月のおかげで文殊さんが誰かもわかったし、キャットタワーを探しにレッツゴー!」
というわけでキャットタワーを発掘すべく、俺は2人を引き連れて2階の物置部屋に案内した。
「ん~、思ってたより狭い♪」
「陽菜ちゃん、その言い方はちょっと……」
陽菜のストレートな物言いに、苦言を呈す木陰さん。
「だから言ったじゃないか」
「物を置いてるから狭い。うんうん、この世の道理だね」
「でも綺麗に整頓されてるから、すぐに見つかりそうな気はするよ?」
「3人もいるしな」
「じゃあ早速探そうよ。アタシはこのあたりを探すから、美月とたくみんはそっちを探してね」
「お、おう」
なんか変な分け方だな?
普通は俺が一人で、仲良しの陽菜と木陰さんが一緒だよな?
的なことを思ったものの。
変に意識してると思われるのも恥ずかしいので黙っておく。
基本ヘタレな俺です。
「じゃあ拓海くん、一緒に探そっか」
「そうだな。ちゃっちゃ見つけちゃおう」
俺たちは陽菜の提案に従って、2組に分かれてキャットタワーを探し始めた。
「分解してるにしても、結構大きい箱に入ってるはずだよな。これとかどうだろ?」
さっそく開けてみると、そこには箱の中に緩衝材の白い紙とともに綺麗に収納されたお内裏様とお雛様――いわゆる「ひな人形」が入っていた。
「これ、ひな人形だよね? わわっ、すごく綺麗……」
「そういや、小さい頃に見せてもらったことがあるな。ばあちゃん、まだ置いてたんだ」
「なにー、呼んだー?」
陽菜が俺たちの方へと視線を向ける。
「ごめん、陽菜を呼んだんじゃなくて、雛人形があったんだよ」
「雛人形って、3月3日に飾るやつだよね? 見たい見たーい!」
陽菜が俺たちの方へと寄ってくると、しゃがんで雛人形を眺めていた俺と木陰さんの肩に手を置きながら覗き込んできた。
ただ手を置かれただけなのに、服越しに感じる陽菜の手の感触に、ドキッとしてしまう。
顔が赤くなっていないといいんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます