第25話 インターバル



「マリン ハウシリドの治療を頼むぞ」


教会に着いた私は回復士のマリンに指示を出す


「はい ハウシリドちょと痛いけど我慢してね ムルファス、マルロム


 二人でハウシリドを抑えててね」


ここにマリンに任せて子爵様の所に報告にいくか 


「子爵様の所に行ってくる」


「わかりました、お供はいりますか?」


「いや大丈夫だみんなは休んでくれ、今日はもう何もないだろ」


子爵様の家は たしかあの辺だったよな あぁ あれだな見えてきた


「ドン ドン」 「夜分に失礼します 王国騎士シム・グーンです」


中で人の動く気配がするな こっちに向かってくるようだ


「はい お待ちください」


女性の声? 女中かな? ドアが開き一人の女性が顔を出す


「夜分に失礼 私は王国騎士シム・グーン 子爵様にお取次ぎをお願いします」


するとその女性は ちょと困ったような顔に


「すみませんモディは いえヌーベル子爵様はもうお休みになりました」


な あの状態で ねたのか? どんな神経してるんだ?


「子爵様を起こしましょうか?」 女性は困り顔のまま聞いてくる


いや失敗しましたって 報告するだけだしな


「いえそれには 及びません 改めて明日の朝 報告にまいります」


「失礼ですがお名前を教えてもらってもよろしいですか?」


「あ ごめんなさい 私はモディ・ヌーベルの母親でマーサと申します。」


やはり子爵様の母親か、 雰囲気とかは全然ちがうな


「では明日の朝改めまして」


「あの よろしければ明日の朝は騎士の方みなさんで おいでください」


「用意した夕食が朝食になってしまいますけど もったいないので(笑)」


たしかにそうだな


「わかりました明日 全員で朝食をいただきにまいります」 


「では今晩はしつれいさせていただきます」


教会に戻った 私はマリンに経過を確認することにした


「マリン ハウシリドの治療は?」


「完璧よもう完治してるわ」「それより子爵様はどうだった? お怒りとか?」


「いやもうお休みになったそうで お目にかかれなかった」


マリンやみんなも 驚いたようだな


「え あの後どうなったか きにならなかったの?」


まあ普通はそうだろうな


「たぶんあの子爵様のことだ 気にしてもしょうがないから寝たんだろう?」


「まあ それはいい でだ 改めて明日の朝報告にいくんだが


今日の夕食が余ってるらしいので」


「みんなで朝食をいただきに行くことになった」 「わかったか?」


「わかりました」


さて私も体を軽く拭き 寝るとするか








「ドン ドン」


「王国騎士シム、グーンです子爵様にお目どうりを」


扉が開き


「おはようグーン卿 騎士諸君」 


「昨日はすまなったね、子供には規則的な睡眠が大事なんでね(笑)」


「いえ 子爵様の睡眠を妨害するほどの事ではありませんので」


奥からマーサ殿もでてきたな


「どうぞ中に庭に朝食の用意ができております」


要塞を出てから簡易食だけだったから ありがたいな   うん どうしたんだ子爵様は?


「マーサその朝食は 昼ごはんにできるかな?」


「え? モディなんでですか?」


子爵様の視線の先を見て理解できた 慌てて走ってくる二人 ハミル殿とトマス殿かな


「おやかたさまーーー」「おやかたさまーーー」 何があった? 二人とも真っ青だぞ


「落ち着け 深呼吸しろ 」 「スーハ スーハ」 「よし何があった?」


「ご ゴメスの家が襲われました」 


くそ 


「グーン卿行くぞ トマス歩きながら話せ」


「はい お前たちもついてこい」 「は」


「トマス 被害は?」 「囮の家畜はいなかったのか?」 「見張りはどうなった?」 


「奴は今どこにいる?」


いちどに聞きすぎだろ


「ははい 被害はまだわかりません 見張りの者がゴメスの家が襲われたと先ほどきました」


「すいません まだ ゴメスの家が襲われた以外の事が よくわかっておりません」


行って自分で確認するのが一番みたいだな


「子爵様 奴がどこにいるか確認がとれておりません 


我々が向かいます 子爵様は安全な場所に」


「いや今回は着いていこう、万が一奴とでくわしたら、逃げるんで盾になってくれ」


いや逃げるなら最初から逃げててくれたほうが楽なんだけどな


「迷惑そうな顔するな たぶんだが 奴はもういないだろう」


??? なんでそう思うんだ?


