第13話「うそつきー。絶対見てたしー。もぅ、たくみんのえっち」
そして刺激が強いと言えば、木陰さんもさることながら陽菜の方が圧倒的に強烈だった。
というのも、陽菜は俺にヘッドロックをした時に傘を投げ捨てたせいで、まぁまぁしっかり濡れてしまっていた。
そのせいで制服のブラウスが透けてしまっていたのだ。
薄緑色のアレが完全に透けブラしてしまっている。
さらに水気でブラウスがピッタリと肌に張り付いているせいで、木陰さんほどではないものの、これまた大きなお胸が激しく強調されていて、しかも第二ボタンまでブラウスのボタンが外されていることもあって、谷間とか谷間とか谷間とか谷間とかが至近距離にあって、俺は目のやり場にとても、とても、とっっっても困っていた。
おおおおおおおおおおおお落ち着け俺。
「うーん、タオルじゃちょっち無理かなぁ。ねーねー、たくみん。ドライヤーある? あったら借りたいなー」
「あ、ああ。洗面所にあるから案内するよ」
話しかけられた瞬間、俺は慌てて陽菜の胸元から視線を逸らした。
「? たくみん、なんで向こう向いたの? 人の話は顔を見て聞かないといけないんだぞー。お母さんに習わなかった?」
陽菜はそう言うと、あらぬ方向を見ていた俺の前に、わざわざ回り込んでくる。
しかも妙に距離が近い。
俺の顔のすぐ前に自分の顔を持ってきて、俺の目を覗き込んできた。
ちょ、だめだって。
そんなあられもない姿でドアップで迫られたら、俺のアオハル(比喩表現)が大変なことになっちゃうだろ!?
「陽菜ちゃん陽菜ちゃん、ブラウス透けちゃってるから~!?」
「え? 透け……? はわわっ!?」
木陰さんに指摘されて自分の状況に気付いた陽菜が、両腕で身体を抱くようにして胸元を隠した。
「み、見た?」
「ミ、ミテナイヨ」
「うそつきー。絶対見てたしー」
「いやいや、見てない見てない。こう見えて俺は紳士だ」
「わたし、何を見たか言ってないんだけどー? 紳士って何のことかなぁ?」
「誘導尋問かよぉぉぉぉ!?」
「もぅ、たくみんのえっち」
「ちょ、ちょっと待って欲しい! 俺はマジで見ないようにしたんだよ。なのに視線を外した俺の前に回り込んできたのは、陽菜の方だからな?」
俺は必死で言い訳をしたのだが。
「あはっ、冗談だってば。ほんと、たくみんは純情ボーイだねぇ。そういうの、嫌いじゃないぞー」
「むぐ……っ、また俺をからかったな?」
「だってたくみん、イチイチ反応がお年頃で可愛いんだもーん。だからつい、ねー♪」
「くっ……!」
どうやらそう言うことのようだった。
「じゃあたくみんで楽しんだことだし、ドライヤー借りるねー」
「はいはい。そこ出て右のドアを開けたところが洗面所で、大きな鏡の脇にぶら下げてるから、好きに使ってくれていいよ。すぐわかるからさ」
俺が若干投げやりに答えると、
「はーい」
陽菜は元気よく返事をして、洗面所に向かった。
すぐにブオーーーーとドライヤーの音が聞こえてくる。
「なんか、ごめんね拓海くん。陽菜ちゃんは、えっと普段からこんな感じではあるんだけど、今日は特にテンションが高いみたい」
木陰さんが申し訳なさそうにつぶやいた。
「ううん、全然。なんだかんだで俺も楽しいし」
「そうなんだ?」
「実は俺、まだ高校に仲のいい友達がいなくてさ。だから久しぶりにこうやっていろいろ話ができて、からかわれたりもして、すごく楽しかったんだ」
しかもそれが1年生美少女ツートップの木陰さんと陽菜の2人と来たら、これで楽しくないはずがない。
「だったらよかった」
なんてやりとりをしてる間に――よほど気持ちよかったのだろう――子猫はいつの間にか木陰さんの腕の中で寝入ってしまった。
見るからに身体をだらりと弛緩させて、完全に安心しきっている。
しかも寝ながらまだ、ごろごろ、ごろごろと喉を鳴らしているあたり、アッチアチのホットタオルで身体を拭いてもらえて相当気持ちよかったらしい。
「完全に寝てるな。身体も心もホッとしたのかな?」
「鼻もスピスピいってて、リラックスしてるみたいだね。ほら、近くで聞いてみて?」
促されて子猫に顔を近づけてみると、たしかにスピスピとちょっと間の抜けた、なんとも可愛らしい寝息のようなものが聞こえてきた。
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