第31話 シム・グーンの決断



くそ 失敗した


わたしは今 シドベアーの上で何もできずにいる


手の感覚がない 剣を離すこともできない、力を使い過ぎた鋼鉄の鎧も使えない


ここまでなのか、いや奴はもう死にかけだ、最後のあがきにすぎない


早く死ね、止まってくれ


え? なんだこの衝撃は 何かにぶつかったのか?


「うわぁああああああああああああ」







あれからどれくらいたった?


私はまだいきてるのか?


ぐおおお 全身がいたい  あぁぁぁぁ あそこに転がってるのは 私の目か?


顔の右半分が燃えてるようだダメだ怖くて触れない 


残ってる私の左目から涙がでてくる ここで死ぬのか?


誰でもいい助けてくれ 「うぁぁぁぁぁ」




そのまま意識を失ってしまったようだ


目が覚めてもこの絶望的な状況はかわらない


ダメだ希望をもつんだ あそこには みんなが居た そして子爵様も


絶対に助けに来てくれるはずだ そうだ来てくれるはずだ






また意識を失っていたのか なんだ? 「うわぁああ 私を食うなーーー」


なにか知らないが中型の獣が私の右足を食ってる  残ってる力を振り絞りショートソードを抜き振り回す


なんとか撃退できたが また私の左目から涙があふれてくる


あぁぁ もう死ぬなら目を覚ましたくない



ぐうううう なに弱気になってるんだ、助けは来るはずだ希望を持つんだ


子爵様なにやってるんですか? ずいぶん 遅いいじゃないですか


「マリンは助けたのに 私は助けえてくれないんですか?」


「ししゃくさま ずるいで す」









奴の跡を追跡してからもう丸一日になるが まだ追いつけない どこまで逃げたんだやつは


一緒に歩いてるマリンやジュークも暗い表情で一言も喋らない


ここは小粋なジョークで場をなごませるべきなんだろうけど 


俺もまいってるのか 冗談がうかばない


先行していたマヌカが戻ってくる


「お館様 奴をみつけました」


「生きてるのか?」


「わかりません 動きませんが 休んでるだけかもしれません?」


生きていても長くわないと思うが 


「わかった 俺が確認する」


ジュークが顔をゆがめ口をだす


「子爵様 危険です 私が確認します」


どっちでも いいんだが


「いや ある程度まで近くに行けば 俺にはわかるから 俺が行ったほうがいいだろう」


マヌカに案内させて やつから100Mのあたりまで近くに移動する


駄目だここからじゃあ さっぱりわからないな


「みんな ここで待機しててくれ 見てくる」


みんなが頷くのを見て奴のいる所に移動を開始する


50M 40M 30M 20Mゆっくりと近ずく 


10Mもう確実だなにも感じない奴は死んでいる


最後はこの岩に激突して終わりか


「おーーーい 大丈夫だ 奴はもう死んでいる 来てもいいぞ」


みんなが 安心した顔をして こちらに歩き出す


しかし肝心のグーン卿は何処だ?


