第13話 ある子爵様の事情2



「おはよう母さん」


いつもと同じあいさつで 朝食の席に座りあくびを一つ


寝不足だな何せ、だいぶ考え込んでいたからな


「おはようモディ」


母さんがいつもと変わらない手際でパンを切り分けてくれている


「どうぞモディ」


「ありがとう母さん」


一瞬だが母さんの動きが止まったようだ  


あぁ こんな時にお礼を言うような礼儀正しいガキじゃなかったな俺は


かたいパンに肉がほんの二切れの薄味のスープにサラダ じつに慎ましい食事だ


美味いとは言えないが領民の税で食ってる身分だありがたく いただかせてもらおう


「ごちそうさま 母さんかたずけを手伝うよ」


今度こそ驚愕の目で俺を見てるな


「洗い場にもって行けばいいかな?」


「私が全部しますの大丈夫です」


えらい拒絶反応だな、 これは遠慮してるというより悪戯を警戒してるのかもしれないな


「母さん今まで いろいろな迷惑をかけたこと 謝りたい ごめんなさい」


「モディ いったいどうしたんですか?」


「うん 実はね昨日不思議な夢を見たんだ」


「ゆめですか?」


「うん 夢の中に父さんが出てきたんだ」


「父さんがですか?」


「うん 枕元に立ってモディ お前は 本当に悪い子だ


このままでは死んでも死にきれない」


「ここで心を入れ替えないようなら、死者の国に連れて行くってね」


「死者の国になんか行きたくないから、父さんによいこになりますって約束したんだ」


うわーーー 即興で作ったけど すごい頭悪そうな話だな(笑)


もうちょとちゃんとした話を作っとけばよかったかな


まあ 子供の夢の話だし なんとなくそっれっぽいか


「父さんがが枕元にですか?」


なんか複雑な顔してるな まあいい 印象操作ってやつだ


人は物事に理解しやすい理由があれば  多少怪しくとも自分を納得させるものだしね


そう俺の性格が変わった理由として 母さん自身を納得させてくれるはずだ たぶん


「母さんにお願いがあります 俺に読み書きとか教えてください」


「モディ本気なんですか?」


「はい お願いします」


「あなたも もう子爵なのですから 途中で投げ出すことは 許されませよ」


「わかりました しばらく様子を見てみることにしましょう」


「問題ないようなら ワスにも来てもらいましょう」


「ワス?」


「ワスには領地の一切を取り仕切ってもらっています」


「あぁ 思い出した郷士のワスさんか」


「領地のことは 私にはよくわかりませんが 


それ以外の読み書き 計算 魔法を教えましょう」


「ありがとう母さん、でも魔法?」


「ええ あなたもそろそろ使えるようになるはずですしね」


「へえ そんなものがね」


「母さんの血筋なら水 父さんの血筋なら風かしら」


「魔法ってのは一定の年齢になれば誰でも使えるものかい 母さん?」


「貴族なら使えない人のほうが 珍しいわね」


「それは怖いな、もし俺が使えなかったら 


爵位とか領地とか没収とかされたりするのかな?」


「いえ そんな話聞いたことないわ、でも肩身が狭くなるのはたしかね」


やっぱり間違いなく差別とかはあるんだな


「母さんのためにも 使えるようになりたいものだな」


「別に私のことはきにしないでもいいのよ、 あなたの問題なんだし」


「まあ 近いうちに答えがでる みたいだし いま騒いでもどうしょもないか」


「そのとうりね でもモディ? あなたいつから自分の事を俺なんて言うようになったの?」


「ふ 母さんを守れる男になろうって 決めたときからかな」


「え? あなたほんとうに」


まずい 調子にのりすぎた モディはこんな冗談をいうやつじゃなかったな


どうする どうやって誤魔化す


いや落ち着くんだ こんな時慌てて説得しようとすると 余計な事をいってボロがでる


余計な事言わないでいい 押し切ろう


俺の中身は49 母親は23の小娘だ大人の包容力を見せてやれモディ GOモディ


覚悟を決めた俺の行動に迷いはなかった 一瞬で母親に飛び掛かり、そのまま押し倒す


流れるように上半身に移動し、母親の頭を自分の胸で押さえ左腕を後頭部に回す


母親がフリーズしてるまに


そのまま左手で自分の服を掴み、完全に頭部を固定する。


ようやく動き始めた母親が下で暴れ始めるが遅い、もう完全に固めている


「なにすんですか? はなしなさい」


フリーな右手で頭を撫でつつ、 できるかぎり優しい声を作る


「母さん 男の子はね いつのまにか男になってしまうんだ」


身の危険を感じてるだろう 母親が余計に暴れるが想定内だ


想定外なのはモディの力が思ったより弱いことだが


母親には寝技の知識がないこの崩れ上四方固めはもう少し持つ


「母さん 男の子でも 男でも 俺は母さんの息子だよ」


やさしく囁きつつ 頭を撫でるのを継続する 子猫を撫でるようにやさしくだ


「モディ? あなた?」


よし 抵抗が弱まってきたぞ このまま押し切るんだ


「母さんを守れる男になりたい」


「だけど今の俺は無理して背伸びしてる小僧だ」


「ちゃんと立てるようになるまで俺を支えてほしい」


抵抗が完全になくなったの感じて、袈裟固めに移行する


母さんの目を見つめ、もちろん頭を撫でながらさっきと同じこと言う


「俺を支えてほしい」


「モディ? もうわかりました いい加減に自由にしてちょうだい」


よし押し切ったぞ 無理やり危機を作っての 


吊り橋効果と危機からの解放感を狙ったが上手くいったようだ


もう解放してもいいんだが なんか頭を撫でるのにハマってしまった なんか気持ちいいな(笑)


「モディ? 起きたいんですけど?」


時間切れだな横四方固めをとき、手を貸して立たせる


「今のはなんのまねですか?」「なんでこんなことを?」


もっともな疑問だ


「母さん また頭を撫でてもらいたいんですか?」


だが世の中 疑問のすべてに答えが得られるわけではない


また母親に飛び掛かる振りをする


「いえ もういいです だいじょうぶ」


分かったか小娘これが大人の包容力(セクハラ力)というものだ




俺は変わった母親の知ってるモディではなくなった


中身が別人になった息子を見てどう思うか


どうなるか分からないが、予想はできる





「さてお遊びの時間は終わりにしとこうか、母さん何から教えてくれるのかな?」

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