第16話 ヌーベル子爵領の危機2



教会への道をマーサと二人で歩いていると 教会の鐘の音が聞こえてくる


「シャンシャンシャン」 「シャンシャンシャン」 「シャンシャンシャン」


緊急の事態を伝え、教会への集合の合図だ


モディー・ヌーベル 踏ん張りどころだぞ



教会につくと すでに何人か集まってきているようだ さてトマスと神父は何処にいるかな?


「お館様」


トマスの方から俺を見つけてくれたようだ


「トマス 誰か郷士に推薦できる奴はいないか?」


いきなりの事で 面食らったようだが


「私の弟のハミルはどうでしょうか?」


「よし 構わん すぐここに連れてきてくれ」


「はい 教会には来てますので すぐに見つけてきます」


5分ほど待ったところで トマスが一人の男を連れてきた


「お待たせしました お館様」 「ハミルお館様に ご挨拶しろ」


「はい 初めまして お館様 ハミルです」


いきなり連れてこられて だいぶ緊張してるみたいだな


「ハミル シドベアーの話は聞いてるか? あとダイテ要塞までの道は分かるか?」


「はい アニキいやトマス兄さんから 聞いてます」


「よし それだけ分かっていれば十分だ」


「ハミル この子爵家の紋章が入った剣の帯剣をゆるす 受け取れ」


混乱してるようだな 説明を端折りすぎた


「ハミル ヌーベル子爵家の使者として要塞に手紙を持っていってもらいたい」


「使者は子爵家のものだとゆう証拠がなければ まず受け付けてもらえない」


「で この紋章入りの剣だ 急に郷士に任命した理由がわかってもらえたか?」


緊張しながらも、理解はしてくれたようだ


「では改めて この剣を受け取り ヌーベル子爵家の郷士になるか?」


「はい お館様に忠誠を誓います」


よし 最低げんの条件は満たせそうだ


「ハミルこの手紙を要塞の司令官に渡してくれ」


手紙を受け取るとハミルは今にも飛び出して行きそうな感じで口にする


「すぐに準備して、夜中にはでます」


黙ったままだったトマスが忠告するように口をひらく


「いや夜道は危険だ、かえって時間を食うことになるかもしれない 


しゅぱつするのは朝まで待つといい」


あせっているが ハミルも納得したようだ


「だが旅の準備は急いだほうがいい ハミルお前はもう家に戻るといい」


トマスと俺にうなずき ハミルは急いで家にもどった


とりあえず1個は済んだな 話を見ていた神父がハミルと入れ替わるように声をかけてくる


「お館様、大変なことになりましたね、これも神の試練なのでしょうか?」


そんなわけないが、話は合わせておかないとな


「かもしれないな神の意志は 俺には測りかねるが」


俺の答えが気に入らなかったのか 神の教えを説こうとするだが


今は宗教談義をしてる暇はない


「神父さま、みんなは集まったのかな?」


露骨に話を終わらせた俺に不満があるのだろうが


今はそんな時ではないのは神父も理解してるようだ


「はい みなお館様をお待ちですよ」


その言葉にうなずき礼拝堂に向かう


礼拝堂には約50名ほど集まっており、各々が椅子に腰かけたり、座ったりしている


みなが注目するなか 壇上にたち 木槌を1回 打ち付ける 「カン」 いい音がするな


喋っていた物もだまり ここに居る全員が俺に注目する


「まずはみなに感謝したい 突然の呼び出しによく集まってくれた」


反応はいろいろだが みなが次の言葉を待っている


「もう 話を聞いているものも居るようだが 改めて説明しよう」


「マヌカの息子パータが山でシドベアーに襲われ 命を落とした」


「パータの冥福と神の慈悲を彼のために祈ってやってくれ」


いったん話を止め 一同をみわたす


「シドベアーは危険な魔獣だ人の味を覚えると、積極的に人を襲うようになる」


かるく悲鳴をあげるもの、溜息をつくもの、みなが不安な顔をし ガヤガヤと騒ぎ出す


「このニア村だけでは対処しきれないと判断してダイテ要塞に救援を求めるつもりだ」


「だが救援がくるのは、どんなに早くても2週間はかかると思っている」


「救援がくるまでの期間どう対処するか決めたいと思い みんなに集まってもらった」


言葉をくぎり 伝えてない情報がないか考えを巡らせる 


「さて これからの」     「お待ちください お館様」


一人の男性に話をさえぎられる 何か言いたいことがあるようだ


「なにかな?」 見覚えがあるんだが名前がでてこないな 


イメージで村人委員長とでもしておこう


「はい お館様 村を危険にさらした責任は誰がどのように とるのですか?」


「そうだそこの狩人がへま やったせいなんだろう」 でかい声で追従する男


ほとんどの者が同じ意見なのか口ぐちにマヌカに非難と嫌悪の視線を向けている


針のむしろってやつだなマヌカは青ざめて俯き どうしていいか解らないようだ


気持ちは分かるが そんな話をしたところで 


何一つ解決しない 木槌を連打し皆を黙らせる 「カンカンカンカン」


「みなの言いたいことは分かるが、 これは不幸な事故だ


俺が聞いた限りではマヌカの行動に致命的な落ち度はないと考えている」


まったく納得してないのだろう、 ヤジや怒声が飛び交い始め 


村人委員長を始めみなが俺に非難の目を向けてくる


話が進まないな しょうがない責任ってやつを 取ってもらうことにするか


腰の剣を抜き 壇上に突き刺す


俺の突然の行動に驚いたのか みんなが静まりかえる