俺は 周りを注意深く 見回すーーーーーー



いたぞ 俺はグーン卿の元に走り出す


これは ひどいな 息はあるが 岩に激突したのか


顔の右半分が削り取られているようだし 右足が変な方向に曲がり


なんかカジラレたような跡がある 早急な治療が必要だな


「マリン 来てくれ グーン卿がひどい怪我をしている」


俺は大声でマリンを読んだ


走ってきたマリンが一瞬硬直したのが わかる


「シム? しっかりして」


すぐにやるべきことを 思いだしたようだ


「治療を始めます 子爵様 シムの頭を膝の上にのせておいてくれますか?」


頷き彼女の頭を慎重に俺の膝の上にのせる


「シムいま直してあげるからね」


グーン卿の体を調べ始めるマリン


お グーン卿の目があいた 意識が戻ったようだな


「グーン卿 遅くなってすまない」


グーン卿は まだ朦朧としてるのか俺の目を見て よくわからないことを言い出す


「ししゃくさまーーおーーーそーーー」


「グーン卿 無理して喋らなくていい」


「ししゃーー」


駄目だなこれは起きてそうそうなんだが 眠らせておいた方が良さそうだ


俺はグーン卿の頭に手をのせる しばらくすると やすらかな寝息をたてはじめた


「シムを眠らせたんですか? 子爵様」


マリンが確認してくる


「ああ あと痛みもやわらげておいた」


「ありがとうございます 子爵様」「うぅぅぅ」


「すいません つい 治療をつずけますね」


そのまま治療をしてるマリンを見ていると マヌカたちがなにかしてるのが見える


「マヌカ なにをしてるんだ?」


マヌカがこちらを振り向き答える


「はい お館様 騎士様を運ぶ簡易ベットを作ってました」


すごいなお前ら服と手持ちの道具だけで そんなもの作れるのか?


無人島にいく機会があったら こいつらのうち誰か一人つれていかないとな


そんなこと考えてると 治療が一段落したようだ


「どうだねマリン?」


マリンは暗い顔をしている あんまり芳しくないようだな


「はい いまは応急処置ですが 時間をかければ ほとんどの傷は完治します」


「ですが顔は右目ごと肉が削り取られています これはどうにもなりません」


「そうか顔に大きな傷が残ってしまうね」


マリンは悲しそうに大きく頷いた


「問題なのは右足の方です骨が出るほど獣にかじられたみたいです」


マリンが言いずらそうだが


「右足を切断しなければ助からないかもしれません」


やっぱりそうなるか 獣は何かしらの細菌を持ってるだろうし 


この暑さだもう骨に細菌や雑菌が湧き出しているだろう


それが血管を通して内臓器官にたっしたら もう助からないだろうな


「く教会に置いてきた装備が ここにあれば消毒できたのに」


たられば だな ジュークが慰めの言葉を


「しょうがない あの時は 緊急に必要になる物を優先するしかなかったんだ」


悩んでててもしょうがないな


「わかった俺が切断する」 「俺はその手の作業がとくいだ」


みんなが俺の顔をみる マリンが口を開く


「シムはどう思うでしょうか? 右足がなくなれば 王国騎士シム、グーンは死にます」


たしかにそうだな 本人の意思を確認するべきだな


「たしかにそうだな彼女を起こそう」


グーン卿の頭に手をおく すこしたつとグーン卿が目をあける


「グーン卿 俺の言葉が聞こえているかな?」


まだ 目をパチパチしているが だんだんと意識がしっかりとしてきたようだ


「グーン卿 俺の言葉が聞こえているかな?」


グーン卿が俺の目をみる


「はい子爵様 聞こえています」


気は進まないが 俺が言わないとな


「グーン卿 これから言うことをよく聞いて 考えてほしい いいかな?」


グーン卿が頷く


「よろしい グーン卿まず君の顔なんだが 完全に治すのは難しいだろ 


かなり大きめの傷が残ってしまう」


グーン卿が うなずく


「つぎに右足なんだが いま切り落とさないと 君の命は助からないだろう」


グーン卿の手が 俺の膝をきつく握る


「右足がなくなれば王国騎士シム・グーンは死ぬだろう」


グーン卿の目が俺から離れない


「君が選ぶんだ どうしたい?」


グーン卿の目が閉じられる




グーン卿の目が開きまた 俺の目を見る 決断したんだろう


「王国騎士シム・グーンの死は 私自身の死です」


「そうか それが君の決断なら尊重しよう」


彼女の意志は確認できた 


「マリンこのままでかまわん 右足の傷をふさげ」


マリンが治療を始める その表情からはなにも読み取れない彼女も覚悟を決めたんだろう


「簡易ベットを作った それに移すぞ すこし揺れるだろうが がまんしてくれ」


グーン卿が頷く 二人に指示して簡易ベットにのせる


簡易ベットってより 動くハンモックって感じかな


「村に戻ろうか」


みんなが頷き移動を開始する


彼女を眠らせて村への道を戻るあいだ だれも口を開かなかった

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