「子爵様 なぜそう思うんですか?」


「なんとなくそう思うんだ」


「理由になっていませんよ?」


子爵様が不敵に笑う 「考えるな感じろ(笑)」


またそれか 聞いたことないが どこのだれが言ったんだ 適当な事いいやがって


「急ぐぞ すこし走るか」


あぁ しょうがない 危ないと感じたらすぐに逃げてもらうしかないか


「われらも走るぞ つずけ」








あそこがゴメスとやらの家なのかな? 見張りをしてた者かな? 何人か集まってきたが


子爵様が集まってきた男たちに話を聞いてる


「この中に今 奴がどこにいるか分かるものはいるか?」


わからないようだな


「すくなくとも もう この近くにはいないみたいだな」


「ゴメスの家が襲われたとき見張りをしてた者は誰だ?」


一人の男が前に出る


「はい わたしですお館様」


「よし確認したいことがある まず 襲われたときの事を話せ」


「はい 突然のことでした 奴が森の陰から現れたと思ったら


いきなりゴメスの家に突入しました」


「家畜はどうした いなかったのか?」


「いいぇ いたはずです 家畜の鳴き声は聞こえていました」


「家畜は殺されたか?」


「いいえ なぜか殺されてないようです」


「わかった つずきを話してくれ」


「はい ゴメスの家から 悲鳴が聞こえ そして聞こえなくなりました 


それから奴はすぐに森に引き返しました」


「時間はどれくらいだ? 家に突入してから出てくるまでだ」


「はい 正確には分かりませんが ほんの小さな砂時計が1回落ちるまでです」


「ふむ奴は引き上げる時 死体を持って帰ったか?」


「いえ なにも くわえて いなかったと思います」


家畜も殺さず? 人も 持ち帰らなかった? その場で全部食べたのか?


「子爵様? 何かきになることが?」


「気になることがある 確認したい家の中に入るぞ」


「その前に トマス、ハミル、あと見張りの者たち、 


丘陵地帯に近いすべての家を避難させろ」


「親戚とか知り合いの家に行けるものはそこに あてが無いものは教会に行かせろ」


「全部ですか? 100人以上になりますよ?」


「そうだ全部だ」 「いそがせろよ」


トマス、ハミル、見張りの者たちが 動き始める


「グーン卿中に行くぞ」


「はい いまいきます」


家にでかい穴が開いてて もう倒壊しそうな危険があるな 


その穴から子爵様が中に入っていく


これは ひどいな かろうじて 人のかたちが 分かるが 見てられないな


「子爵様 ひどいですね あの平気なんですか?」


なんで平気な顔してるんだ?


「あぁ 慣れてる」 子爵様がムルファスを指さして口を開く


「おい 大丈夫か? 吐くなら外で吐け ここで吐くなよ もらい下呂するからな」


たしかにムルファスは大丈夫そうじゃないな


「ムルファス外にでてろ」 「はい うっうおっぷ」


「げ ここで吐くな外に出ろ早く」


くそ 私まで吐きそうになってきぞ


「子爵様 なにを確認したいのですか? 早く確認してでませんか?」


うおぉお なんでそんな死体を触れるんだ?


「グーン卿この死体をみて どう思う?」


「ひどいですね」


なんか ちがったのかな?


「いや聞き方が悪かったな」 「この死体はまったく食べられていない」


「そう圧倒的なパワーで 引き裂かれているだけだ」


たしかに 言われてみれば 食べられた跡がないぞ


「たしかに どうゆうことでしょう?」


「これは 俺の推測だが 奴は復讐しようとしてるんじゃないかな?」


復讐? 奴が? あの獣が?


「え 復讐ですか?」


「奴は森の王者だ そのプライドを傷つけた者たちに


恐怖を与えようとしてるようには思えないかね?」


恐怖を与える? 


「いや そんなことが あるのでしょうか?」


「俺も専門家じゃないんで断定はできないんだが 


マヌカからシドベアーの習性を聞いて、意外に賢い生き物だと認識している」


「たしかに それなりに賢い生き物とは聞いてますが ありえるのでしょうか?」


いや さすがに信じられないなシドベアーが復讐だと?


「信じられないのは分かる、俺も半信半疑だでも 


そうでも考えないことには奴の行動に納得ができない」


「いや しかし でも そうなると この者たちは 私たちが奴を 追い込んだせいで?」


「いや そうは言っていないよ あくまで推測だ」


「いや どっちにしても昨日の夜 われらが仕留めていれば 


この者たちは犠牲に合わずにすんだ ちがいますか?」


「違いはないが そんなこと気にするな」


「いやしかし」  子爵様が私の言葉を止める


「いいか こいつらが死んだのは 俺やお前たちのせいだ 


だが昨日の俺やお前たちは自分に出来ることをやったはずだ?」


「俺にできるのは こいつらの墓を作って詫びるくらいだ 


お前たちは墓に奴をたおす事を誓えばいい」


「俺たちに出来る事をやるしかない いまはそれ以上のことは 気にするな わかったな?」


そんなに簡単に割り切れたらどれほど楽か 子爵様がうらやましい(笑)


いや こんな子供に慰められて なにしてるんだ シム・グーンしっかりしろ


「はい 分かりました 子爵様」


分かりましたから 子爵様その死体を見せながら 笑いかけないでくれ

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