「マヌカこっちにこい」 それと名前が出てこないんで 


村人委員長を指さし 前に出るように促す


「責任を取らせよう かまわないその剣を取って好きにしろ」


「どうしたかまわない あっさり殺すのが嫌なら 拷問してから殺してもいいぞ」


「生爪をはぎ、 指を切り落とし、目をくりぬく、 舌を引き抜け」


「え そんな いや おれは」


村人委員長はあまりの事に 言葉がでないようだが


「裁きを与えるのお館様の 役目です わたしじゃない」


村人委員長はそう叫び 俺に非難の目を向ける


「何を言ってるんだ? 俺はマヌカに責任があるといつ言った?」


「責任があると言ってるのは お前らだろう」


「だから裁きはお前たちがくだせ」


村人委員長は絶句してるようだ


「どうした時間がもったいない 早く拷問でもして責任を取らさせろ」


村人委員長はどうしていいか わからず周囲に目を向けるが周りのみんなも 


どうしていいか判断がつかないようだ


「そんな そんなこと出来もしないことを おしゃらないでください」


村人委員長がまた俺に叫ぶ


そうだお前たちにはできない 


「俺はいまから剣を鞘にしまう、 誰でもいいマヌカに裁きを下したい者がいれば、 


俺が鞘にしまうまでに裁きを下せ」


俺はみんなが見守るなか ことさらゆっくりと剣をもち鞘にしまった


「この話は終わりだいいな?」


納得はしてないだろうが みんな黙って席に座る 


村人委員長もなにか言いたげだが何も言わずに戻った


強引なやり方だがこの非常時に、話し合いでまとめてる余裕がない


「さて 話を戻そう これからの事だ」


「当分の間だが 一人で出歩くのを禁止する なるべく大勢で動いてほしい」


「特に子供と年寄りだ、だいたい獣は群れで一番弱い個体を狙ってくる」


「できれば寝る時も 同じ場所で一緒に寝てもらうのが好ましい」


「もしシドベアーに遭遇したときだが その時は 戦おうとか、


逃げることは難しいと思われるので」


「そこにいる者 全員で大声を出して威嚇しろ たぶんそれが一番助かる確率があると思う」


「あとは村にいる家畜すべてを丘陵地帯に つないでほしい」


「家畜が食われ腹が満たされている間は魔獣も無理に人を襲いにはこないだろうしな」


家畜の話に かなりの者が反応する 


「そんな」 「家畜がいなくなったら」 


まあ そんな反応だろうな 家畜をもつ者だけに出費を強要してるのだから


「なお魔獣に食われた家畜は、俺が買い取る」


さきほど騒いでいた者たちがお互いを見合う その中の一人が


「お館様 無礼なようですが確認してもいいですか?」


「かまわない なんだね?」


「魔獣に食われた家畜を買い取っていただく 大変にありがたいお話です」


「まことに まことに無礼を承知でお聞きします


おいくらで買い取っていただけるのですか?」


まあ当然の疑問だな あとでもめるより最初にはっきりさせといた ほうがいい


「何度か あの病気にかかった家畜を買い取っことがあるだろう あの時と同じ値段だ」


ほとんどの者の表情が暗くなる  まあ定価の5分の1に 


買いたたかれるんだ そうなるだろうな


「お館様その値段では あんまりです 病気の家畜を売るのではありません 


健康な家畜です」


「そんなことは分かっている だが俺は魔獣に食われた家畜を買うんだぞ」


「わかっております ですが 私たちだけが出費を あんまりです」


みんなが収めた税からお金を出すんだから 村人全部で負担してるような物なんだが


そう言っても理解されそうにないな


「わかった しかし家畜の値段は払う金がないんで 上げたくても無理だ」


「なので税の軽減を考えよう被害規模にもよるんだが 3年間 


10%-15%の軽減を考えている これでどうだね?」


この辺が落としどころだと思うんだけど 納得しないなら 強硬するしかないかな


残念だがさっきと同じで そんな余裕はない


「わかりました少なくとも私の一族は その条件でお館さまの下知にしたがいます」


ほかの者も 不承不承とした感じだが うなずいた


とりあえずは納得してもらえたようだ、 大盤振る舞いしすぎかもしれない


俺も村も破綻するかもしれない だが ニア村そのものが無くなるよりかはましだろう


「すまない 大変なのはこれからだと 思うがみなの力を貸してくれ」





話が終わり ほとんどの者は 一族、家族の説明に急いで帰ったようだ


最後に残ったのは 俺にマーサにトマスに神父様だ


トマスが心配そうに声をかけてくる


「お館様 家畜の件は大丈夫なのでしょうか?」


「わからん 被害規模によっては 俺は破産するな(笑)」


「その時はトマス お前の給金も払わないからな(笑)」


冗談だったんだが 面白くなかったようだ みんな全然わらってくれない


そうだ 後回しになってしまったが 神父にも話しとかないとな


「神父様 これから怪我人がでるかもしれません治療は


神父様の回復魔法に頼らさせていただく事になるでしょう」


「ただ そのさいのお布施は 多少下げさせて いただくかもしれません」


いや確実に下げるけどな


「承知して いますよお館様 主にもご納得していただけるでしょう」




これで今 考えられることはすべて した後は神のみぞ知るとゆうやつだな




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