第33話 ふにょん。ふにょふにょん。~キラキラサンドイッチ~
「確認してみないとわからないけど、スマホ越しにクロトの動きを追えてたから、多分撮れてると思うぞ」
「やった! 見せて見せてー! ちょお見たーい! 今すぐー!」
「私も見たいなぁ。拓海くん、いいかな?」
「全然OK。じゃあ再生するな」
俺はスマホを操作すると、録画したばかりのクロトの動画を再生した。
すると陽菜と木陰さんが、俺の両サイドからスマホの画面を覗き込んでくる。
2人にキラキラサンドイッチされる俺。
ふにょん。
ふにょふにょん。
俺の両肘のあたりに、柔らかいものが触れている感触があるんだががががががガガーリン!?
しかも俺の顔のすぐ横に陽菜と木陰さんの顔があって、いい匂いがするし、吐息や息遣いまで聞こえてくるんだが!?
落ち着け。
落ち着くんだ中野拓海。
ちょっと女子に密着されたからって、何を目に見えてテンパっている。
そもそも2人はクロトの動画を見たいんであって、俺なんかはアウト・オブ・眼中。
余計なことを考えずに動画に集中しろ!
「やっぱクロト可愛い~!」
「ねー!」
ふにょん。
ふにょふにょん。
「撫でられてるクロトの顔ってさ、なんか仏像みたいじゃない?」
「それわかる~。糸目で気持ちよさそうにしてるのが、そっくりだよね~!」
ふにょん。
ふにょふにょん。
「ご利益とかありそう~」
「ありそうだよねー」
ふにょん。
ふにょふにょん。
くっ、俺は動画に集中しようとしているのに、2人が盛り上がるたびに、左右から柔らかサンドイッチされてしまって、どうにも集中できないんだが!?
先生!
女の子とは無縁だったモブな男子高校生の多感なアオハルに、キラキラやわやわサンドイッチは刺激が強すぎると思います!
しかし2人に気をとられているせいもあって、俺は気付くことができなかった。
この後に待ち受けている恐怖に。
「そろそろだよね」
「うん、そろそろ」
画面の中のクロトが突然立ち上がったかと思うと、間髪入れずにダッシュを始めた。
それはいい。
それを見るために動画を再生していたのだから、むしろ撮れていないと困る。
だがしかし。
ビックリした陽菜がお尻を上げたところでパンツがもろ見えになってしまうシーンがバッチリ撮影されてしまっていたのだ!!
「はわっ!?」
「陽菜ちゃん、パンツ見えちゃってるよぉ!?」
「ちょ、えっ!?」
撮影時はクロトしか見てなかったから、マジで気付いてなかった!
「たーくみーん? これどーゆーことぉ?」
「拓海くん? これは説明がいると思うなぁ」
両サイドから俺を詰問する声が聞こえてくる。
いつの間にか俺の両腕は左右からロックされていた。
逃げ場はない。
天国から地獄。
絶体絶命の窮地に追い込まれる俺。
『でも見せパンなんだろ?』などとは間違っても言えない。
言ったら死ぬ。
社会的に。
そもそも問題のポイントは「見せパンかどうか」ではなく、「撮影した」ことにあるからだ。
それくらい俺もわかっている。
だから俺は必死に言い訳をした。
「信じられないかもしれないけど、マジで違うんだ。これは不可抗力なんだよ。そもそも俺は陽菜のぱ、ぱ、パンツが映ってるなんて思ってもなくてだな」
「へー?」
「ふーん?」
おおう、声が冷たいよぉ!
「だってそうだろ? 映ってるって知ってたら、みんなで一緒に見たりするわけないよな? 録画ボタン押し忘れてた、とかなんとか言って隠そうとするはずだろ?」
マジのガチで必死だ。
高校1年生の春から社会的に死ぬわけにはいかない。
「あ、そっか。そうかも」
「言われてみれば、そうだよね」
「だ、だろ?」
「でも映ってるのは事実だよねー」
「えっと、まぁ、はい」
「というわけで、たくみんは無実。だけど動画は没収。アタシたちに送ったら、たくみんはデータを消しておくように」
「もちろん了解だとも。じゃあ送ってから、2人の前で消すな」
俺はライングループを使って2人に動画を送ると、2人にスマホを見せながら、元データをしっかりと削除した。
ふぅ、やれやれ。
これで事なきは得た。
俺は大きく安堵する。
そうさ、こんなものはない方がいいんだ。
あっちゃいけないんだ。
間違っても惜しいとか思っちゃいけないんだぞ、俺。
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